未成年後見人選任審判・・・
民法840条に基づく未成年後見人選任審判申立事件は、甲類審判事項です。
(未成年後見人の選任)
民法第840条 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
①申立義務者
未成年被後見人又はその親族、その他の利害関係人は申立権を有します。
親権を辞し、又は失った父母、辞任した後見人、後見監督人、生活保護実施機関、児童相談所長は申立義務を負います。
②管轄
被後見人の住所地の家庭裁判所です。
③添付書類
申立人、被後見人及びその父母の戸籍
後見人候補者の戸籍謄本及び住民票、市町村長発行の身分証明書
④審判手続
家庭裁判所は、後見人を選任するには後見人となるべき者の意見を聴かなければなりません。
後見人選任の審判は、後見人に告知することにより効力を生じます。
裁判所書記官は、未成年後見人選任審判が効力を生じたときは、遅滞なく未成年被後見人の本籍地及び未成年後見人の住所地の戸籍事務管掌者にその旨を通知しなければなりません。
未成年者とその祖父との養子縁組が相続税を軽減させる便法としてされたもので無効であるとして、養父の死後、養子の実父から申し立てられた後見人選任申立を却下した原審判を取消して実父を後見人に選任した事例があります。
即時抗告を認めた理由を、このような縁組も直ちに無効とは言いがたく、家事審判規則には後見人選任却下の審判に対して即時抗告をすることができる旨の定めはないが、未成年者が親権者のないまま放置される事態を生ずる場合には、即時抗告を適法なものとして救済を認めるべきであるとしています。
家庭裁判所は、後見人の後見事務に関し監督権を有します。
未成年後見人は、就職の日から10日以内に未成年後見人選任審判の謄本を添えて未成年後見開始届をしなければなりません。
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未成年後見監督人を指定する遺言・・・
未成年後見人を指定することができる者は、未成年後見監督人を指定することができます。
未成年後見監督人の指定は遺言によってのみすることができます。
未成年後見人ともに指定することも、未成年後見監督人のみを指定することもできます。
未成年後見監督人のみが指定されたときは、未成年後見人を選任することになります。
(未成年後見人の指定)
民法第839条 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
(未成年後見監督人の指定)
民法第848条 未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。
(未成年後見人の選任)
民法第840条 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
未成年後見監督人は性質上未成年後見人と異なり数人を指定しても差し支えありません。
後見監督人の数は1人に限られるべきではありませんから、後見監督人がすでにいるにもかかわらず家裁がさらに後見監督人を選任した場合でもその審判は無効とはいえないとした裁判例があります。
後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、未成年後見監督人となることができません。
未成年後見人となることのできない欠格事由のある者も未成年後見監督人となることができません。
未成年後見監督人を指定する遺言は、遺言者死亡の時に生じ、未成年後見監督人に指定された者は、その時から未成年後見監督人に就職し、就職の日から10日以内に遺言書の謄本を添えて未成年後見監督人就職届をしなければなりません。
未成年後見監督人に指定された者は就職を希望しないときもいったん未成年後見監督人就職届をしたうえで、家庭裁判所の辞任許可を得て辞任します。
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未成年後見の開始原因 ・・・
未成年後見人辞任許可審判
未成年後見人(未成年後見監督人)がその任務を辞するにつき家庭裁判所の許可を要するのはその任務が公益性を有するためとされています。
辞任するには正当事由のあることを要しますが、その事由として一般的には、次の場合になります。
①後見人が被後見人の住所地外において職務に従事すること
②先順位者の欠格事由の消滅
③疾病、老齢
④多くの子の親権者であること
⑤本人又はその親族との間に不和が生じたことなどがこれに当たるとされています。
民法844条に基づく後見人辞任許可審判申立事件は、甲類審判事項です。
後見監督人辞任許可も同様です。
(後見人の辞任)
民法第844条 後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
①申立権者
後見人(後見監督人)です。
②管轄
被後見人の住所地の家庭裁判所です。
③添付書類
申立人、被後見人の戸籍謄本、住民票
④辞任の正当事由の有無が審理されます。
辞任許可の審判は、後見人(後見監督人)に告知されて効力を生じます。
裁判所書記官は、未成年後見人(未成年後見監督人)の辞任許可の審判が効力を生じたときは、遅滞なく、被後見人の本籍地の戸籍事務管掌者に戸籍の記載を嘱託しなければなりません。
戸籍事務管掌者は、右嘱託に基づき戸籍にその旨を記載します。
後見人が辞任したことによって、新たに後見人を選任する必要が生じたときは、辞任した後見人は、遅滞なく後任の後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないことになっています。
(辞任した後見人による新たな後見人の選任の請求)
民法第845条 後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
戸籍法上、後見人辞任の届出の規定はありません。
後任未成年後見人は就職の日から10日以内に未成年後見人更迭届をすることとされています。
未成年後見監督人が辞任したときは、10日以内に未成年後見監督人任務終了届をします。
未成年後見監督人任務終了届未了のうちに後任未成年後見監督人が選任されたときは、後任者が就職の日から10日以内に未成年後見監督人更迭届をします。
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単純承認・限定承認・放棄の選択・・・
相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。
(相続の一般的効力)
民法第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
この相続について、相続人は、単純承認するか、限定承認するか、又は放棄するか、その相続方法を決定しなければなりません。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
民法921条に該当する相続人は、相続を単純承認したとみなされます。
(法定単純承認)
民法第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
2.相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
3.相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
単純承認すると、相続人が相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継した状態が確定し、相続人は無限に被相続人の権利義務を承継します。
(単純承認の効力)
民法第920条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
相続によって得た財産は相続人の固有財産と同じに扱われます。
相続債務も同様ですからその弁済に当たって自己の固有財産も提供する責任を負います。
限定承認は、相続によって得た財産を限度として相続債務を弁済する留保付の相続の承認です。
(限定承認)
民法第922条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
これは、相続債務の弁済後に積極財産の残余が見込める場合の選択方法です。
相続放棄をした者は、これによってその相続に関して初めから相続人とならなかったとみなされますから、相続人が積極財産、消極財産ともに相続を希望しない場合の選択方法です。
(相続の放棄の効力)
民法第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
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