公正証書で強制執行する・・・

公正証書で強制執行する・・・

公正証書は、次の条件を備えているときに、強制執行することができます。

①金銭とか、米、麦などの代替物、有価証券のように、その物に個性のない財産の一定の額又は一定量の引渡を請求する債権があること

②債務者が直ちに強制執行を受けても異議のないと述べていること

③公証人が公正証書正本に、強制執行を認めるという趣旨の文言をつけたこと

公正証書による執行の場合、公正証書の謄本の債務者への送達する必要があります。

債務者の家財道具や商品、現金などを差押えたいときは、これらの財産のある場所を管轄する地方裁判所に所属する執行官に対し、強制執行を委任します。

執行官は、動産の存在する場所に出向いて差押をし、一定の期間において、競売し、代金を債権者に配当します。

不動産に対する強制執行は、不動産所在地の地方裁判所に申立しなければなりません。

不動産の場合は、申立後、半年以上経たなければ、お金が入ってこないのが現状です。

売掛債権、貸金債権、給料債権などに対して強制執行する場合は、原則として債務者の住所地を管轄する地方裁判所に対し、申立を行います。

差押の方法は、差押命令を得て、債権者が直接第三債務者に対して取立てをする方法と、転付命令を得て、差押えた債権そのものの額面で弁済されたものとなる方法があります。

転付命令は、確実な債権の場合には有利ですが、第三債務者が倒産して回収ができない場合は、損害を受けます。

また、執行文のついた公正証書を所持していれば、他の債権者が申し立てた強制執行に便乗して、配当を受けることができます。

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公正証書の執行認諾約款がない・・・

公正証書において、債務者が一定額の金銭を支払う債務を認めている場合は、次のような文言が入ります。

「債務者は、本契約上の債務につき、直ちに強制執行を受けても異議ないことを認諾した。」

これは、裁判の判決なしに強制執行するために規定するのです。

しかし、このような執行認諾文言を入れるのを忘れてしまう場合があり、この場合には強制執行ができなくなります。

債務者から委任状をもらって、適当に代理人を立てて公正証書作成を公証人に委嘱する場合に、委任状に「強制執行認諾約款付きの公正証書作成を委嘱する件」と明示しておらず、また、委任状に添付された契約書の案文の中に執行認諾約款を書き入れていない場合などがあります。

このような場合、公証人は勝手に執行認諾約款をつけることはできないのです。

また、債権の性質上執行認諾約款をつけられない場合があります。

例えば、継続的商取引ででは、債権額の増減があり、一定の支払を定めたものでないため、これを公正証書にしても、執行認諾約款はつけられません。

また、建物や土地の引渡義務や登記手続き義務を公正証書にしても、執行認諾約款はつけられません。

不動産売買契約において、代金債権については執行認諾の文言がつけられますが、不動産の所有権移転登記義務にはつけられないのです。

執行認諾約款のない公正証書の場合は、別途訴訟を起こして、判決を取り、強制執行しなければなりません。

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公正証書で強制執行できない場合・・・

公正証書に執行認諾約款がついていても、公正証書のみでは強制執行できない場合があり、次の場合になります。

①不動産の明渡し、特定の物の引渡請求債権のとき

建物の明渡しを求める債権、建物を収去して土地の明渡しを求める債権などです。

例えば、建物賃貸借契約公正証書は、賃料不払い、無断転貸し、無断増改築等の場合、家主は契約を解除し、建物の明渡しを求めることができるという条文が含まれていますが、執行認諾約款で強制執行できるのは、賃料債権などの金銭債権だけになります。

明け渡しなどの場合には、裁判を起すか、即決和解を申し立てて、明け渡しについて合意する必要があるのです。

②公正証書作成後に、債権額が変ったとき

例えば、地代家賃の増額を合意した場合、公正証書においては、月額3万円で合意してあったのに、その後、月額5万円で任意に合意したとしても、増額分は強制執行できません。

また、公正証書作成後に、当事者間で勝手に延滞利息を元本に組み入れた場合、これについて発生した利息相当分も改めて証書を作成し、執行認諾約款をつけないと執行できません。

③継続的取引契約の債権のとき

商品の継続的取引や銀行取引契約では、債権の極度額を定めて、これを限度として取引する場合があります。

将来、発生・消滅したりする債権については、極度額を予め定めておいても、公正証書による執行はできません。

なお、抵当権の設定を公正証書で契約した場合は、任意競売の申立ができることになっています。

任意競売は強制執行ではありませんが、継続的取引を公正証書にする場合は、根抵当権の設定も合意しておけば、任意競売ができますので、執行と同じ効果となります。

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