不在者の財産管理人選任審判申立・・・

不在者の財産管理人選任審判申立・・・

民法25条から29条までの規定による不在者の財産の管理に関する処分は甲類審判事項です。

(不在者の財産の管理)
民法第25条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

(管理人の改任)
民法第26条 不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

(管理人の職務)
民法第27条 前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3 前2項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

(管理人の権限)
民法第28条 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

(管理人の担保提供及び報酬)
民法第29条 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

①申立権者

不在者の管理につき必要な処分の申立権者は利害関係人又は検察官です。

利害関係人とは、ある事項につき法律上の利害関係を有する者をいい、当事者、債権者、相続人などがこれに当たります。

不在者の隣人とか友人など事実上の利害関係人は、公益の代表者として申立権を有する検察官に申立をしてもらうことになります。

②管轄

不在者の財産の管理に関する処分の申立事件は、不在者の住所地の家庭裁判所の管轄とされています。

不在者の日本における住所は知れないか、又はないのが通常であり、その場合は、居所地の裁判所の管轄とされ、さらに、日本に居所がないとき、又は知れないときは、日本における最後の住所地の家庭裁判所が管轄します。

通常の場合、不在者の最後の住所地の家庭裁判所が管轄しているとされています。

旧人事訴訟手続法に定める夫婦の最後の共通の住所地の認定にあたり、「生活の本拠」であるかどうかは、その人の生活全般にわたり具体的な事情に基づいて実質的に考慮した結果、客観的に当該場所が生活の中心をなしていると認められるか否かという観点から決すべきであるとして、住民票上の届出場所と異なり、継続的に居住している場所をもって「住所」と認定した事例があります。

不在者につき、日本の最後の住所がないか、又はその住所が知れない場合は、財産の所在地又は最高裁判所の指定した地の裁判所の管轄とされています。

③添付書類

申立人の戸籍謄本、住民票

不在者の戸籍謄本及びその不在を証する戸籍附票謄本とか民生委員や家主の証明書等

管理すべき財産の存在を証する登記簿謄本等

申立人の利害関係を有することを証する資料

管理人候補者の戸籍謄本、住民票等

その他申立が理由あるものであることを証する資料

スポンサードリンク

不在者の財産管理人選任審判手続・・・

家庭裁判所は、不在者の生活歴及び所在不明となった事情、申立人の利害関係及び申立の動機、財産の存在及び管理の必要性、管理人候補者の適格性及び就職の意向などを調査・審理し、申立を相当と認めるときは管理人の選任する審判をして申立人及び管理人に告知します。

所有権移転手続を求めるため、売主の所在不明を理由として不動産の買主が不在者の財産管理人選任申立をして、自ら管理人に選任することを求める場合があります。

この場合、不在者と管理人の利益相反関係を親権者と未成年者又は後見人と被後見人との利益相反関係と同様に見て、民法826条、860条の準用は、買主を管理人に選任することもあると解されます。

(利益相反行為)
民法第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(利益相反行為)
民法第860条 第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

申立を不相当と認めるときは却下の審判をして申立人に告知します。

管理人選任審判、却下審判に対しては、ともに不服の申立をすることは認められませんから、審判は告知によって効力を生じます。

審判の告知は、通常、審判書の謄本を交付する方法によって行なわれ、選任審判書謄本が管理人の資格証明書となります。

スポンサードリンク

不在者の財産管理人の権限・・・

選任された財産管理人は不在者の法定代理人です。

原則として権限の定めのない代理人として、不在者の財産につき保存、利用、改良の管理行為のみをなす権限を有します。

(管理人の権限)
民法第28条 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

不在者の妻Aは不在者の訴訟代理人としてBを選任し、Bが一審判決に控訴し、控訴棄却判決に上告し、上告提起後に家庭裁判所がAを不在者の財産管理人に選任した場合、権限のある代理人は上告審及び原審における無権代理人の訴訟行為を追認することができ、一審判決に対して控訴を提起し、二審判決に対して上告を提起すること及び右訴訟行為をさせるために訴訟代理人を選任することは、民法103条にいう保存行為に該当するから、不在者財産管理人及び同人の選任した訴訟代理人は、民法28条所定の家庭裁判所の許可を得ることなしに第一、二審判決に対して上訴を提起する権限を有します。

(権限の定めのない代理人の権限)
民法第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
1.保存行為
2.代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

管理人の財産管理については、不在者との法律関係につき、民法の委任の規定の一部が次の通り準用されています。

①管理人は善良な管理者の注意をもって財産を管理する義務を負いますので、当該財産管理の目的に従い、財産管理の性質上、管理人の職務上、通常、一般的に要求される程度の注意をもって事務処理をすべきとされています。

(受任者の注意義務)
民法第644条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

②管理人は、管理中に受け取った金銭その他の物を不在者の財産に組み入れ、自己名義で取得した権利を不在者の財産に移転し、これらの金銭を自己のために費消したときは、費消の日以後法定利息を支払うほか、費消によって損害を生じたときはその賠償をするなどの義務を負う反面、管理費用として立て替えた金員及びその法定利息の償還、管理の必要上負担した債務の弁済や担保の供与、管理中自己に過失なくして損害を受けたときの賠償などを請求することができます。

(受任者による受取物の引渡し等)
民法第646条 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

(受任者の金銭の消費についての責任)
民法第647条 受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

(受任者による費用等の償還請求等)
民法第650条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

スポンサードリンク

不在者と財産管理人の利益相反行為・・・

不在者財産管理人が不在者名義の不動産は自己所有であることを主張して所有権移転登記又は抹消登記をするにつき、家庭裁判所に権限外行為許可を求める場合があります。

管理人に所有権があることが契約者や公正証書などの確実な原因証書があって、不在者に登記義務があることは明瞭で、所有権移転登記又は抹消登記の手続だけが残っている場合であれば、その登記手続きは単なる義務の履行であり、かつ、民法108条但書によって双方代理の禁止規定にも触れないので、この行為については権限外行為許可は不要とされます。

(自己契約及び双方代理)
民法第108条 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

相続人不存在の場合、被相続人の生前処分に基づく履行として、相続財産の管理人が登記義務者として行なう不動産所有権移転登記申請は家庭裁判所の許可は不要とされ、また、管理人が相続財産に属する債務を弁済する行為は管理人の権限内の行為であり、管理人が登記義務者として行なう時効取得による不動産の所有権移転登記申請は時効完成が相続開始の前後を問わず債務弁済行為に該当すると解されています。

相続財産の管理には不在者の財産管理の規定が準用されているのですから、不在者の財産管理についても、同様に解されます。

原因証書が存在しない場合、管理人が不動産の所有権を有しているか、不在者が、登記義務を負担するか否か明確でないから、管理人の権利、不在者の義務は民事訴訟で確定すべきものであり、今後この権利義務を実体法上、訴訟法上の行為をするというのであれば、民法108条本文の規定に照らして、管理人の代理行為は禁止されているから、その延長である権限外行為ということも考えられません。

この場合は、管理人は辞任の上、新たに選任された管理人を相手にこの問題を解決することになります。

スポンサードリンク