動産質と不動産質の対抗要件・・・

動産質と不動産質の対抗要件・・・

動産を質権の目的とした場合には、対抗要件は、その目的物の占有です。

この場合の占有とは、債権者以外の者に代わりにさせてもかまいませんが、設定者に占有されることは禁止されており、これに違反すると、質権が発生しなくなります。

(質権設定者による代理占有の禁止)
民法第345条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。

また、登記船舶、自動車などは、権利者自身に使用させることが政策上要求されるため、質権の設定自体が禁じられています。

また、不動産を質権の目的物とする場合の対抗要件は登記です。

判例では、不動産質においては、質権設定後に質物を設定者に引き渡しても質権の効力に影響がないとしています。

不動産質においても、その成立に関する民法344条の適用がありますから、たとえ登記をしても、目的物の引渡がなければ質権の効力は発生せず、後で引渡をしたとしても登記のときに遡って効力を生じるものではないとされています。

質権の設定)
民法第344条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

つまり、不動産質の場合には、引渡を受けることと登記することが必要になるのです。

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債権質の対抗要件・・・

債権を質権の目的とする場合には、対抗要件は当該債権の種類によって異なります。

①指名債権

指名債権に質権設定する場合には、債権譲渡と同様に内容証明郵便や公正証書のような確定日付のある証書をもって、債務者に通知するか、債務者が承諾することが対抗要件となっています。

(指名債権を目的とする質権の対抗要件)
民法第364条 指名債権を質権の目的としたときは、第467条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。

法人がする指名債権の譲渡・質権設定については、まず、譲渡・質権の対象となる債権の債務者以外の第三者に対する対抗要件として、債権譲渡登記ファイルに譲渡又は質権設定の登記をすることができます。

債務者に対する対抗要件として、かかる登記がなされたことについて、債務者に対して登記事項証明書を交付して通知し、又は債務者が承諾することとされています。

この通知は、譲渡人又は質権設定者だけでなく、譲受人や質権者もできるのです。

また、誰でもこの登記について、登記官に対して登記事項概要証明書の交付を請求できます。

②指図債権

手形や小切手のような特定の人又はその指図人に弁済すべき証券的債権については、証券に質権設定の裏書をした上で、質権者がその交付を受けることによります。

(指図債権を目的とする質権の対抗要件)
民法第365条 指図債権を質権の目的としたときは、その証書に質権の設定の裏書をしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

③記名社債

記名社債の場合は、社債の譲渡に関する規定に従い、発行会社の帳簿に質権設定を記入することによります。

無記名社債は動産として扱われますから、動産質と同様になります。。

さらに、社債等登録法によって登録された記名社債は登録と社債原簿への記載が、無記名社債については登録が、それぞれ対抗要件とされています。

④記名国債

原則として、証券の占有と解されていますが、登録国債については登録が対抗要件とされています。

⑤無記名債権

持参式払い式小切手や商品券、鉄道の乗車券など、債権証書の正当な所持者に弁済すべき証券的債権は、動産とみなされるので、動産質と同様に証券の占有が対抗要件となります。

⑥記名式所持人払い債権

荷物受取証や小切手など、特定の人又は証明の正当な所持人に弁済すべき証券的債権も証券の占有が対抗要件です。

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株式の質券設定の対抗要件・・・

以前は、担保として株式を差し入れる場合には、差入れ人が受入れ人に株券を引き渡すことが必要でした。

株券電子化後は、質入れの場合であれば、差入れ人(質権設定者)の口座の保有欄に記録されている株式を受入れ人(質権者)の口座の質権欄に振り替えることが必要となります。

例えば、A(質権設定者)がB銀行(質権者)に質入れする場合に、まず、Aは自分の口座のある証券会社等に対して「振替の申請」を行います。

この際には、いつ、どの口座(Aの口座の保有欄)から、どの口座(B銀行の口座の質権欄)に、どの銘柄を、何株振り替えるのか指定します。

そして、この質権欄への「振替の申請」が行われると、Aの口座の保有欄における指定された銘柄の株数が減少され、証券会社等を結ぶネットワークを通じた処理により、最終的にB銀行の口座の質権欄にその銘柄の指定された株数の増加の記録がされるとともに質権設定者であるAの氏名や住所の情報も記録されます。

売買による譲渡(買手の口座に株数が記録される)の場合とは異なり、質入れの場合は質権者の口座に株数と質権設定者の氏名等が記録されます。

その理由は、譲渡の場合には、売手は株主でなくなり買手が新たに株主になるのに対し、質入れの場合には、質権者が新たに株主になるのではなく質権設定者が依然として「株主」であるからです。

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いろいろな担保の対抗要件

①知的財産権の質権

著作権や出版権を質権の目的とするには、その登録が対抗要件とされています。

特許権、実用新案権、意匠権、商標権についての質権は、その旨の登録が権利の発生要件とされています。

②譲渡担保不動産の場合には登記、動産の場合には占有、債権の場合には確定日付ある通知又は承諾が対抗要件となります。

動産については債権の場合と異なり、占有改定の方法によることも認められています。

ただ、この方法によると、譲渡担保の存在を知らない第三者に即時取得されてしまうおそれがありますので、張り紙や看板などで掲示するなどして、譲渡担保の存在を知らない第三者について過失が認められるようにしておきます。

③再売買予約

予約完結による所有権の復帰について仮登記をすることが対抗要件になります。

④買戻

不動産の最初の売買による移転登記に、買戻特約を付記登記することができ、これが対抗要件となります。

⑤仮登記担保

代物弁済予約や売買予約を仮登記することが対抗要件となります。

⑥所有権留保

売主が、所有権を失っておらず、代金が完済されるまでは、買主に使用を許しているだけという関係にありますがので、所有権についての対抗要件がそのまま対抗要件となります。

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