内縁の不当破棄の損害賠償・・・
婚姻を解消するには、離婚届が必要になりますが、内縁の解消には、そのような手続きは不要です。
内縁は、事実上の婚姻にすぎませんから、その事実上の婚姻を解消するだけで足ります。
しかし、婚姻の解消には、正当な理由が必要とされるように、内縁の解消にも正当な理由が必要になります。
一方的な理由で内縁を解消することは、内縁の不当破棄であり、これに対しては損害賠償の請求権が発生してきます。
最高裁は、次のように判示しています。
いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては婚姻関係と異なるものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。
そして、民法709条にいう「権利」は、厳密な意味で権利といえなくても、法律上保護せられるべき利益があれば足りるとされるのであり、内縁も保護せられるべき生活関係にほかならないのであるから、内縁が正当な理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるである。
さらば、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。
(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
最高裁も、内縁の不当破棄に対しては、婚約予約不履行や不法行為を理由に、損害賠償の請求ができるとしています。
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口約束の婚約の成立・・・
口約束で婚約をし、結納の取り交わし等をしていないような場合には、婚約が成立しているのかどうか問題となります。
婚約は、2人の合意さえあれば、それで成立します。
結納の取り交わしの有無は、婚約の成立と関係はありません。
婚約について、「誠心誠意判決」といわれる大審院の判決があります。
婚約についての初めての判決ですが、「結納を取り交わしその他慣習上の儀式」を挙げていなくても、「男女が誠心誠意をもって将来に夫婦たるべき予期の下に」結束すれば、婚約であるとしています。
誠心誠意をもって真面目に将来を誓い合った場合には、婚約が成立します。
慣習で、婚約に際して、結納の取り交わしが行なわれます。
相手方男性から、女性に対し、結納としてなにがしかの金銭が贈与されるのが普通です。
これを授受した女性は、これを結婚準備金の一部として使用します。
このような結納は、婚約したことの確証になりますが、婚約の成立にとって絶対に必要なものではありません。
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婚約破棄の結納金の返還・・・
花子さんは、太郎さんと出会い、婚約をしました。
太郎さんは、新築のマンションを購入するので、結納金として500万円欲しいというので、花子さんは出しました。
その後、マンションの完成までということで、太郎さんのアパートで1ヶ月間同棲しました。
ところが、太郎さんは突然性格が合わないから、婚約を取消したいと言い出しました。
これは、考えようによっては、「結納詐欺」とも考えられます。
最初から結婚の意思がなく、女性を騙して結納金を巻き上げるやり口です。
正当な理由がなく婚約を解消すれば、結納金は本人に返さなければなりません。
結納金についてだけの法律関係ですと、結納金を受け取り、同棲すれば、事実上、婚約を履行したことになります。
婚姻届は出していませんが、事実上の婚姻はしたことになると考えられます。
婚約を履行したことになると、結納金は返さなくてよいことになります。
そうなると、婚約の不履行で損害賠償請求もできず、結納金の返還請求もできないことになります。
ただし、これは結納金だけの法律関係で、婚約を履行したことになれば、婚姻届は出されていませんが、少なくとも内縁関係ではあります。
内縁関係の不当破棄の場合には、損害賠償請求ができます。
また、明らかに結納詐欺である立証ができるのであれば、刑事事件になりますので、当然、結納金の返還請求等できます。
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