複数の後見人による代理の効力・・・

複数の後見人による代理の効力・・・

最判平成3・3・22家月43巻11号44頁

<事実>

Yは祖父の養子となったが、祖父死亡の後、実父母A・Bが後見人として就職した旨戸籍に記載された。

Xは、後見人としてYを代理するA・Bとの間に締結した土地売買契約に基づき土地の引渡を求めたが、青年に達したYは本売買契約が無権代理によるものであり、Yは追認していないので無効であると主張した。

なお、Yは本売買契約に基づき土地所有権移転登記がなされていた事実を知り得たと推認できるにもかかわらず、その無効を主張しなかった。

<争点>誤って複数選任された後見人が未成年者を代理してなした行為は無権代理行為となり、未成年者本人が成年となった後、追認しないかぎり無効となる。ただ、相手方保護のため追認拒絶を否定するにはどうような条件を必要とするか。

<判旨>

「Yにつき後見が開始した当時、後見人は1人でなければならないことが看過されていなければ、両名(実親であるA・B)のうちいずれかが後見人に選任されたものというべきところ、本件売買契約により前記のとおり本件各土地の抵当権の負担が消滅し、その他A及びBの両名が後見人として関与したことにより、Yの利益が損われたわけではなく、Yも、成年に達した後において、右ABがYの財産を管理してきたことを事実上承認していたものというべきであり、しかも本件売買契約の無効を問題としたこともなかったのであるから、かかる事実関係の下においては、Yは、信義則上、A及びBがした無権代理行為を理由として本件売買契約の効力を否定することは許されない」。

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立替扶養料の求償請求・・・

最判昭和26・2・13民集5巻3号47頁

<事実>

X・Yの母Aは平素病身であった上、夫Bと不仲であったところ、Xが、BおよびYが引き留めるのをきかないでAをXの居宅へ連れ帰り、扶養看護を続け今日に至った。

Xは後になって、過去の扶養料等の半額を立替扶養料としてYに償還請求した。

原審は、XはAを引き取って扶養を尽くすのが目的であって、YのためにYに代わって扶養看護したものではないとして、Xの請求を棄却したので、Xは上告した。

<争点>扶養義務者Xが、現に扶養していた扶養義務者Yの意に反してAを引き取って扶養した場合には、XはYに対して立替扶養料のうちYの負担すべき部分を求償しうるか。

<判旨>破棄差戻し

「現に扶養している扶養義務者の意に反して扶養権利者に引き取って扶養したという事実だけでは、直ちに扶養義務者の費用の負担の義務なしとすることはできない。

そういう結論に到達するためには、なお進んで扶養義務者も扶養権利者に対し相当の扶養をなしたであろうのに何等相当の理由もなく他の扶養義務者が無理に扶養権利者を連れ去ったとか、あるいは他の扶養義務者が自己のみで費用を負担することを約束したとか何等かそういったような扶養義務者をして全面的に義務を免れしむ相当の理由がなければならない」。

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私的扶養と公的扶助との関係・・・

名古屋高決平成3・12・15家月44巻11号78頁

<事実>

XとYは夫婦であり、2子をもうけたが、後にXは難病にかかり入院し、現在に至っている。

YはXの入院当初婚姻費用を支弁したが、その後は支弁せず、Xは生活保護を受けている。

Yは喫茶店を経営し、2子を育てている。

Yの離婚請求は棄却が確定している。

Xの婚姻費用分担の申立に対して、原審は、Xは生活保護を受けており、生活に困窮しておらず、他方、Yは生活を維持するのが精一杯であることが明らかであるとして、Yの収入または可処分所得の具体的な検討なくXの申立を却下したので、Aは即時抗告した。

<争点>婚姻費用の分担請求権者Xが、生活保護を受けており、生活に困窮しておらず、他方、同分担義務者Yは生活を維持するのが精一杯であることが明らかである場合には、Yの収入または可処分所得の具体的な検討なくしてXの申立を却下しうるか。

<判旨>取消し・差戻し

「生活保護法による生活保護は、民法に定める扶養義務者の扶養等に劣後して行なわれるものとされているのであるから、民法に定める婚姻費用分担義務を考慮するにあたり、生活保護法による生活保護の受給をXの収入と同視することはできない。

また、・・・仮にYは生活を維持するのが精一杯であるとしても、そのこと自体、何等Yの扶助義務ないし婚姻費用分担義務を消滅させる筋合いのものでないことは明らかであり、Yの収入又は可処分所得を検討しないままYの右義務を否定することは相当ではない」。

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老親に対する成熟子の扶養義務・・・

広島家審平成2・9・1家月43巻2号162頁

<事実>

老親X1・X2には、2人の成熟子がいる。

長男YはX1の多大な教育負担の末、医師になり、病院を経営している。

Yの年間の収入は相当高額である。

長女Aは医師と結婚し、特別養護老人ホームの園長をしている。

老親X1・X2は年金と、Aの提供するマンション及び扶養料で暮らしているが、病弱で家政婦も雇わざるをえない。

Yも扶養料を払っていたが、X1が所有していた唯一の不動産をAに贈与したことから、扶養料を払わなくなった。

X1・X2からYに対して扶養の調停を申し立てたが、不調に終わり、審判に移行した。

<争点>成熟子の老親に対する扶養の程度は、子の養育に親の多大な負担があり、そのお陰で今日子が十分な資力を有している場合には、子は生活保持義務的な考慮をした生活扶助義務を老親に負担すべきか。

<判旨>認容

老父母に対する成熟子の扶養義務は生活扶助義務であるとされるかが、老親扶養は、過去における養育の事実、相続権の有無、扶養義務者と扶養請求者とのこれまでの交渉の程度などの点を考慮すると、他の一般の親族扶養の場合と比較して、扶養の程度はやや異なり、生活保持義務的な配慮をすることも許される。

したがって、過去に高等教育を受け、医師として高額の収入を得ている成熟子は、老父母に対し、同人等の人事院統計資料による標準生計費をかなり上回る額の生活水準を維持するため、これを扶養する義務がある。

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