金銭債務の弁済を代物弁済・・・
金銭債務の弁済は、原則として、金銭の支払ですが、物の引渡しで金銭の支払に代えるのが代物弁済です。
代物弁済は債権者が一方的にできるものではなく、当事者の合意によって成立します。
(代物弁済)
民法第482条 債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
代物弁済は、事実上の倒産状態の債務者からの債権回収代替手段として行なわれ、実力行使的な回収手段として強行すると詐害行為として取消されたり、破産管財人に否認権を行使されます。
また、代物弁済をさせたときに、10万円の債権の代わりに100万円の機械を引揚げるのは不当とされ、代物弁済をするときは、その物の時価に従って、債権額との差額を算出して清算することとされています。
代物弁済は、清算の必要性や後日取消される可能性がありますから、やはり金銭弁済に勝るものはなさそうです。
なお、契約時に有事の際の代物弁済を予約しておくのが代物弁済予約ですが、不動産を代物弁済させる予約契約では仮登記担保法によって種々の制限を受けます。
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代理受領権限の性質・・・
代理受領とは、質権設定や債権譲渡が出来ない性質の債権を担保として融資を受けるものです。
例えば、公共工事の請負代金などは予算編成で、年度末完成の翌年度払いとなるため、それまでの間の運転資金や下請代金の支払のためい借入をする必要が出てきます。
公共工事の場合には、支払自体は確実になされますので、金融機関などが質権設定や債権譲渡が認められない請負代金については代理受領権限を取得することで融資をするのです。
しかし、最近では、融資のための代理受領ではなく、元請業者が倒産の危機に瀕したときに、下請業者などが元請業者ではなく注文主から直接代金の回収を図るために使われているようです。
債権譲渡をさせて通知を発送するなどの手間をかけず、代理受領権限を付与させ、直接も元請業者のもとへ行き、支払を受けるわけです。
また、契約によって請負代金債権の譲渡禁止特約がある場合でも、代理受領によって事実上の債権譲渡を行なうことができます。
代理受領の場合、代理受領権限を与えられるだけですから、受領した代金を債務者に返還しなければなりません。
債務者のこの反対債権にして、自分の債権と相殺します。
直接取立てをして受領してくる方法の他に、自分の口座に振込み送金させる方法もあります。
これを振込指定といいます。
債務者との間で代理受領委任契約を締結しても、他の債権者が第三債務者に取立てを阻止することはできません。
また、受領代理に止まりますので、第三債務者に対して督促することはできないのです。
第三債務者から、例えば、代理受領の委任状に「上記代理受領の件に承諾します」と署名してもらうなど、代理受領についての承諾をもらえば、第三債務者は、他の債権者や債務者本人に対して支払うことができなくなります。
また、この場合には第三債務者が公共団体などでない場合には確定日付をとることが必要になります。
債権者が二重に受領権限を取得しても、先に代理受領の承諾を受けているほうが優先することになります。
他の債権者が差押などをしてくると、それが優先します。
また、債務者が倒産した場合、第三債務者は債権者不確知などを理由に、供託することもありそうです。
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債権譲渡の性質・・・
契約で債権そのものを譲渡させ、債権者を移転させることを債権譲渡といいます。
譲渡された債権は、債権者が変るほかに変更はありません。
債権譲渡を受けると、自分が第三債務者に対する債権者になり、当然、自分の名前で支払を求めることができますし、支払を怠れば訴訟提起もできます。
債権譲渡ではどの債権を譲渡するのかを特定する必要があります。
将来発生する一切の債権として期間を限定させない場合もありますが、このようば通知は正常な債権譲渡ではないとして詐害行為取消を受けたり、破産の場合には管財人が否認する可能性が高いとされます。
債務者と第三債務者との間で譲渡禁止の特約をすることができます。
譲渡禁止特約の存在を知っていて、又は重大な過失で知らずに債権譲渡を受けた場合には、第三債務者に対して債権の行使ができません。
例えば、銀行に対する預金債権などの債権譲渡禁止特約は、誰でも知っていることなので、債権の行使はできません。
債権譲渡では、債務者に第三債務者との間の契約書を提示させるなどして債権譲渡禁止特約がついていないことを確認することが必要になります。
債権譲渡で問題になるのは、同じ債権が複数の者に譲渡されることです。
第三者に対して自分がその債権の譲受人であることを主張するためには、債権譲渡を受けたことの確定日付ある証書で、債務者から第三債務者への通知か、第三債務者の承諾が必要とされます。
この通知が第三債務者に到達した時点の早い人が他の譲受人に優先して譲受債権を行使できます。
債権譲渡通知が同時に第三債務者に到達した場合には、第三債務者は債権譲渡の到達の先後不明として、債務額を供託します。
この場合には、供託金を他の譲受人とそれぞれの債権額に応じて按分して配当を受けることになります。
他の債権者が差押をしてきた場合にも、差押がされたときと、債権譲渡通知が第三債務者に到達したときの先後で優先関係が決まります。
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債権譲渡登記の利用・・・
債権譲渡特例法では、債務者に対して、債権譲渡登記をさせるようにしました。
特に集合債権譲渡担保の債権譲渡では、譲渡担保債権が変更された都度、譲渡担保を発送することは不可能ですので、特例法の登記を活用することが不可欠になってきます。
登記をすることで他の債権者に優先して債権譲渡を受けたことを主張することができるようになります。
実際に譲受債権の回収を実行したいときになって初めて第三債務者に債権譲渡通知と登記事項証明書を交付すればよいとされます。
確定日付のある債権譲渡通知の到達が一番早かったのに、それよりも先に別の債権者が登記をしていると優先できなくなります。
そこで、法務局で債権譲渡登記のないことの証明書をとる必要があるのです。
登記されている事項のうち、債務者名など個々の債権を特定する事項を除いた事項を記載したものの交付は誰でも請求することができます。
この交付請求の書類の債権譲渡のないことの証明書の欄にチェックして申請すれば、誰がすでにその債務者の債権譲渡をしているか確認できます。