強制執行とは・・・
被告が判決にしたがって、自主的な判決内容を実現してくれる場合は良いのですが、そうでない場合には、強制執行をしなければなりません。
強制執行とは、国が権利者の権利内容を強制的に実現してくれる手続をいいます。
貸金の返還請求訴訟に勝訴した原告が強制執行する場合には、判決に基づいて裁判所や執行官などの執行機関が被告の財産を差し押さえ、競売にかけてお金に換えて、それを原告に渡してくれます。
原告は判決内容どおりの結果を得ることができます。
強制執行をするためには、強制執行の根拠となる債務名義を手に入れる必要があります。
債務名義は、判決が代表的ですが、それ以外に執行受諾文言付公正証書や調停調書・和解調書・仮執行宣言付支払督促などがあります。
次に債務名義の末尾に「強制執行をしてもよい」という執行文をつけてもらいます。
さらに、あらかじめ債務者にあてて、債務名義の主旨を送達するか、又は執行と同時に示すよう義務付けられています。
そして債務者がその通知を確かに受け取ったという送達証明書を手に入れます。
送達証明書は、債務者に強制執行をする予告です。
債務名義、執行文、送達証明書がそろって強制執行できる準備ができます。
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強制執行の差押禁止財産とは・・・
執行機関とは、強制執行を行う権限がある国の機関をいいます。
通常は地方裁判所か、地方裁判所にいる執行官です。
被告のどういう財産に強制執行するかについては、基本的に原告の自由です。
まず、執行官が被告の財産を差押えます。
これによって強制執行の対象となる財産を凍結するわけです。
次にそれを競売にかけて売り払います。
売り払った代金から、原告の取り分を渡した後、残りがあれば被告に返還します。
強制執行をする側は強制執行される側の財産ならば、何でも差押えてもよいわけではありません。
民事執行法という法律では、一定の範囲の債務者の財産を差し押さえ禁止財産としています。
①日常の生活に不可欠な衣服・寝具・畳・建具・台所用品や2か月分の食料・燃料
②給料
差押え可能なのは、税金などを差し引いた手取り額の4分の1までです。
ただし、手取り月給が29万円以上の場合は21万円を差し引いた残額全部の差押が可能です。
③仏像・位牌・勲章・日記・義手・義足など
④債務者の生活を保障するものとして、民事執行法以外の法律によって差押禁止とされている債権
生活保護法による生活保護、恩給法による恩給、国民年金法・厚生年金法による年金、労災保険法による労災給付、雇用保険法による失業等給付など。
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強制執行の停止とは・・・
強制執行手続は、当事者が法的な手続を踏まない限り、そのまま進行していきます。
執行機関には、裁判機関のように債務名義に示された請求権について法的な審査を行う権限はありません。
債務者が強制執行を止めるには、新たに裁判所に訴えを起こして、その訴訟の中で債務の不存在を明らかにしなければなりません。
これを請求異議の訴えといいます。
この請求異議の理由は、判決後に生じたものに限られています。
異議の訴えを申し立てても、その訴えだけで強制執行の手続が直ちに停止されるわけではありません。
訴えを起こした理由に法的な根拠があり、かつその事実が証明された場合に限り、裁判所は強制執行の停止を命じる判決を下します。
この執行停止の判決正本を執行裁判所に提出する事によって、初めて強制執行手続の進行をとめることができるのです。
執行停止の手続をするには、執行停止申立書の他に執行停止の理由を証明する文書が必要になります。
その証明文書は、債務名義を取り消す執行力のある裁判の正本、債権者による弁済猶予の文書などです。
証明文書を入手できない段階でも、債権額の3分の1に相当する担保を積めば執行停止の申し立てができます。
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