遺言無効確認の調停・・・

遺言無効確認の調停・・・

遺言無効確認事件は、家事審判法による一般調停事項です。

①当事者

相続人、受遺者、遺言執行者など遺言の効力に関して利害関係を有する当事者となります。

特別縁故者として財産分与を受ける可能性も存しない者は「特別縁故者」たることを前提とする遺言無効確認の訴えにつき当事者適格を欠くとした事例があります。

被相続人には法定相続人がなくABに全遺産を遺贈する遺言を残して死亡した場合、特別縁故者に当たると主張する甲乙がABを被告として遺言無効確認の訴えを提起することの可否につき、最高裁は、甲乙が特別縁故者として相続財産の分与を受ける可能性があるとしても、特別縁故者として相続財産の分与を受ける権利は、家庭裁判所における審判によって形成される権利にすぎず、甲乙は右審判前に相続財産に対し私法上の権利を有するものではなく、遺言の無効確認を求める法律上の利益を有しないとして甲乙の請求を認めた第一審判決を取り消して、その訴えを却下しました。

相続人が遺言の執行としてなされた遺贈による所有権移転登記の抹消登記請求の先決問題である遺言の効力につき既判力ある判断を求めようとするときは、遺言執行者がある場合でも、右請求の相手方である受遺者を被告として請求することができるとした事例があります。

②管轄

相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。

③添付書類

申立人・相手方の戸籍謄本

遺言書の写し

遺産目録

不動産登記簿謄本

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遺言無効確認の訴えの判例・・・

相続人は、相続財産につき持分を有する旨の確認を求めることができますが、即時確定の利益を認められる場合には、遺言は無効であることを確認する旨の訴えも認められています。

即時確定の利益とは、原告の権利・地位に不安・危険が生じていなければならず、かつその不安・危険は現実的なものでなければならない、ということをいいます。

不安・危険がなければ、訴訟をする意味がなく、不安・危険が抽象的であれば現実化した段階で訴訟を起こさせればよいからだとされています。

遺言者が実際に作成された日及び実際の作成日と異なる日が記載され、2年近くも遡った日を記載しているときは、単なる誤記というべきではなく、このような遺言書は不実の日付の記載のある作成日の記載がない遺言書と同視すべきであり、自筆証書遺言の方式を欠くものとして無効と解すべきであるが、この遺言書とは別に共同相続人間に遺産分割協議が有効に成立している場合、被相続人の遺産の帰属をめぐる法律関係は、本件協議によって定まるのであり、前期遺言の無効を既判力をもって確定する法律上の必要性はなく、控訴人らに遺言無効確認を求める法律上の利益はないとされます。

遺言の無効が確定すると、処分の目的となった財産の相続による共有状態も確定するので、目的物につき遺贈登記が終わっているときは、登記名義を実体に適合させる手続を無効確認に併合して請求する例が多いのですが、この場合、

①遺贈登記を抹消して登記名義を遺言者に戻す方法と

②更正登記によって登記原因を相続、登記名義人を各共同相続人として相続分に応じた共有持分を表示する方法があります。

受遺者が、共同相続人のときは②、共同相続人以外の第三者のときは①の方法によることになります。

遺言者の生存中は遺言の無効確認を求める訴えは許されません。

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遺言の取消し ・・・

遺言の取消しは、遺言が詐欺・強迫によりされて、その意思表示に瑕疵がある場合、民法96条1項に基づいてします。

(詐欺又は強迫)
民法第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

遺言者の相続人が遺言の取消権者です。

遺言者本人が取消権を行使しないで死亡したときは、その相続人が取消権を承継して行使します。

遺言取消しの意思表示は、相続人、受遺者などの利害関係人に対して行ないます。

詐欺・強迫によりされた遺言は、取消されるまでは有効として扱われますが、取消により無効になります。

取消しに争いがあるときは民事訴訟で解決します。

詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができません。

遺言取消しの訴訟が遺言関係人全員を当事者とする共同訴訟か否かについては、明確ではありませんが、遺言無効確認訴訟の場合、単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言無効確認訴訟は固有的必要共同訴訟には当たらないと解されています。

また、遺言無効確認訴訟において、複数の遺言関係人が共同被告として訴えられた場合、この訴訟を類似必要的共同訴訟と解するか否かについては、積極に解した事例と通常の確認訴訟と解した事例があります。

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負担付遺贈遺言の取消し・・・

負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行を催告し、もし、その期間内に履行がないときは、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。

(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
民法第1027条 負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

受遺者が負担付遺贈を承認すると、その負担した義務を履行しなければなりません。

(負担付遺贈)
民法第1002条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

受遺者が負担した義務を履行しないときは、相続人は強制執行により、その内容を実現することができます。

(履行の強制)
民法第414条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
3 不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。
4 前3項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

負担の性質が強制執行になじまないときや負担を履行しないとき遺言を取消したほうが遺言者の意思にかなうような場合、民法1027条によって遺言を取消すことになります。

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