株式の共同相続の権利行使者の指定通知・・・

株式の共同相続の権利行使者の指定通知・・・

①指定通知

旧商法203条2項は、株式が数人の共有に属するときは、共有者は、株主の権利を行使する者1人を定めることを要すると定めていましたが、同条項の権利行使者の指定通知に関し、次の判例があります。

旧商法第二百三条  

1.共同シテ株式ヲ引受ケタル者ハ連帯シテ払込ヲ為ス義務ヲ負フ
2.株式ガ数人ノ共有ニ属スルトキハ共有者ハ株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス
3.株主ノ権利ヲ行使スベキ者ナキトキハ共有者ニ対スル会社ノ通知又ハ催告ハ其ノ一人ニ対シテ之ヲ為スヲ以テ足ル

共同相続人による準共有の状態にある場合の株主権の行使は、権利行使者を指定して会社にその旨を通知することが必要です。

②通知の方法

この通知を配達証明付内容証明郵便で送付しておくと、送付した文書及びその受領年月日について、郵便局の証明書を得ることができます。

③会社に対して権利行使者の指定通知がない場合

会社は、権利行使者の指定、通知がない場合、共有者に対する通知又は催告は、共有者の1人に対してすれば足ります。

利益配当金は、共有者が共同してその支払を請求しない限り、会社は、これを供託します。

旧商法203条2項は、株式が数人の共有に属するときは、共有者は、株主の権利を行使する者1人を定めることを要すると定めていましたが、同条項に定める会社に対する権利行使者の指定通知なくしてされた訴えに関し、次の判例があります。

権利行使者の指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて株主総会の決議不存在確認の訴えを提起する場合、特段の事情がない限り、原告適格はありません。

株主総会決議不存在確認の訴えを本案とする取締役職務執行停止等の仮処分申請も不適法とされます。

会社合併無効確認の訴えについても同様です。

商法203条2項による権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くときは、共有者全員が議決権を共同して行使する場合を除き、会社の議決権の行使を認めることはゆるされません。

会社法第126条 

1.株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

2.前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

3.株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、株式会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者1人を定め、当該株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。この場合においては、その者を株主とみなして、前2項の規定を適用する。

4.前項の規定による共有者の通知がない場合には、株式会社が株式の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの1人に対してすれば足りる。

5.前各項の規定は、第299条第1項(第325条において準用する場合を含む。)の通知に際して株主に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、第2項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。

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株式の共同相続の被選定者の代表権消滅・・・

旧商法203条2項は、株式が数人の共有に属するときは、共有者は、株主の権利を行使する者1人を定めることを要すると定めていましたが、同条項により定めた被選定者の代表権消滅に関し、次の判例があります。

旧商法第二百三条  

1.共同シテ株式ヲ引受ケタル者ハ連帯シテ払込ヲ為ス義務ヲ負フ
2.株式ガ数人ノ共有ニ属スルトキハ共有者ハ株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス
3.株主ノ権利ヲ行使スベキ者ナキトキハ共有者ニ対スル会社ノ通知又ハ催告ハ其ノ一人ニ対シテ之ヲ為スヲ以テ足ル

権利行使者の選定行為は、被選定者に対して広範かつ重要な権限を包括的に委託する一種の財産管理委託行為と目すべきものであって、共有物の管理、保存とは次元を異にするものと解するのが正当であり、委託は特段の約定のない限り、委託者である他の相続人の1人において何時でもこれを将来に向かって解除することができ、これあるときは被選定者の代表権は全体として消滅すると解した事例があります。

民法第651条

1. 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2. 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

商法203条2項の解釈上、解除者は会社に対して代表権消滅を通知することを要し、会社は以後被選定者を代表者として扱うことはできないとしました。

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株式の共同相続と閲覧請求・・・

旧商法203条は、株式が数人の共有に属するときは、共有者は、株主の権利を行使する者1人を定めることを要すると定めていましたが、同条項により定めた権利行使者の計算書類の請求に関し、次の判例があります。

旧商法第二百三条  

1.共同シテ株式ヲ引受ケタル者ハ連帯シテ払込ヲ為ス義務ヲ負フ
2.株式ガ数人ノ共有ニ属スルトキハ共有者ハ株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人ヲ定ムルコトヲ要ス
3.株主ノ権利ヲ行使スベキ者ナキトキハ共有者ニ対スル会社ノ通知又ハ催告ハ其ノ一人ニ対シテ之ヲ為スヲ以テ足ル

遺言者は、相続人A、Bに、ある会社の株式***株ずつを相続させる旨及びCを遺言執行者に指定する公正証書遺言を作成した後に死亡しました。

遺言執行者Cのその会社に対する計算書類等の閲覧等や株主名簿の閲覧等の請求が遺言者の遺言内容の執行として必要な行為といえるかにつき、株主の計算書類等の閲覧請求権や株主名簿の閲覧等請求権は、遺言者が会社の株式を保有していたことを前提として、遺産分割前は会社の株式の共同所有者である遺言者の相続人が旧商法203条2項の規定に基づき指定した権利行使者において、遺産分割後は株式の帰属者であるA又はBにおいて行使されるべきであって、遺言執行者にこれらの権利行使を認めなければならない必要性はないことを考えると、遺言執行者としてのこれらの権利行使は、特定遺産たる株式のAやBへの帰属という遺言者の遺言内容の執行として必要なものとはいえないとしてその請求を却下した事例があります。

旧商法第二百八十二条  

1.取締役ハ定時総会ノ会日ノ二週間前ヨリ第二百八十一条第一項ニ掲グルモノ及監査報告書ヲ五年間本店ニ、其ノ謄本(其ノ作成ニ代ヘテ電磁的記録ノ作成ガ為サレタル場合ニ於ケル其ノ電磁的記録ヲ含ム)ヲ三年間支店ニ備置クコトヲ要ス
2.株主及会社ノ債権者ハ営業時間内何時ニテモ左ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ第二号又ハ第四号ノ請求ヲ為スニハ会社ノ定メタル費用ヲ支払フコトヲ要ス
一  前項ニ掲グルモノガ書面ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ書面ノ閲覧ノ請求
二  前号ノ書面ノ謄本又ハ抄本ノ交付ノ請求
三  前項ニ掲グルモノガ電磁的記録ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ノ内容ヲ法務省令ニ定ムル方法ニ依リ表示シタルモノノ閲覧ノ請求
四  前号ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ヲ電磁的方法ニシテ法務省令ニ定ムルモノニ依リ提供スルコトノ請求又ハ其ノ情報ノ内容ヲ記載シタル書面ノ交付ノ請求
3.親会社ノ株主ハ其ノ権利ヲ行使スル為必要アルトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ子会社ニ対シ前項各号ニ掲グル請求(子会社ガ有限会社ナル場合ニ於テハ有限会社法第四十三条ノ二第一項 ニ掲グルモノニ係ル請求)ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ前項但書ノ規定ヲ準用ス

旧商法第二百六十三条  

1.取締役ハ左ニ掲グルモノ(第三号ノ複本ノ作成ニ代ヘテ電磁的記録ノ作成ガ為サレタル場合ニ於ケル其ノ電磁的記録ヲ含ム)ヲ左ニ定ムル場所ニ備置クコトヲ要ス
一  定款 本店及支店
二  株主名簿、新株予約権原簿及社債原簿 本店(名義書換代理人ヲ置キタル場合ニハ本店又ハ名義書換代理人ノ営業所)
三  前号ニ掲グルモノノ複本(名義書換代理人ヲ置キタル場合ニ於テ同号ニ掲グルモノヲ本店ニ備置キタルトキニ限ル) 名義書換代理人ノ営業所
四  端株原簿及株券喪失登録簿 本店(名義書換代理人ヲ置キタル場合ニハ本店又ハ名義書換代理人ノ営業所)
2.株主、会社ノ債権者、端株主及新株予約権ヲ有スル者ハ営業時間内何時ニテモ左ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ第二号又ハ第四号ノ請求ヲ為スニハ会社ノ定メタル費用ヲ支払フコトヲ要ス
一  定款ガ書面ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ書面ノ閲覧ノ請求
二  前号ノ書面ノ謄本又ハ抄本ノ交付ノ請求
三  定款ガ電磁的記録ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ノ内容ヲ法務省令ニ定ムル方法ニ依リ表示シタルモノノ閲覧ノ請求
四  前号ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ヲ電磁的方法ニシテ法務省令ニ定ムルモノニ依リ提供スルコトノ請求又ハ其ノ情報ノ内容ヲ記載シタル書面ノ交付ノ請求
3.株主及会社ノ債権者ハ営業時間内何時ニテモ左ノ請求ヲ為スコトヲ得
一  株主名簿、新株予約権原簿、社債原簿若ハ端株原簿ガ書面ヲ以テ作ラレタル場合ニ於ケル其ノ書面又ハ株主名簿、新株予約権原簿若ハ社債原簿ノ複本ノ閲覧又ハ謄写ノ請求
二  株主名簿、新株予約権原簿、社債原簿若ハ端株原簿ガ電磁的記録ヲ以テ作ラレタル場合又ハ株主名簿、新株予約権原簿若ハ社債原簿ノ複本ノ作成ニ代ヘテ電磁的記録ノ作成ガ為サレタル場合ニ於ケル此等ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ノ内容ヲ法務省令ニ定ムル方法ニ依リ表示シタルモノノ第一項第二号第三号又ハ第四号ニ定ムル場所ニ於ケル閲覧又ハ謄写ノ請求
4.端株主ハ営業時間内何時ニテモ左ノ請求ヲ為スコトヲ得
一  端株原簿ガ書面ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ書面ノ閲覧又ハ謄写ノ請求
二  端株原簿ガ電磁的記録ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ノ内容ヲ法務省令ニ定ムル方法ニ依リ表示シタルモノノ第一項第四号ニ定ムル場所ニ於ケル閲覧又ハ謄写ノ請求
5.新株予約権ヲ有スル者ハ営業時間内何時ニテモ左ノ請求ヲ為スコトヲ得
一  新株予約権原簿ガ書面ヲ以テ作ラレタル場合ニ於ケル其ノ書面又ハ新株予約権原簿ノ複本ノ閲覧又ハ謄写ノ請求
二  新株予約権原簿ガ電磁的記録ヲ以テ作ラレタル場合又ハ新株予約権原簿ノ複本ノ作成ニ代ヘテ電磁的記録ノ作成ガ為サレタル場合ニ於ケル此等ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ノ内容ヲ法務省令ニ定ムル方法ニ依リ表示シタルモノノ第一項第二号又ハ第三号ニ定ムル場所ニ於ケル閲覧又ハ謄写ノ請求
6.何人モ営業時間内何時ニテモ利害関係アル部分ニ限リ左ノ請求ヲ為スコトヲ得
一  株券喪失登録簿ガ書面ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ書面ノ閲覧又ハ謄写ノ請求
二  株券喪失登録簿ガ電磁的記録ヲ以テ作ラレタルトキハ其ノ電磁的記録ニ記録セラレタル情報ノ内容ヲ法務省令ニ定ムル方法ニ依リ表示シタルモノノ第一項第四号ニ定ムル場所ニ於ケル閲覧又ハ謄写ノ請求
7.親会社ノ株主ハ其ノ権利ヲ行使スル為必要アルトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ子会社ニ対シ第二項各号又ハ第三項各号ニ掲グル請求(子会社ガ有限会社ナル場合ニ於テハ有限会社法第二十八条第一項 ノ定款又ハ社員名簿ニ係ル請求)ヲ為スコトヲ得

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株式共同相続の株主への通知・・・

株式会社が株主に対してする通知・催告は、株主名簿に記載し又は記録した当該株主の住所あてに発すれば足ります。

この通知・催告は、その通知・催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなされます。

株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、株式会社が株主に対してする通知・催告を受領する者1人を定め、当該株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければなりません。

この場合においては、その者を株主とみなして、会社法126条1項、2項の規定が適用されます。

共有者の通知がない場合には、株式会社が株式の共有者に対してする通知・催告は、そのうちの1人に対してすれば足ります。

会社法第126条 

1.株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

2.前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

3.株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、株式会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者1人を定め、当該株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。この場合においては、その者を株主とみなして、前2項の規定を適用する。

4.前項の規定による共有者の通知がない場合には、株式会社が株式の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの1人に対してすれば足りる。

5.前各項の規定は、第299条第1項(第325条において準用する場合を含む。)の通知に際して株主に書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合について準用する。この場合において、第2項中「到達したもの」とあるのは、「当該書面の交付又は当該事項の電磁的方法による提供があったもの」と読み替えるものとする。

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