手形変造の責任とは・・・

手形変造の責任とは・・・

手形の変造とは、手形の記載事項を権限なしに変更する事をいいます。

既に記載されている事項を変更する事だけでなく、勝手に書き加えることや抹消することも含まれます。

振出人や裏書人は、変造手形の支払いを拒絶したら、不渡り処分を避けるために異議申立てをする必要があります。

手形を変造された場合、振出人として署名した者や裏書人として署名したのかによって、支払責任は異なります。

変造前に署名した者は、変造前の手形の内容についてのみ責任を負えばよいのですが、変造後に署名した者は、変造された内容について責任を負わなければなりません。

手形を見ても変造されたことがはっきりわからない場合には、変造前に署名した手形債務者は、変造された事実と変造前の内容を立証できない限り、変造後の内容で責任を負わなくてはならないわけです。

手形を見れば明らかに変造されているとわかる場合には、所持人は債務者が変更に同意した事と、変更後に署名した事を立証できない限り、現在の内容で請求する事はできません。

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融通手形とは・・・

商取引に基づいて振り出された手形を商業手形というのに対し、手形割引などで現金化し、資金繰りなどの目的で振り出された手形を融通手形といいます。

例えば、資金繰りに行き詰ったAが、知り合いのBに頼んで自分を受取人にした手形を振り出してもらい、その手形を金融機関に割り引いてもらって運用資金に使うようなことをいいます。

このような融通手形を借手形とか貸手形といいます。

この場合、Aが約束どおり支払期日までに手形か手形金を返還すれば問題はありませんが、資金繰りに困っているAが約束を守る可能性は低いといえます。

振出人Bが受取人であるAから支払い請求された場合には、融通手形であることを理由に拒否できますが。Aがこの手形を割引きや裏書などして資金の決済にあて、第三者に回してしまうと、その第三者が融通手形について善意か悪意かに関係なく、Bは支払いを拒絶できません。

やむを得ず融通手形を振り出す場合は「これによって受取人Aは振出人Bに何ら迷惑をかけない」といって特約を結ぶことです。

振出人はこの特約があることを知っている悪意の第三者から支払い請求を拒否できます。

この場合でも、第三者の悪意を立証する責任は振出人にあり、それを立証するのは難しいことです。

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融通手形を見分けるには・・・

資金不足になった2つの会社が、互いに同一金額、同一支払期日の手形を振り出しあって交換し、それぞれが割引きを受けて資金調達することがあります。

このような融通手形を書合手形とか馴合手形といいます。

書合手形では、どちらか一方の会社が不渡りを出すと、他方の会社は自社が振り出した手形を決済した上に、相手の会社が振り出した不渡り手形を買い戻さなければなりません。

振り出した金額の倍の額を用意しなければなりません。

もともと資金繰りが苦しい同士で融通手形を書きあっていますから、一方が不渡りを出せば、他方も不渡りを出す可能性が高いのです。

このような危険な手形を裏書されて受け取ったら、不渡りを覚悟しなければなりません。

融通手形を見分ける方法は次になります。

①振出人と受取人の業種から見て、常識的に両者に間に商取引があるとは考えにくい。

②両者の間に商取引があることは予想できるが、通常の商取引から判断して、手形の流れが逆になっている。

③振り出しと受取人の営業規模から見て、手形金額が大き過ぎる。

④振出人と受取人の通常の取引から判断すると端数が出るはずなのに、手形金額がきりのいい数字になっている。

⑤毎月一定の日付で手形を振り出している会社なのに、その手形に限って振出日がいつもと異なっている。

⑥手形のサイトがいつもと違っている。

⑦振出人と受取人の両者が同じ資本系列に属している、あるいは両者の間に役員の兼務がされている。

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手形詐欺の手口とは・・・

資金繰りに困っている人に近づいて「有利な条件で割り引いてくれる人がいるので紹介します」などといって、巧みに手形を騙し取る輩がいます。

この輩は、パクリ屋などと呼ばれています。

こうした詐欺グループに騙し取られた手形の支払を振出人は拒絶できるかについて、騙し取った本人が取立に回してきた場合には、振出を取り消すことができます。

しかし、これらの輩は、間違いなく第三者に渡して取り立てるはずです。

この場合、第三者が、その手形が騙し取られたものであることについて悪意で取得したのであれば、振出人は詐欺による取消を理由に支払いを拒絶することができます。

しかし、第三者が悪意であることを立証する責任は振出人にあります。

もちろん、それを立証するのは大変難しいことです。

それでも支払いたくなければ、不渡り処分をさけるために、訴訟される事を覚悟で異議申立てをすることです。

振出人は支払銀行に手形金と同額の異議申立預託金を積む必要があります。

この異議申立預託金は、資金不足によって支払いを拒絶しているのではない事を証明するものです。

しかし、詐欺されたものであることを知らなかった善意の第三者が受け取った場合は、振出人は支払い請求を拒絶できません。

脅迫によって振り出された手形の場合もこれと同じ扱いです。

このパクリ屋に対し、サルベージ屋というパクられた手形を回収することを職業とする専門業者も存在します。

詐欺にあった人に近づいて「パクられた手形を取り戻しましょう」といって、多額の手数料を取る回収専門の業者です。

しかし、パクリ屋もサルベージ屋も多くは暴力団やいわゆる企業舎弟がかかわっているのが実情で、パクリ屋とサルベージ屋がグルになっている場合も多いみたいです。

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