保佐開始の原因・・・
保佐開始の審判を受けた者は被保佐人とし、これに保佐人が付されます。
(被保佐人及び保佐人)
民法第12条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人、検察官の申立に基づき、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者に対して保佐開始の審判をします。
(保佐開始の審判)
民法第11条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。
(後見開始の審判)
民法第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
任意後見契約が登記されている場合、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長も申立をすることができます。
禁治産者の要件たる心神喪失の情況と準禁治産宣告の要件たる心身耗弱とは、等しく精神の理性的活動を阻害すべき病的状態をいい、前者はその障害の程度が是非の弁識力を欠くに至るものであるのに反し、後者は弁識力の薄弱なものであるとされます。
浪費者は、保佐開始の審判の対象とされません。
共同相続人が心身耗弱者である場合、遺産分割の協議は、この者を被保佐人とし、保佐人の同意を得て協議を成立しさせます。
心身耗弱者は、準禁治産宣告を受けていない場合には心身耗弱中の法律行為であることのみを理由として、その行為を取消すことはできないとされています。
共同相続人が未成年者の場合、親権者に対して準禁治産宣告があると、未成年者につき後見が開始するので、遺産分割の協議は未成年者がします。
保佐開始の申立後、保佐開始の原審判がされる前に本人が任意後見契約をしてその登記もされている場合、任意後見契約の無効をうかがうこともできないことから、保佐を開始するためには、「本人の利益のため特に必要がある」ことを要するにもかかわらず、原審において、この点の審理・調査が尽くされたとも認められないとして、抗告審が原審判を取消して差し戻した事例があります。
心身耗弱者であっても、本人の利益保護の観点から必要かつ相当でなく、かえって本人の利益を損なうおそれがあると判断されるときは、家庭裁判所は、その裁量により準禁治産宣告をしないことができるとされた事例があります。
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保佐開始審判申立・・・
保佐開始の審判は、家庭裁判所の甲類審判事項です。
①申立権者
本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人、検察官です。
(保佐開始の審判)
民法第11条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。
本人が任意後見契約を結んでいるときは、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人です。
本人の福祉を図るため特に必要がある場合は、市町村長です。
②管轄
事件本人の住所地の家庭裁判所です。
③申立費用の負担者
家事審判事件の手続及び裁判の告知の費用については、非訟事件手続法の規定が準用され、特にその負担者を定めた場合をのぞいて事件の申立人が費用を負担します。
裁判所は、費用の裁判をする必要を認めるときは、その額を確定して、事件の裁判とともにしなければなりません。
裁判所は、特別の事情があるときは、非訟事件手続法その他の法令の規定により費用を負担すべき者でない関係人に費用の全部又は一部の負担を命ずることができます。
市町村長から後見開始の審判等の申立がされた事案においては、申立に要する経費及び成年後見人等の報酬の全部又は一部について厚生労働省の助成事業があります。
市長が申立をした親しい身寄りがなく借家で一人暮らしをしている本人に対する後見開始審判申立事件で、後見開始の審判とともに成年後見人に社会福祉士を選任し、手続費用については本人の資産状況等に照らして非訟事件手続法26条を適用して申立人が負担するのが相当であるとして、同法28条に基づく費用負担の裁判をしなかった事例があります。
非訟事件手続法第26条 裁判前ノ手続及ヒ裁判ノ告知ノ費用ハ特ニ其負担者ヲ定メタル場合ヲ除ク外事件ノ申立人ノ負担トス 但検察官又ハ法務大臣カ申立ヲ為シタル場合ニ於テハ国庫ノ負担トス
非訟事件手続法第28条 裁判所ハ特別ノ事情アルトキハ本法其他ノ法令ノ規定ニ依リテ費用ヲ負担スヘキ者ニ非サル関係人ニ費用ノ全部又ハ一部ノ負担ヲ命スルコトヲ得
④添付書類
申立人の戸籍謄本
本人の戸籍附票謄本、登記事項証明書、診断書
保佐人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、登記事項証明書、等
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保佐開始審判手続・・・
家庭裁判所は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分なことを理由に保佐開始の審判をするには、本人の精神状況について、医師その他適当な者に鑑定をさせなければなりません。
ただし、明らかにその必要がないと認める場合は、この限りではありません。
準禁治産宣告の申立があった場合、審理の結果、心神喪失の常況にあると認定すべきときは、心身耗弱と心神喪失とは精神障害の程度の差であって行為能力の制限の度合いに差異があるにすぎないから制度の趣旨にかんがみ、禁治産の宣告をすることができ、禁治産宣告申立を準禁治産宣告可能とするする場合、この申立に付随する後見人選任申立には、準禁治産宣告がされるときには保佐人の選任を求める旨の申立の趣旨を含むものと解するのが相当であるとした事例がありました。
しかし、新制度では、後見開始の申立につき審理の結果、本人の精神の常況が申し立てられた類型と合致しない場合、実務は、申立人の意向を確認の上、保佐相当のときは申立の趣旨の変更、又は予備的申立を待って判断し、補助相当のときは、本人の申立又は本人の同意が必要のために、審判前に補助開始の審判開始の審判の申立の趣旨を変更した上で代理権付与又は同意権付与の申立を追加するか、補助開始の審判及び代理権付与又は同意権付与の申立を予備的に追加することを促すとされています。
家庭裁判所は、保佐開始の審判をする場合、本人の陳述を聴かなければなりません。
しかし、陳述聴取のため本人を呼び出しても出頭しない場合や、本人がいわゆる植物状態にあるなどの理由で陳述聴取が不可能な場合については、陳述聴取は不要と解されています。
家庭裁判所は、保佐開始の審判をする場合、職権で、保佐人を選任します。
(保佐人及び臨時保佐人の選任等)
民法第876条の2 家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する。
2 第843条第2項から第4項まで及び第844条から第847条までの規定は、保佐人について準用する。
3 保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。
また、保佐人を選任するには、保佐人となるべき者の意見を聴かなければなりません。
家庭裁判所は、保佐人を選任するには、被保佐人の陳述を聴かなければなりません。
保佐人に不正な行為、著しい不行跡その他保佐の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、保佐監督人、被保佐人もしくはその親族、もしくは検察官の請求によって、又は職権で、これを解任することができます。
(後見人の解任)
民法第846条 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。
保佐人の解任は、甲類審判事項です。
保佐開始の審判は、保佐人に選任される者並びに終了する任意後見契約に係る任意後見人及び任意後見監督人に告知されます。
本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官及び任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人は、保佐開始の審判に対して即時抗告をすることができます。
即時抗告の期間は、本人に対する告知又は保佐人、補助人に選任される者に対する告知があった日のうち最も遅い日から進行します。
その期間は2週間です。
保佐開始の審判と同時にされた保佐人選任の審判に対し、独立して不服の申立をすることができません。
申立人は、保佐開始の審判の申立を却下する審判に対して即時抗告することができます。
即時抗告の期間は、審判が申立人に告知された日から2週間です。
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被保佐人の行為能力・・・
被保佐人は民法13条1項各号に掲げる行為をするには、保佐人の同意を得てしなければなりません。
(保佐人の同意を要する行為等)
民法第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
1.元本を領収し、又は利用すること。
2.借財又は保証をすること。
3.不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4.訴訟行為をすること。
5.贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
6.相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7.贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8.新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9.第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
家庭裁判所は、民法13条1項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であっても保佐人の同意を得ることを要する旨の審判をなすことができます。
この審判がされる場合は、「本人の能力の程度に基づき、必要に応じて」とされています。
民法13条2項の宣告は家庭裁判所の甲類審判事項です。
しかし、判例は現代社会の経済取引の実情に適応するような民法13条1項に掲げる事項について拡張解釈をしてきているので、本項の宣告をする実務は極めて少なくほとんどないといわれています。
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