離婚の強度の精神病・・・

離婚の強度の精神病・・・

配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないときは、これを離婚原因として、裁判上の離婚を請求することができます。

配偶者が精神病になったからというだけでは、離婚原因とはなりません。

その精神病が、強度であり、かつ、回復の見込がないとき、離婚原因となります。

強度の精神病とは、普通の結婚生活を継続できない状態の病状とされています。

配偶者が強度の精神病であるから離婚したいという訴えを起こす場合、妻のヒステリーを離婚原因とすることができるかが問題となる場合があります。

しかし、ヒステリーは精神病ではなく、神経症で、ノイローゼの病状の一種であるとされていますので、離婚原因とはなりません。

一般的に、精神病は精神機能の障害が明らかで、行動が混乱し、人格の変化が深刻で何か異常の感じを与えますが、神経症は精神機能の障害が軽く、多くは自分の行動が普通でないことを意識できます。

精神病は、自分の異常を意識することができず、悩むこともありません。

配偶者が強度の精神病で回復の見込がないことを離婚原因として、離婚の請求の訴えを起こす場合、相手方は精神病で法律上の無能力者ですから、その代理人が必要となります。

精神病者が、後見の登記を受けているときは、後見監督人を選び、一方の配偶者である後見人から、被後見人の代理人としての後見監督人を相手方とし、訴えを起こせばよいわけです。

精神病者が後見の登記を受けていないときは、精神病者の特別代理人を選任し、これを相手方として訴えを起こします。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

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離婚の結婚を継続し難い重大な事由・・・

結婚を継続し難い重大な事由というは、具体的には個々の場合を判断することになります。

①夫婦の精神的な破綻

夫婦の一方が不貞行為に近い行為をしたことから、信頼が失われて、精神的な破綻をきたすこともあります。

夫婦の宗教観の違いから精神的な破綻をきたす事例もあります。

新興宗教やいかがわしい宗教類似団体を狂信するあまり、夫婦間で深刻な精神的破綻となります。

②肉体的な破綻

性的結合を伴わない夫婦は、形式的にはありえても、実際的には結婚ではありません。

性的結合を不可能とする事実がある場合の夫婦間では、結婚を継続し難い重大な事由があるといえます。

配偶者が伝染性の病気にかかっていて、性的結合によって感染の恐れがあるような場合も、肉体的破綻をきたします。

夫又は妻がその相手方に暴力を加えたために肉体的な障害が生まれたり、経済生活を支えるための過重労働から疲労して性的結合ができなくなるなどの場合もあります。

③経済的な破綻

結婚を継続できるという前提で結婚をしたのに、相手方が失業、倒産、傷病その他の原因で経済力を失い、生活できない事態に陥ったとしても、直ちに結婚を継続し難い重大な事由があるとはいえません。

結婚を継続するために必要な経済力は、配偶者の一方だけがこれを負担しなければならないというものではなく、その相手方も当然に負担すべき義務があり、互いに協力、扶助しなければならないのですから、その責任を相手方にだけ負わせることは酷です。

配偶者の一方に浪費癖があって、それが経済的破綻の原因となった場合や、夫婦の一方の忠告を聞かないで経済的な破綻をきたし、そのために結婚を継続することができなくなった場合には、相手方はこれを重大な事由として訴えを起こすことができるとされます。

④刑罰を受けたとき

配偶者が刑罰を受けたときは、犯罪の性質によっては、結婚を継続し難い重大な事由が発生すると考えられます。

⑤配偶者の親族との不和

配偶者の父母又は兄弟姉妹が、夫婦と一軒の家に暮らしているような場合には、血のつながりのない配偶者との間で感情的な対立、敵視の状態が続いて、結婚の継続を難しくしている事例があります。

(裁判上の離婚)
民法第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

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離婚訴訟を起こす場合・・・

夫婦の間で協議上の離婚ができなくて、しかも一定の離婚原因があるときは、当事者は裁判上の離婚を請求することができますが、この場合には、まず家庭裁判所に対して、調停の申立てをします。

これは、夫婦、親子、相続などの家庭内のいざこざについては、いきなり訴訟を起こさないで、まず調停手続によって解決するように努力し、どうしても判決によらなければ解決しない事件だけを地方裁判所で審理して判決を下すという建前をとっています。

これを調停前置主義といいます。

一定の離婚原因があって離婚請求の訴えを地方裁判所に対して提起しても、地方裁判所はこれを家庭裁判所へ移して、調停手続をすることになります。

ただ、相手方が生死不明のときの離婚訴訟は生死不明の相手方との間に調停離婚することはできませんから、初めから地方裁判所に提訴して、判決による離婚をすることになります。

裁判上の離婚の提訴をすることができるのは、夫婦のいずれかです。

夫婦以外の者、例えば、夫又は妻の親が当事者である夫婦の結婚を解消するために、離婚訴訟を起こすことはできません。

①夫婦のどちらかが被後見人である場合には、その相手方配偶者は、被後見人の後見人となっているのですから、本人にかわって後見監督人が原告となります。

②配偶者が被後見人となっていない場合には、後見人が原告となります。

③被後見人が、精神状態が平常にかえっているときは、本人が原告となって訴訟行為をすることができます。

④訴状を提出する裁判所は、夫婦が夫の氏を称しているときは夫の、妻の氏を称しているときは妻の、普通裁判籍のある住所地の地方裁判所とします。

⑤調停離婚の申立ては、相手方の住所地の家庭裁判所に対してします。

離婚訴訟は、これに伴う損害賠償や慰謝料の請求も同時にこれをすることができます。

また、被告が反訴を起して離婚を求める訴えを起こすこともできます。

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