取締役の報酬の変更・・・

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取締役の報酬の変更・・・

最判平成4年12月18日(取締役報酬請求事件)
民集46巻9号3006頁、判時1459号153頁、判夕818号94頁

<事実の概要>

Y株式会社は、Aによって設立された倉庫業等を営む同族会社である。

Aは、Y社の経営を同族で固めていたが、娘婿のXに経営参加を要請し、Xは昭和45年12月から昭和60年6月14日に任期満了により退任するまでY社の取締役であった。

Y社の定款には、取締役の報酬は株主総会決議をもって定める旨の規定があり、株主総会議事録上は役員報酬の年額の定めが、取締役会議事録上も各取締役の報酬額について決議がなされた旨が記載されていた。

これらの決議の記載に従って各役員に報酬が支払われていたが、実情は代表者の一存で報酬額が定められており、Xの昭和58年度の報酬額は月額50万円だった。

Aの死後、Aの後継者であるBとXとの対立が深刻化し、昭和58年10月の取締役会でXは常勤取締役から非常勤に変更された。

BがXの出社に抵抗したこともあってXはY社に出社して業務を行うことを中止したが、昭和59年1月13日取締役会でXへ取締役報酬支払の打切りが決議され、昭和59年7月13日の株主総会では、Xの同意を得ることなく、B他1名を除くXらの取締役を無報酬とすることが決議された。

Xが取締役報酬又は従業員賃金として昭和59年1月1日以降の毎月額50万円分の支払を求めて提訴。

原審判決は、いったん定められた取締役報酬を一方的に減額・不支給とすることができるとし、昭和59年7月13日までの間の取締役報酬請求権を認めた。

Xは上告した。

<判決理由>破棄自判。

「株式会社において、定款又は株主総会の決議(株主総会において取締役報酬の総額を定め、取締役会において各取締役に対する配分を決議した場合を含む。)によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではないと解するのが相当である。

この理は、取締役の職務内容に著しい変更があり、それを前提に右株主総会決議がされた場合であっても異ならない。」

従って、昭和60年6月14日までの間の報酬請求権を認める。

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取締役会決議が必要な重要な財産の処分・・・

最判平成6年1月20日(株主権確認請求事件)
民集48巻1号1頁、判時1489号155頁、判夕842号127頁

<事実の概要>

X社は、ショッピングセンター等の経営を目的とする株式会社であり、平成元年2月末日現在のXの資本金は1億6700万円、その有する資産の価額は合計47億8640万円余、その有するA社株式(額面50円)12万1000株(以下、「本件株式」)の帳簿価額は7800万円であり、A社の発行済み株式の7、5%に当る。

A社は、茶の製造販売を営む株式会社で、昭和63年及び平成元年に株主に対し、額面50円に対し1割に相当する金額の利益配当をした。

A社は、X社の発行済み株式の17、86%を有しているが、X社との間に商品の取引はなく、X社は、A社の株主総会に出席したことはない。

X社は、もともとB家によって設立され支配されてきたものであるが、B家と代表取締役Cとの間で内紛が生じ、平成元年9月19日にB家の親戚に当りA社の代表取締役でもあるDがX社の取締役及び代表取締役に選任され、Cは同年12月1日、代表取締役を解任された。

その後、B家とCらとの間で和解が成立し、平成2年1月19日、Dは代表取締役を解任され、Cが再びX社の代表取締役に選任された。

これより1日前の平成2年1月18日、X社代表取締役Dは、Yに対し、X社の有する本件株式を代金7986万円で譲渡した。

本件株式の譲渡については、Xの取締役会の承認決議はされていない。

なお、X社の取締役会において、昭和63年6月15日、X社の有する他の会社の株式を譲渡することを承認する旨の決議がされたことがある。

X社は、本件株式の譲渡の無効を前提として、Yに対し、X社が本件株式の株主であることの確認を求める訴えを提起した。

第1審判決は、X社の請求を棄却した。

X社が控訴し、控訴審において、本件株式はX社にとって前商法260条2項1号の「重要なる財産」に該当するのに、本件株式譲渡はX社の取締役会の承認を経ていないから無効であるなどと主張した。

控訴審判決は、本件株式はX社にとって価格的には相当な財産であるが、X社は、本件株式によってAから配当を受領していただけあって、X社の営業を維持発展させるためにどうしても保有しなければならない財産であるとまで認めることはできず、本件株式を売却してもその代価を取得できることや本件株式の帳簿価格とX社の資産額との対比などをあわせ考えると、本件株式譲渡をもって前商法260条2項1号の「重要なる財産の処分」ということはできないとした。

X社は上告した。

<判決理由>破棄差戻し。

「商法260条2項1号にいう重要な財産の処分に該当するかどうかは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、本件株式の帳簿価額は7800万円で、これはX社の前記総資産47億8640万円余の約1、6%に相当し、本件株式はその適正時価が把握し難くその代価いかんによってはX社の資産及び損益に著しい影響を与え得るものであり、しかも、本件株式の譲渡はX社の営業のため通常行われる取引に属さないのであるから、これらの事情からすると、原判決の挙示する理由をもって、本件株式の譲渡は同号にいう重要な財産の処分に当らないとすることはできない。

さらに、本件株式はA社の発行済株式の7、56%に当り、A社はX社の発行済株式の17、86%を有しているのであり、(証拠略)によればA社は平成2年5月30日に開催されたX社の株主総会に出席した上取締役選任に関する動議を提出したことがうかがわれるのであるから、本件株式の譲渡はX社とA社との関係に影響を与え、X社にとって相当な重要性を有するとみることもできる。

また、(証拠略)によれば、・・・X社においてはその保有株式の譲渡については小額のものでも取締役会がその可否を決してきたものとみることもできる。

そうすると、原判決には審理不尽、ひいては法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免れず、更に審理を尽くさせる必要があるので、本件を原審に差し戻すこととする。」

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招集手続の瑕疵と取締役会決議の効力・・・

最判昭和44年12月2日(約束手形金請求事件)
民集23巻12号2396頁、判時581号72頁、判夕243号202頁

<事実の概要>

Y株式会社は事業資金の不足を、Y社代表取締役Aが代表取締役を兼ねているX株式会社からの借入によって補うことにし、昭和35年3月10日、その協議のために取締役会を開催したが(以下、「本件取締役会」)、Y社の当時の取締役6名のうちB及びCに招集通知をせず、同人らは出席しなかった。

この取締役会において出席した4名の取締役の協議により、事業資金の不足を補うためにX社から3000万円の資金を借り入れること、その借入申込、時期、支払方法及びそのための手形振出等に関し代表取締役Aに一任するという内容の決議をした。

Aは、この決議に基づき、Y社の必要の都度X社から資金を借入れ、その都度担保のためにX社に約束手形を振り出していた。

本件の約束手形2通はいずれもX社からY社に対する前記貸金の一部の担保として振り出された手形の書替手形として振り出されたものである。

本件手形の受取人であるX社は、満期後、手形金の支払を求めて本訴を提起した。

これに対しY社は、本件手形振り出しの当時、Y社の代表取締役であったAはX社の代表取締役を兼ねていたから、本件手形はその振出につきY社の取締役会の承認を必要とすべきところ、その承認がなく無効であるなどと主張した。

第1審判決は、本件手形の振出及びその原因関係である金銭貸借について、Y社の取締役6名のうち4名の会合による承認の決議があったが、会合においてはB及びCに対する招集通知がなく、同人らが出席しなかったから、この取締役会は手続に瑕疵があったところ、不出席の2名の取締役に適法な招集通知がなされたものと認められるとして、X社の請求を認容した。

Y社は控訴した。

控訴審判決は、本件取締役会の開催については、取締役の1人であるBに対し招集通知をせず、B及びCが出席しないまま決議がされたことは、Y社の自認するところであり、本件取締役会における承認決議は、その招集手続が前商法259条の2に違反し、無効であるとして、Y社の借入契約及び本件約束手形振出行為は全て無効であると判示した。

X社は上告した。

<判決理由>破棄差戻し。

「取締役会の開催にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠くことにより、その招集手続に瑕疵があるときは、特段の事情のないかぎり、右瑕疵のある招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが、この場合においても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、右の瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になると解するのが相当である(最高裁判所昭和39年8月28日第二小法廷判決、民集18巻7号1366頁参照)。

しかるところ、記録に徴すれば、第1審判決は、右の法理に基づき、Y社取締役会において本件取引に対する承認決議がなされた際の事情を認定したうえ、右取締役に出席しなかったB及びCに対して取締役会の招集通知がなされなかったが、Bはいわば名目的に取締役に名を連ねているにすぎず、したがって、同人らに対して適法な招集通知がなされ、同人らが取締役会に出席しても、前記承認の意思決定に影響がなかったものと認められるとし、本件承認決議が有効になされたものとの判断を示したところ、X社は、原審において右判断を援用し、本件決議の有効性を主張していることが認められるから、X社は、原審において前記特段の事情を主張していたものと解すべきである。

しかるに、原判決は、本件取締役会の開催については、取締役の1人であるBに対し招集通知がなされなかったこと(Cに対する招集手続の有無については確定するところがない。)、B及びCが前記取締役会に出席しないまま前記承認決議がなされたこと、右両名がのちに右決議内容を承認した事実は認められないことを確定しただけで、X社の前記主張については格別の判断を示さないまま本件承認決議は無効であると断定し、これが有効であることを前提とするX社の請求を排斥しているのである。

してみれば、原判決には当事者の主張に対する判断を遺脱した違法があるが、右主張の成否は原判決の結論に影響を及ぼすものであるから、同旨をいう論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。

よって、右主張の成否についてさらに審理を尽くさせるため、民訴法407条に従い本件を原審に差し戻すべきものとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。」

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議決権拘束契約の効力 取締役会決議・・・

東京高判平成12年5月30日(損害賠償請求控訴事件)
判時1750号169頁

<事実の概要>

A株式会社は、明治42年創業で、X1とYの実父であるBが経営していたゴム産業大手の会社であり、今日、B家による同族会社であるC社、D社、E社を含めてグループ企業を形成している。

Bの死後は、長男であったX1がA社の代表取締役に就任し、その後弟のYもA社に入社し、これまで長期間にわたり代表取締役がX1、代表取締役専務がYとして、兄弟で経営を行ってきた。

Y(昭和5年6月生)は、かねてX1(大正11年11月生)に対し、A社の社長をゆずってくれるよう申し入れていたが、X1はこれを受け入れ、昭和62年8月31日、X1とYは、次のとおり本件合意した。

①X1は、昭和62年9月30日までに、A社及びD社の代表取締役社長を退任し、代表取締役に就任する。

Yは同時にA社及びD社の代表取締役に就任する。

Yは同時にC社及びE社の代表取締役社長を退任し、代表取締役会長に就任する。

X1は同時にC社及びE社の代表取締役社長に就任する。

ただし、YのC社の代表取締役会長への就任とX1の同社の代表取締役社長への就任は当面延期する。

②X1及びYは、昭和70年9月30日にA社・C社・D社・E社の代表取締役をそれぞれ退任し、X2及びFが同時に各社の代表取締役に就任する。

③X2、Fの両名は、昭和62年4月よりA社に入社し、一般社員として待遇されるが、4年以内に取締役に就任し、その時以後は同一報酬、同一待遇とする。

④X1、Yは、Aグループ各社の代表取締役を退任後、昭和80年末まで、両人が同額の一定報酬をAグループより受けることができる。

⑤X1一族、Y一族のAグループ各社に対する出資比率は平等とし、今後とも両家一族が対等にして機会均等、平等互恵の経営を旨とし、一方が他家を支配できるような持株比率、定款、役員会若しくは組織、派閥等を作らないものとする。

本件合意に従い、X1は、昭和62年9月にA社の代表取締役社長から代表取締役会長になり、Yは、代表取締役専務から代表取締役社長になった。

C社の代表取締役社長は依然としてYであった。

昭和62年4月にA社に入社していたX2(X1の子)とF(Yの子)は、ともに、昭和63年1月にE社の、平成2年にC社の、同年5月にD社の、同年12月にA社の各取締役に就任した。

しかし、平成5年10月頃からX1とYの仲が円満を欠くようになり、平成7年3月からはA社の取締役会においてYを支持する者が多数を占めるようになった。

平成7年9月末日をもって合意②に定める「昭和70年9月30日」が経過したが、X1もYもともにAグループ各社の代表取締役を辞任することはなく、X2及びFが代表取締役に選任されることもなかった。

その後、X1は、A社・C社・D社の代表取締役を解任され、X2はA社の取締役に再任されなかったが、Yはこれらに賛成した。

さらに、X1は、A社及びC社の取締役に再任されず、X2はC社の取締役に再任されなかったが、これらにもYは賛成した。

そこで、本件合意にYが違反したとして、X1及びX2がYに対して損害賠償を求めた。

第1審判決は、X1とYの本件合意は、商法で定めた会社法制度を否定するに等しく、法的な意味における拘束力を認めることはできないとして、X1の請求を棄却した。

X1は控訴した。

<判決理由>控訴棄却。

「1(1)本件合意①は、・・・取締役会における取締役としての議決権の行使について合意したものと解することができるところ、X1とYとが右のような合意をすることは何ら不当であるとは解されないから、X1及びYは、Aグループ各社の各取締役会において右の合意に従った議決権を行使すべき義務を負うに至ったものというべきである。・・・

(2)本件合意②は(1)X1とYがともに昭和70年(平成7年)9月30日限りでAグループ各社の代表取締役を退任することを合意し、(2)そして、その代わりに、X1及びYをAグループ各社の代表取締役に就任させることを合意したものである。

右(1)の合意は、X1とYの意思のみによって履行し得るものであり、取締役会の決議を要するものではなく、そして、それが商法の精神に反するとも解し難いから、右の合意は有効であり、X1及びYは平成7年9月30日までにAグループ各社の代表取締役を辞任する義務を負うに至ったものというべきである・・・。

次に、右(2)の合意は、X2とFとがAグループ各社の取締役として選任されていることを前提とした上で、各取締役における議決権の行使について、X2とFとが代表取締役として選任されるよう議決権を行使することについて合意したものであるが、取締役会において誰を代表取締役に選任するかにつき予め他の取締役と協議することは、何ら不当ではなく、その際、取締役会における議決権の行使につき一定の者を選任すべきことを約束したとしても、取締役会が多数決によって決議される機関であることに鑑みれば、何ら商法の精神に反するものとはいえず、従って、右の合意もまた有効というべきである。

・・・しかしながら、X1とYとの間でされたこの合意は当事者間の合意にとどまるものであって、この合意によってX2の自己が代表取締役となることの期待権ないし期待利益を生じさせるものと解することはできない。・・・

(3)本件合意③は、(1)X2及びFを4年以内にA社の株主総会において取締役に選任する旨の合意をし、(2)かつ、X2とFとがAグループ各社において報酬、待遇に関して同一に取り扱われることを合意したものである。

右(1)の合意は、A社の株主総会においてX2とFとをともに取締役として選任するよう議決権を行使すべきことを約束したものと解されるが、・・・右の合意もまた有効である・・・。

次に、右(2)の合意は、・・・極めて抽象的であり、・・・右の合意によってX2及びFが同一報酬同一待遇を受ける期待権ないし期待利益を取得したりあるいはX1及びYに対して同一報酬同一待遇の実現を請求したりする権利を直接に取得するに至ったものとは解し難いものというべきである。

(4)本件合意④は、X1及びYがA社グループ各社の代表取締役を退任した後において、なお取締役としての地位を有していることを前提に、昭和80年(平成17年)末までの約18年間にわたって双方が同額の報酬をAグループ各社から受領することができる旨を合意したものである。

・・・しかし、昭和62年から平成17年末(X1 83歳、Y 75歳)までの約18年間の長きにわたって議決権の行使に拘束を加える右の約束は、議決権の行使に過度の制限を加えるものであって、その有効性には疑問があるといわざるを得ず、少なくとも、相当の期間を経過した後においては、・・・本件合意④には拘束されないものというべきである。

そして、その相当の期間は、右の趣旨に鑑みると、長くても右昭和62年8月から10年を経過した後の平成9年末までと解するのが相当である。

(5)本件合意⑤は、その合意内容が具体的特定を欠き、未だ法的拘束力を有しないものというべきである。」

判決は以上のように述べたうえで、Yの行為は合意②に違反したが、Yの行為によってX1に損害が生じるものではない、YがA社の株主総会においてX1を取締役に再任するよう議決権を行使しなかった行為は合意③に違反するが、これによってX1の権利ないし利益が侵害されるものでないとして、X1の請求を棄却した。

また、YがC及びA社の株主総会においてX2を取締役に再任するよう議決権を行使しなかった点については、合意④に法的拘束力があるのは平成9年末までであると解されるから、Yの行為をもって債務不履行ということはできないとした。

さらにX2の損害のうち、合意④⑤の違反に係るものについては、合意の拘束力がないことからY債務不履行責任を問うことができず、合意②の違反に係るものについては、X2に財産的損害が生じていないとして、X2の請求を棄却した。

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