認知取消調停・・・

認知取消調停・・・

認知取消調停申立は、認知に取り消し原因があることを主張して、その取消を求めるものです。

民法785条は、認知の取消の禁止を規定してますが、この取消の解釈は、認知の取消を許さない意味にも解されます。

民法第785条

認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。

しかし、被認知者の利益を保護する目的に限って、認知の取消を認めている見解もあります。

被認知者が成年に達している場合の被認知者の承諾、又は胎児認知の場合の母の承諾が詐欺若しくは強迫によってなされたものであるときは、認知の取消を認めることができます。

法定の承諾を欠く認知届が誤って受理された場合は承諾権者から認知取消の訴えを提起できます。

認知取消の申立は、特殊調停事項です。

この申立は本質的には訴訟事項であって調停前置の対象となります。

①申立人

詐欺又は強迫により、被認知者の承諾した場合は、被認知者です。

被認知者の中に意思能力を欠く者があるときは、法定代理人です。

詐欺又は強迫により、胎児の母の承諾した場合は、母です。

②相手方

申立人が被認知者又は被認知者の中に意思能力を欠く者があるときの法定代理人場合は、認知者です。

申立人が母の場合は、認知者及び被認知者の双方です。

③管轄

相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。

④添付書類

申立人・相手方の戸籍謄本

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認知取消調停手続・・・

当事者間に認知取消の合意が成立し、その取消の原因について争いがない場合、家庭裁判所は、さらに必要な事実を調査した上、調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、その合意を正当と認めるときに認知取消の審判を行ないます。

認知取消の審判は、適法な異議の申立がないとき、また、異議の申立を却下する審判が確定したときは、確定判決と同一の効力を有します。

その結果、認知は遡及的に効力を失い、認知者と被認知者との間の父子関係の不存在が確定し、その効力は第三者に及ぶ対世的効力を有します。

利害関係人は家庭裁判所に対し、当事者が認知取消の審判の告知を受けた日から2週間以内に異議の申立をすることができます。

異議の申立があれば、審判は当然にその効力を失います。

異議申立人は、異議の申立を却下する審判に対して即時抗告をすることができます。

異議の申立によって認知取消の審判が失効した場合に、当事者がその旨の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起したときは、調停の申立の時に、その訴えの提起があったものとみなされます。

調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的で調停の申立をしたと認めるときは、調停をしないことができます。

調停をしない措置に対して、不服申立を許す規定はないので、即時抗告は認められません。

調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込がない場合又は当事者間に合意が成立した場合において、家庭裁判所が家事審判法23条の審判をしないときは、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができます。

家事審判法第23条 

1.婚姻又は養子縁組の無効又は取消しに関する事件の調停委員会の調停において、当事者間に合意が成立し無効又は取消しの原因の有無について争いがない場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、正当と認めるときは、婚姻又は縁組の無効又は取消しに関し、当該合意に相当する審判をすることができる。
2.前項の規定は、協議上の離婚若しくは離縁の無効若しくは取消し、認知、認知の無効若しくは取消し、民法第773条の規定により父を定めること、嫡出否認又は身分関係の存否の確定に関する事件の調停委員会の調停について準用する。

調停不成立として事件を終了させる処分は審判ではないので、これに対して即時抗告又は非訟事件手続法による抗告をすることができません。

また、裁判所書記官が家事審判規則141条に基づき当事者に対して行なう通知も調停手続における審判に該当しないので、同様に解されます。

家事審判規則第百四十一条 

第百三十八条又は第百三十八条の二の規定により事件が終了したとき、又は法第二十五条第二項の規定により審判が効力を失つたときは、裁判所書記官は、当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

調停不成立の場合、紛争は訴訟手続で解決することなります。

申立人は、裁判所書記官がする調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起したときは、調停申立の時にその訴えの提起があったものとみなされます。

なお、調停不成立の期日に出頭した当事者には調停不成立の通知をしない扱いです。

裁判所書記官は、認知取消の審判が確定した場合は当事者の本籍地の戸籍事務管掌者に対し、当事者間に合意が成立したが認知取消の審判をしない場合又は異議の申立によってその審判が失効した場合には当事者に対し、それぞれ遅滞なくその旨を通知しなければなりません。

認知取消の審判が確定したときは、その審判が確定した日から1ヶ月以内に、審判書の謄本及び確定証明書を添付して、戸籍訂正の申請を当事者の本籍地又は届出人の所在地にしなければなりません。

申立人が申請をしないときは、相手方が戸籍訂正の申請をすることができます。

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親子関係不存在確認調停・・・

親子関係不存在確認調停申立は、実親子関係の不存在を確定させることを求めるものです。

親子関係というのは、事実上の親子関係ではなく、法律上の親子関係である、法律上の親である地位と子である地位の関係です。

他人の子を自分の子として出生届をし、自分の戸籍に入籍させても親子関係が生ずるものではなく、利害関係人は親子関係不存在確認の裁判又は戸籍訂正許可の審判に基づいてその戸籍を訂正することができます。

他人の子を生後まもなくもらいうけ、実子として育てようと自分の子として嫡出子出生届をした場合でも同様であり、嫡出子出生届を養子縁組の届とみなすことは認められていません。

婚姻成立後200日以内又は長期別居等により民法772条による嫡出の推定を受けないが戸籍上嫡出子として取り扱われている子に対しては、親子関係不存在確認の訴え又は調停の申立によるべきです。

民法第772条

1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2. 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

嫡出の推定を受けない子の例としては、妻が懐胎した当時、夫の服役、海外滞在、事実上の離婚による別居などを原因とする長期不在又は行方不明などがあります。

このような場合には、妻は夫と同棲をしておらず、その子を懐胎し得ないことが外観上明白だからです。

夫が民法772条の嫡出を受ける子の親子関係を否定するには、嫡出子否認の訴え又は調停の申立によることを要します。

夫の嫡出を受けないが、戸籍上の嫡出子として届け出られている子が第三者の特別養子になった後に親子関係不存在確認の訴えが認められるかについては、特別養子縁組前の父子関係不存在という過去の法律関係の不存在を確認するべき特段の事情のあるときに限って確認の利益があるとされています。

人工授精について、人工授精には、夫の精子によるものと第三者の精子によるものとがあります。

夫の精子による人工授精の子は嫡出子として扱われます。

第三者の精子による人工授精の子については、夫の承諾を得ない場合は、嫡出否認の訴えを認め、夫の承諾を得て行なった場合にこの請求が否定されると解されています。

妻が、夫の承諾を得ずに第三者の精子による人工授精で出産した子に対してされた嫡出否認の訴えを認容した事例があります。

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親子関係不存在確認調停申立手続・・・

親子関係不存在確認調停申立は、特殊調停事項です。

この申立は本質的には訴訟事項であって調停前置の対象となります。

①申立人

子、父又は母です。

第三者、親子関係について身分上直接影響を受ける者です。

第三者について、判例は、その範囲について、まず第三者として実父母が、その子と戸籍上の父母との間に親子関係が存在しないことの確認を受ける場合には、実父母であるというだけで申立権があるとしています。

次に単に親族であるというだけでは足りず、更に他人間の親子関係の存否が確認されることによって、その第三者が直接に特定の利益を得、又は義務を免れるというような利害関係のある場合に限るとしています。

嫡出子否認の訴えによることなく、嫡出推定を受ける親子関係不存在確認の訴えが認められるには、夫婦が正常な夫婦生活を営んでいない場合や妻が夫によって懐胎することが不可能なことが明白である場合など嫡出推定を排除するに足りる特段の事情が存する場合に限られるとされています。

②相手方

子が申し立てるときは父又は母、父又は母が申し立てるときは子です。

第三者が申し立てるときは、子と父又は母の双方、その一方が死亡した後は他の一方です。

しかし、戸籍の実務では、戸籍上の母の死亡後、第三者から子を相手方としてなされた亡き母と子との間の親子関係不存在確認の審判に基づく戸籍訂正申請は受理しない取扱をしていますが、確定判決の場合は受理しています。

子が未成年であれば、特別代理人の選任を必要とする場合があります。

婚姻中に、父が提起する子に対する親子関係不存在確認の訴えは、戸籍上の父と子の利益相反があるとして民法826条によって特別代理人を選任するのが相当であり、特別代理人と利益相反の関係のない親権者とが共同して子のために代理行為をすべきものとされます。

民法第826条

1. 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2. 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

③管轄

相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。

④添付書類

申立人・相手方及びその法定代理人の戸籍謄本

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