無効な代諾縁組の追認・・・

無効な代諾縁組の追認・・・

最判昭和27・10・3民集6巻9号753頁

<事実>

A女の婚外子Y1(大正2年生まれ)は、BC夫婦の子として届けられ、大正4年にB・Cの代諾によりY2D(Aの姉)夫婦との養子縁組がなされた。

同9年にY2がEと再婚した際に、後日の紛争を危惧したAはY1の離縁の申し出をしたが、Y2はこれを断った。

しかし、昭和21年頃からY1とY2は不和となり、Y2の実子X(大正10年生まれ)より、Y1Y2間の養子縁組の無効確認を求めて本訴が提起された。

そこでY1は、縁組を追認する旨の書面による意思表示をした。

1・2審は、戸籍上の父母B・Cには縁組代諾権がなく、縁組は無効であるとした。

Yは上告した。

<争点>他人の子を実子として届け出た者の代諾による養子縁組の効力。養子は、無権代諾養子縁組を追認することができるか。

<判旨>破棄差戻し

「15歳未満の子の養子縁組に関する、家に在る父母の代諾は、法定代理人に基づくものであり、その代理権の欠缺(けんけつ)した場合は一種の無権代理と解するを相当とするのであるから、民法総則の無権代理の追認に関する規定、及び前叙養子縁組の追認に関する規定の趣旨を類推して、旧民法843条の場合においても、養子は満15歳に達した後は、父母にあらざるものの自己のために代諾した養子縁組を有効に追認することができるものと解するを相当とする。

しかして、この追認は、前示追認と同じく何らその方式についての規定はないのであるから、明示若しくは黙示をもってすることができる。

その意思表示は、満15歳に達した養子から、養親の双方に対してなすべきであり、養親の一方の死亡の後は、他の一方に対してすれば足るものであり、適法に追認がなされたときは、縁組は、これによって、はじめから、有効となるものと解しなければならない」。

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縁組意思・・・

最判昭和23・12・23民集2巻14号493頁

<事実>

X女は、推定家督相続人である養女Aを他家に婚姻入籍させるための方便として、Aの叔父Yを一時的にXの養子とすることにし、昭和19年に縁組届をした。

当時Yは50歳でXより8歳下にすぎず、旧知の間柄ではあったが、届出後も相互の往来はなく、終戦後に郷里に引揚げてはじめて顔をあわせたぐらいであった。

Xは、当事者間に養親子関係を形成する意思はなかったと主張して、縁組無効の確認を求める訴えを提起した。

1審は請求を棄却したが、原審は縁組を無効とした。

Yは上告した。

<争点>縁組をする意思とは何か。縁組の届出をする合意はあったが、それが他の目的を達するための便法であったときの縁組の効力。

<判旨>上告棄却
「所論は、旧民法第851条第1号(新民法第802条第1号)に「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、「届出自体が当事者の意思に反する場合即ち届出そのものに瑕疵ある場合」を指すものであると主張する。

しかし、それは、当事者間に真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものであると解すべきは、言をまたないところである。

されば、たとい養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があったとしても、それは単に他の目的を達するための便法として仮託されたに過ぎずして真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなかった場合においては、養子縁組は効力を生じないのである」。

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夫婦共同名義冒用縁組の効力・・・

最判昭和48・4・12民集27巻3号500頁

<事実>

Xは、夫AがB女を妾としたことからAの養子Cを連れて別居し(昭和16年)、事実上の離婚状態になった。

Aは、Bの希望により、Xに無断でAX夫婦とY女間の縁組の届出をした(昭和26年)。

このことを知ったXは、Yが自分の養子となることは承諾せず是正を求めたが、Aの養子となることは黙認した。

Aの死亡(昭和36年)後に相続争いが生じ、Xは、A・XとY間の縁組はXの縁組意思を欠き無効であるとして、その確認を求めて本訴を提起した。

1審および原審は、XY間の縁組のみを無効とした。

Xは上告した。

<争点>縁組の当事者である夫婦の一方に縁組の意思がない場合、縁組意思のある他方配偶者についても縁組は無効となるか(昭和62年法改正前の事例)。

<判旨>上告棄却

「夫婦の一方の意思に基づかない縁組の届出が為された場合でも、その他方と相手方との間に単独でも親子関係を成立させる意思があり、かつ、そのような単独の親子関係を成立させることが、一方の配偶者の意思に反しその利益を害するものではなく、養親の家庭の平和を乱さず、養子の福祉をも害するおそれがないなど、前記規定の趣旨にももとるものではないと認められる特段の事情が存する場合には、夫婦の各縁組の効力を共通に定める必要性は失われるというべきであって、縁組の意思を欠く当事者の縁組のみを無効とし、縁組の意思を有する他方の配偶者と相手方との間の縁組は有効に成立したものと認めることを妨げない」。

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有責者からの離縁請求・・・

最判昭和39・8・4民集18巻7号1309頁

<事実>

XA夫婦は、B女とY男を養子としたが、2年後、XとC女との関係が原因で、AはBとYを連れて別居し、8年後、AをBとYの親権者と定めて離婚した。

Cと再婚し円満な生活を営んでいたXは、Yに対して、別居から20年たち、離婚後の12年間は全く没交渉で親子の感情は消失していると主張して、離縁の訴えを提起した。

1審は請求を認容したが、原審は、Xの方に原因があるとして請求を棄却。

Xは、信義則違反または権利濫用となる特別の場合を除き、有責者の離縁請求も許されると主張して上告した。

<争点>養子縁組が破綻する原因を作った者からの離縁の請求は、認められるか。

<判旨>上告棄却

「離縁の訴に関する民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」は、必ずしも当事者双方または一方の有責であることに限られるものではないけれども、有責者が無責者を相手方として、その意思に反して離縁の請求をなすことは許されないものと解するを相当とするのであって、その法意は、離婚の訴に関する同法770条1項5号と異なるところがないのである」。

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