隣家の木の枝を無断に切った損害賠償・・・
山田さんは、住んでいる家屋を建て替えることにしたのですが、隣人の田中さんの庭の桜の木の枝が、山田さんの敷地に張り出して、工事をするのに支障がありました。
そこで、山田さんは田中さんに枝を切ってもよいかと聞いたのですが、理由もなく切ることを拒否しています。
そこで、山田さんは勝手にその枝を切ってしまったのですが?
民法233条では、隣地の庭木が、境界線を越えてその枝を伸ばしてきた場合には、その庭木を所有者に対して越境してきた枝を、切り取るように請求できると規定しています。
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
民法第233条 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
越境している枝のために、建物の建て替え工事に支障があるのですから、枝の切り取りを請求できることになりますが、無断で切り取ることはできません。
山田さんが枝の切り取りを請求した後、田中さんがそれを拒否した場合には、裁判所に訴訟を起こして、どのように、又はその範囲で枝を切り取ってよいか、裁判所の判断を求めます。
枝を勝手に切り取った山田さんは、田中さんに対して損害を賠償しなければならず、田中さんが告訴をすれば、器物破損罪として3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられるのです。
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村八分の脅迫罪と損害賠償・・・
山田さんは、妻の実家である村の工場に勤めており、村会議員選挙があり、その選挙は買収、供応などあらゆる不正が行なわれており、それを許せず、警察に告発しました。
ところが、その後村の人から、村の行事に一切加えてもらえないばかりか、誰からも会話をしてもらえなくなりました。
山田さんが、村中の人から受けている仕打ちは、村八分といわれるものです。
この村八分というのは、村落の共同生活の秩序を乱した者に対して行なわれ、村落の10の付き合いのうち、葬式と火事の2つを除く残り8分の付き合いを絶つことをいいます。
私的制裁が禁止されている現在、この村八分も許されるものではなく、人権侵害となります。
山田さんは正しい権利を行使し、あるいは義務を履行したのに、村の人の個人的な考えから、村八分にされたときに、その村八分は違法となります。
選挙違反の告発は、正しい選挙をするための国民の義務と考えられるので、山田さんが見聞きした選挙違反の行為を、事実に基づいて告発したものであれば、国民として正しい義務を履行したことになりますので、これに対して村の行事から一切はずした村人の行為は、違法な村八分と考えられます。
この違法な村八分は、刑法の脅迫罪に当たりますので、村八分の首謀者を警察に告訴することができます。
また、村八分は民法上の不法行為になりますので、村八分によって被った精神上の苦痛に対して慰謝料を加害者全員に請求することもできます。
また、この慰謝料のほかに名誉毀損として謝罪広告の掲載なども請求できます。
このほか各地にある法務局の人権擁護委員会でも、山田さんからの申告に基づいて事実を調べ、加害者に対して文書による勧告や口頭による説示を行なったり、直接に排除措置を取ってくれます。
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分譲地購入したがガス水道が引けない・・・
山田さんは分譲地を買ったのですが、家の建設工事を始めたところ、所有地近くの公道からガスや水道を引くためには、公道に通じている私道を通さなければならず、私道の5人の所有者に、菓子折りをもって挨拶にまわり、ガス、水道を引くための承諾書に署名押印を頼んだところ、その中の一人だけは承諾してくれませんでした。
ガスや水道の供給施設を新設しようとするときは、あらかじめガス会社や、水道局に申し込み、その承認を得なければなりません。
供給施設の新設、改造について地主や家主、又は他人の土地を使用するときには、その所有者など、利害関係人の承諾書を添付しなければならないことになっています。
利害関係人のうち誰かが、工事をすることを承諾しない場合には、民法では、工事を認めさせる権利を認める規定はないのです。
学説では、公道にいたるまで他人の所有地を、ガス、水道管を埋設するには使用できる権利認めるべきであるとしています。
承諾してくれない場合には、簡易裁判所に調停を申し立てて、裁判所の仲介で双方の話し合いの上で、管の埋没を承諾してもらうことになります。
調停では時間がかかり、日常生活を送ることができないときは、裁判所に仮処分の申請をし、裁判所の仮処分決定で承諾書に代えることも考えられます。
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騒音を出す工場の防音設備設置請求・・・
山田さんの家は、製材所の隣で、木材を切る機械の音で悩んでおり、隣の社長に防音設備をつけてもらうよう頼んだが、ここは工場地帯だからと取り合ってくれません。
そこで、山田さんは、都庁の公害課に相談に行ったところ、担当者が騒音測定器を持ってきてくれました。
測定の結果、隣の工場の騒音は、東京都で決めた規制基準を上回っていたので、改善を勧告してくれました。
その結果、工場は東京都の紹介で、公的資金の融資を受け、防音設備をつけてくれました。
騒音規制法では、都道府県知事は条例で住宅が集合している地域など、騒音を防止することにより住民の生活環境を保全する必要な一定の地域を、騒音規制区域として指定するとしています。
この区域は、その地域の実績に応じて、第一種から第四種までに分けられています。
第一種は、特に静穏が必要とされる低層住居専用地域、第二種は、中高層住居専用地域、住居地域と準住居地域です。
第三種は、近隣商業地域、準工業地域です。
第四種は、工業地域と工業専用地域です。
都道府県知事は条例は第一種ないし第四種の区域それぞれについて、朝、昼間、夕方、夜間の時間帯ごとに騒音の規制基準を定めます。
東京都では、第一種地域では、朝は40~45デジベル、昼間は45~50デジベル、夜間は40~45デジベルと定められています。
この騒音規制区域内にある工場が、一定の騒音の発生源となる機械を備え付けるには、都道府県知事に届出が義務付けられています。
都道府県知事は、規制基準を超える騒音を出す工場に対しては、騒音の防止、改善を勧告し、あるいはこれを命令することができます。
この命令に違反した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられます。
しかし、それでも満足できないときは、裁判所に対して、不法行為を理由として、機械、設備の改善、操業時間の短縮などを求め、慰謝料などを請求することができます。
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