債務の履行期と履行場所の規定・・・

債務の履行期と履行場所の規定・・・

債権の内容が決まれば、履行期の関する条項を定めます。

元本、金利ともに履行期を確定した期限を定めます。

「乙(債務者)は甲(債権者)に対し、貸付金元本を平成**年**月**日までに持参して支払う。金利は、毎月末日限り、その月分を甲に持参して支払う」などと規定します。

この規定では、「甲に持参して支払う」と定めており、これは絶対に必要な条項であって、これを債権者の住所地と定めておくことによって、次の利点があります。

①弁済の提供に関する争いを防ぐ

仮に債務者の住所に取りにいく約束になっていると、債務者から債権者が取りに来なかったから払わなかった、などと抗弁されますので、持参債務であることを条文上明確にします。

②裁判を、債権者の住所地にある裁判所で起せる

民事訴訟法では、裁判の管轄を定める大原則は債務者の住所になっています。

一方では、義務履行地、つまり債務の弁済場所でも起せることになっています。

債務者と債権者がお互いに遠隔地に住んでいる場合には、裁判の管轄は重要になりますので、持参債務であることを規定します。

「乙(債務者)は甲(債権者)に対し、債務の元本及び利息を平成**年**月**日までに一括して、甲の下記取引銀行に振込送金して支払うものとし、これ以外の方法による弁済の提供は無効とする。***銀行以下略」

債務者の中には、債権者を訪問したが留守であったなどの弁解する場合がありますので、支払い方法を限定します。

そうすれば、銀行時間が経過すれば債務不履行が確実になるようにするのです。

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期限の利益喪失条項の重要性・・・

契約に絶対に必要な条項として、期限の利益喪失条項があります。

「乙(債務者)が債務の分割金若しくは利息金支払を1回でも遅滞したときは、乙は債務全額につき通知催告が無くとも直ちに期限の利益を失い、残額を一時に支払わなければならない」などと規定します。

これは分割金又は利息の支払の遅滞を期限の利益喪失の条件にしていますが、次のような事由の発生も期限の利益喪失の条件とします。

「乙(債務者)につき次の事由のいずれかが生じたときは、甲(債権者)は乙に対し通知催告を要せず、乙の債務全額につき期限の利益を失わせ、全額の支払を直ちに請求することができる。
(1)分割金又は利息の支払を1回でも怠ったとき
(2)手形又は小切手の不渡りが1回でも発生したとき
(3)会社更生、破産、民事再生、会社整理等の申立、又はこれと同種の法律上の申立があったとき
(4)強制執行、仮差押、仮処分の執行又は競売の申立がなされたとき
(5)税の滞納処分がなされたとき」

などと規定し、この条項を規定することで、次の利点があります。

①仮差押、強制執行の早期着手

分割金がまとまるまで強制執行を先延ばしにしていたのでは、他の債権者に先を越されてしまいます。

動産執行では特に短期間で競売に付されてしまいます。

強制執行認諾約款付公正証書を作っている場合には、期限の利益喪失により、執行を早めることができます。

②破産等の場合、元本の減額をされない

債務者が破産手続開始決定を受けた場合、決定の日よりあとに期限のくる債権は、利息相当分を割り引かれて、元本が減額しますが、これを防ぐのが期限の利益喪失条項です。

③債権者が債務者に対して別途債務を負担している場合、期限の利益を喪失させなければ相殺ができません。

相殺を早期に実行できるように、債権の期限を早く来させる必要があります。

④担保権行使を早めることにより、他の妨害を防ぐ

根抵当権の実行には、元本の確定が必要で、通常の抵当権でも、債務の弁済期が過ぎなければ、抵当権の実行ができません。

ですので、期限の利益を喪失させ、弁済期を到来させる必要があり、早期に抵当権実行の申立をすることにより、差押の効果が生じ、これ以降の担保権その他の妨害、仮登記権利者による妨害等を排除するのに有効です。

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手形による支払遅滞を防ぐ条項・・・

商取引で手形支払としている場合の注文書、注文請書、契約書には、「**日締切、翌月25日120日サイト手形払い」等と記載してある場合があります。

これによると締切から約5ヶ月後に現金になりますが、債務者が資金繰りに苦しい時は、手形さえを振り出さないような場合があります。

このようなことを防ぐために、事前若しくは今後のために次のような念書をとり、手形を振り出さないような場合には、手形の交付日に弁済期が来るようにしておきます。

念書

貴社に注文した**の商品代金については、注文書に、**日締切の翌月25日、120日サイトの手形払いと記載してありますが、右は本来**日締切の翌月25日に現金にて支払うべきところ、貴社の承諾により120日サイトの当社振出の約束手形を支払のため振り出すことによって、期限の猶予を得たものです。
よって、万一手形を交付すべき日に当社が約定どおり手形を振り出して貴社に交付しなかったときは、手形を交付すべき日に債務支払の期限が到来したものとされても何ら異議を申し立てません。

このような念書が無い場合には、内容証明郵便で一定期間を定めて、この期間内に手形を振り出して交付してくれなければ、商品売買契約中、手形による支払を認めた条項を解除する旨の催告と解除通知をすることになります。

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