他人の戸籍盗用の損害賠償・・・
山田さんは、田中さんの戸籍を盗用して、昭和**年に生命保険会社に、その戸籍を提出して入社しました。
その後、20年間他人になりすまし、生命保険会社を定年退職したのですが、その後、本人の田中さんに発見されました。
発見の発端は、田中さんになりすました山田さんの市民税の滞納通知が、田中さんの名前で、真実の田中さんのところに送られたことです。
田中さんは、山田さんを私文書偽造などの犯罪容疑で告訴すると共に、生命保険会社と山田さんとを共同被告として、550万円の損害賠償と謝罪広告を求める訴訟を起こしました。
告訴については、田中さんの名義の履歴書を作って生命保険会社に提出したのが、私文書偽造になりますが、この罪は5年で時効ですし、履歴書の偽造が刑罰の対象になるかどうかが問題となりますが、山田さんは起訴され、懲役1年、執行猶予3年の判決となりました。
損害賠償と謝罪広告の請求については、判断が難しく、判決は、氏名権の侵害とされました。
情報化社会では、他人に氏名を使われることで有形無形の不利益を受ける可能性が高く、氏名は、単に道徳、倫理面だけでなく、法律で保護する人格的利益であるとし、山田さんの行為は故意に田中さんの氏名を侵害した不法行為に該当するとしました。
慰謝料として70万円、弁護士費用のうち7万円の支払を命じました。
名前を使われていることを知らず、社会的評価、信用などに実害はなかったので、謝罪広告の請求は認めず、保険会社に対しての請求も、会社の職務の執行行為とは何の関連性もないとして退けました。
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旅館の部屋で盗まれた物の損害賠償・・・
山田さんは、旅館に所持品を預けないで、部屋の隅においたままにして外出し、留守の間に鞄を盗まれてしまいました。
盗まれた鞄の中には、取引先から集金した100万円が入っており、旅館の主人が警察に届けてくれましたが、犯人は捕まっておらず、旅館に責任をとらせることはできませんか?
旅館や飲料店、浴場、劇場など客の出入り多い施設の経営者は、客の申出を受けて客から金品を預かった場合、その品物がなくなったときは、この経営者は「不可抗力」によって事故が生じたことを証明しない限り損害賠償の責任を免れません。
客が金品の保管を頼まず、自分で部屋においていたような場合であっても、その施設の経営者の不注意で金品がなくなってしまったというときは、経営者は損害賠償の責任を免れません。
金品といっても、それが高価品であるときは、はっきりと内容を指示明示して、あらかじめ経営者に保管を頼んだものでない限り、その金品がなくなっても、経営者は責任を負わないものとされている。
山田さんの場合、あらかじめ旅館に保管を頼まず、金品の内容を明らかにしていなかったので、旅館の不注意によることを山田さんが立証できないと、旅館に対して損害賠償を求めることはできないのです。
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子供会のハイキングで水死事故の損害賠償・・・
子供会の役員を無償でしていた山田さんは、子供達を連れて、ハイキングへ行き河原で飯ごう炊飯することになり、保護者の参加は難しそうだったので、役員と子供たちで行くことになりました。
昼食を終えた後に、大人たちはあとかたずけをしていたところ、太郎君が川に落ちてしまいました。
山田さんたちは、太郎君を助け出し、人工呼吸などをしたのですが、太郎君は息をすることはありませんでした。
ボランティアとして無償で奉仕していたのに、たまたま事故が起きた場合には、損害賠償責任を負わされるのでしょうか?
善意に基づく無償の行為だからといって、責任が免除されるわけではなく、過失があれば不法行為などの法律上の責任を負わなければならないこともあります。
いたずら盛りの小学生たちをつれて河原でハイキングをしていれば、当然水の事故の危険がありますから、山田さんたちは分担を決めてでも、監視体制をとらなければならなかったのです。
口頭で漫然と注意しただけで遊ばせていたような場合には、責任を問われる可能性が高いといえます。
ただし、太郎君も危険なところに行ってはいけないと理解できる年齢であることや、ボランティア活動であること、など判決では考慮されて過失相殺され、賠償額の減額も考えられます。
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犬に噛まれた子の慰謝料請求・・・
山田さんの娘は2歳で公園で遊んでいたところ、田中さんのところの愛犬に噛まれてしまい、頬に2センチの裂傷、全治しても傷跡が残ってしまうとのことで、山田さんは、娘の法定代理人親権者として、田中さんを被告として損害賠償の訴えを起こしました。
犬や猫などの動物の飼い主は、その動物が損害を加えたときは、賠償の責任を負います。
(動物の占有者等の責任)
民法第718条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
本件の場合、田中さんが飼い主としてその保管の注意を尽くしていれば、責任を負いませんが、田中さんは公園で犬を放していたので、損害を賠償しなければなりません。
損害賠償について、病院の治療に要した診療費、看護婦、付添い人に支払った費用などは、全て請求できます。
精神的苦痛に対する慰謝料について、女の子の顔に傷跡が残るとなると当然慰謝料も請求できます。
また、狂犬病、恐水病などにも気をつけなければならず、犬の唾液中にトリソプラズマ原虫が生息している場合があり、これが人体に侵入すると4、5年間潜伏して発見できず、小児の発育をとめたり、精神を狂わすことがあるので、注意が必要です。
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