終期付遺贈の遺言・・・

終期付遺贈の遺言・・・

遺贈の効力の消滅につき、期限を付した遺贈を終期付遺贈といいます。

遺産分割禁止の遺言には、必ず終期をつけなければなりません。

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
民法第908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

受遺者は、遺言者が死亡したときに終期付の権利を取得し、その権利は期限が到来したときに消滅します。

(期限の到来の効果)
民法第135条 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

期限が経過すれば、その遺贈財産は遺言者の相続人に帰属します。

(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
民法第995条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

受遺者は、期限の利益を放棄して終期的遺贈の効力を消滅させることができます。

終期的遺贈の到来によって権利を取得する者は、解除条件付遺贈の相続人と同様に民法128条、129条の類推適用を受けるものと解されます。

(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
民法第128条 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

(条件の成否未定の間における権利の処分等)
民法第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

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負担付遺贈の遺言・・・

負担付遺贈は、受遺者に法律上の給付義務を負わせる付款付の遺贈です。

(負担付遺贈)
民法第1002条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(負担付遺贈の受遺者の免責)
民法第1003条 負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺言は法律の認めた一定の事項に限りすることのできる行為であり、遺言によってなしうる財産処分としては遺贈、寄付行為及び信託の設定が認められているところ、特定の財産を除くその余りの全財産の処分を第三者に委ねることを内容とする遺言は、右の遺言によってなしうる財産処分のいずれにも該当しないとされます。

原告主張のように、本件遺言は他の遺言により特定遺贈の対象とされた財産を除くその余りの全財産の遺贈の方法、受遺者の選定及びこれが複数のときはその遺贈額の決定を第三者乙に委託したものと解し得るとしても、現行法上、遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言を認める規定はなく、受遺者のごとき遺贈の内容の本質的な部分についてその決定を第三者に一任するような内容の遺言は代理を禁止する民法の趣旨に反するものであり、許されないとして、代理権限を証する書面として本件遺言書を添付した遺贈を登記原因とする所有権移転登記申請を却下した決定に違法はないとしました。

原告は、本件遺言は有効と解されている受遺者が、遺贈の目的物を受遺者の選定する他人に分与すべき負担を負わせる負担付遺贈と同趣旨に帰するから有効と解すべきであると主張しましたが、これには負担付遺贈の内容は遺言者自身によって決定されるものであり、これと遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言と同一に論ずることはできないとしています。

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負担付遺贈の効力 ・・・

負担付遺贈の負担の履行義務を負う者は受遺者です。

受遺者が負担を履行しないで死亡したときは、受遺者の相続人がその義務を承継します。

負担の履行を請求できる者は、遺言者の相続人及び遺言執行者です。

(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
民法第1027条 負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

(遺言執行者の権利義務)
民法第1012条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。

遺贈の目的の価額及び負担の価額は、受遺者が負担義務を履行する時を基準として定めます。

負担付遺贈の受遺者は、遺贈の目的の価額を超えない限度で、負担した義務を履行する責に任じます。

負担の価額が遺贈の目的の価額を超えるときは、その超過分だけ無効となります。

(負担付遺贈)
民法第1002条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者はその減少の割合に応じてその負担した義務を免れます。

(負担付遺贈の受遺者の免責)
民法第1003条 負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

遺留分回復による遺贈の目的の価額の減少は、それが判決によって確定されたものに限らず、裁判外の減殺権の行使によって減少した場合も含むとされています。

遺言者がその遺言に別段の定めをしているときは、その意思に従います。

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負担付遺贈の放棄と取消し・・・

負担付遺贈の受贈者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者である受益者は自ら受遺者となることができます。

負担付遺贈の遺言は次のようなものです。

「遺言者**は、長男**(受遺者)に次の財産である**を遺贈する。受遺者**は、妻**(受益者)に対して同人が生存中、その生活費として月額金**万円ずつを毎月末日に支払うこと。」

この受遺者となった受益者も遺贈の放棄をすることができます。

(負担付遺贈)
民法第1002条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

受遺者が負担付遺贈を放棄しますと、格別の意思表示を要せず当然に受益者となり、遺贈の承認によって、その地位が確定するとされています。

負担付遺贈を放棄した場合、遺言者がその遺言に別段の定めをしているときは、その意思に従います。

負担付遺贈の受遺者がその負担する義務を履行しない場合、相続人は受遺者に対して、相当の期間を定めてその履行を催告することができます。

受遺者が負担する義務を履行しないときは、相続人は、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
民法第1027条 負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

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