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代理人による議決権行使の拒絶・・・
神戸地判尼崎支判平成12年3月28日(損害賠償請求事件)
判夕1028号288頁、金法1580号53頁、金判1090号24頁
<事実の概要>
Xは、大手証券会社の株主であるが、Y社の株主総会がいわゆる集中開催日に開催され、これに出席できないことから、株主総会への出席を弁護士に委任し、その旨Y社に申し出たところ、Y社は定款において株主以外の者の株主総会への代理出席を認めていないことを根拠に、Xの申出を拒絶した。
そこでXは、①議決権行使の代理人資格を株主に限る旨のY社定款の規定は、商法上株主に認められた議決権代理行使の権利を不当に制限するものであって無効であるとし、仮に代理人資格を株主に限ることが認められるとしても、無限定にこれに限ることは商法に違背するため、少なくとも弁護士等の専門家や株主の親族等には代理人資格を肯定すべきである、②仮に定款規定が有効であるとしても、代理人は弁護士であり総会を攪乱するおそれはないため、本件で議決権行使を拒絶したことは違法である、と主張し、Y社に対して、本件株主総会において株主権行使の機会を奪われたことによる精神的損害について損害賠償を請求し、本件訴訟を提起した。
これに対しY社は、主張①に対しては、議決権行使の代理人資格を株主に制限する旨の定款規定は、それが有効である旨の確立した判例に副うものであり実務上も確立していることに加え、第三者が株主から委任状を集めて株主総会に臨み、株主総会を攪乱させるおそれがあり、このような事態を防止すべき要請は強いから有効であるし、専門家や親族に議決権の代理行使を認めるべきというならばまず定款の変更を求めるべきであるとの主張をした。
主張②に対しては、議決権の代理行使を制限できる合理的な理由としては、X主張の株主総会の攪乱の恐れ以外にも、株主総会が株主のみによって運営されるべきという理由があることに加え、書面投票制度が存在するので議決権の行使は妨げられないこと及び受付の場における事務処理の混乱を回避すべきことを理由に、申出を拒絶したことは適法だと主張した。
<判決理由>請求棄却。
主張①について「商法239条2項は、株主が代理人によって議決権を行使できる旨規定しているところ、これは株主の議決権の財産的特異性及び個性の希薄さを示すもので、その実際的機能は株主側のためというよりも、むしろこれにより総会の定足数を確保し、経営者の経営方針の貫徹を図るという経営者側のための制度であると解される上、議決権には出資以外の個人的理由による利益追求は排除されるべきであるという団体的制約及び会社の公共性からくる社会的制約があることに鑑みれば、右代理人資格は制限できないものであると解すべきでなく、・・・合理的な理由による相当程度の制限として、定款により右代理人資格を株主に限定することも許されると解するのが相当である。」
「現在では何人も株式市場において株式を自由に取得できるので、議決権行使の代理人資格を株主に限定することで株主総会が攪乱されることを完全に防止できるとはいえないが、・・・現時点においても、総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを一般的に防止するという会社の利益には合理性があるというべきである。」
「定款で代理人資格を株主に限定しているからといって、株主以外の代理人であればすべて議決権の代理行使が認められないと解すべき必然性はなく、代理人として選任された者が株主総会に出席し、議決権を行使しても株主総会が攪乱されるなど、会社の利益が害されるおそれがないと認められる場合には、商法239条2項の本則に立ち戻り、その者による議決権の代理行使が認められることになる。
右定款の解釈によれば、議決権行使の代理人資格を株主に限定しているY社定款13条の規定は、無限定にこれを制限しているものではないから、定款で右代理人資格をXが主張する弁護士等の専門家や株主の六親等内の親族等に認められなくとも、これらの者が議決権を代理行使する途が閉ざされたことにはならない。
以上によれば、議決権行使の代理人資格を株主に限定する旨のY社定款13条の規定は商法に違反するものではないから、無効であるとはいえない。」
主張②について「本件総会へ出席を委任された者が弁護士であることからすれば、受任者である弁護士が本人たる株主の意図に反する行動をとることは通常考えられないから、株主総会を混乱させるおそれがあるとは一般的には認め難いといえる。
したがって、右申出を拒絶することは、本件総会がこの者の出席によって攪乱されるおそれがあるなどの特段の事由のない限り、合理的な理由による相当程度の制限ということはできず、Y社定款13条の規定の解釈運用を誤ったものというべきである。
・・・本件においては、前示のとおり、Xは、Y社に対し、本件総会に先立ち、自己の選任した代理人の氏名及び職業を委任状と共にY社に告知していたのであるから、Y社としては、本件総会当日に、代理人たる弁護士に対して、代理人自身の身分・職務を証明する書類の提示を求めて、右代理権の有無、代理人の同一性を確認し、その上で会場への入場を認めるという取り扱いをすれば足りたのであって、右手続の履践が本件総会を開催するに際しての事務処理を著しく煩雑にし、総会の開催を混乱させることになったと認めるに足りる証拠はない。
そうすれば、Y社には、本件総会の開催にあたり、Xの代理人による議決権の行使を拒絶するに足りる特段の事由があったとはいえない。
以上によれば、Y社が、Xによる弁護士を代理人とする議決権の代理行使の申出を拒絶したことは、Y社定款13条の規定の解釈運用を誤ったものであるから、商法239条2項に違反するものというべきである。」
ただし、Y社の不法行為責任については、損害の不存在を理由に否定され、請求は棄却されている。
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取締役の説明義務と一括回答・・・
東京高判昭和61年2月19日(株主総会決議取消請求控訴事件)
判時1207号120頁、判夕588号96頁、金法1134号44頁
<事実の概要>
Y株式会社は、その定時株主総会において、Xを含む株主からあらかじめ提出を受けた質問状について、会議の目的たる事項に関係のないもの、抽象的なもの、意味不明のものを除き、質問を整理分類して明らかにした項目ごとに回答説明した。
また、Xは総会の最中にも、会議の目的に関しない事項につき質問したが、Xの主張によると、Y社取締役は、Xに対して十分な回答をしなかった。
また、Xは議長の議事進行により質問権を侵害されたと主張しているが、事実認定で否定されている。
そのうえで、Y社の株主総会決議がなされた。
以上の事情のもとで、Xは、①Y社取締役の行った一括回答は誰がいかなる質問をしているのかを明らかにしない回答であり、質問者にとって自分の質問に回答されたかがわからないので、このような回答は前商法237条の3にいう説明に該当しない、②質問状の質問者を明らかにしない一括回答は説明義務に違反する、という2つの法令違反が存在することに加え、③Xが総会で質問した事項について、取締役が十分な回答をしていない点で著しい不公正があることを理由に決議取消の訴えを提起した。
第1審は請求棄却。
Xは控訴したが、控訴棄却。
なお、本件は上告されたが、上告棄却されている。
<判決理由>控訴棄却。
主張①について「商法237条の3第1項の規定する取締役等の説明義務は総会において説明を求められて初めて生ずるものであることは右規定の文言から明らかであり、右規定の上からは、予め会社に質問状を提出しても、総会で質問しない限り、取締役等がこれについて説明をしなければならないものではない。
ただ、総会の運営を円滑に行うため、予め質問状のの提出があったものについて、総会で改めて質問をまつことなく説明することは総会の運営方法の当否の問題として会社に委ねられているところというべきである。
そしてまた、説明の方法について商法は特に規定を設けていないのであって、要は前記条項の趣旨に照らし、株主が会議の目的事項を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲の説明であれば足りるのであり、一括説明が直ちに違法となるものではない。
更に、たとい一括説明によっては右必要な範囲に不十分な点があったとすれば、それを補充する説明を求めれば足りることである。
それゆえ、右事実によれば、Y社の取締役が一括回答という方法により説明したことが商法237条の3の規定に違反するとは認められない」。
主張②について「質問者がその氏名を明らかにすることの要否と説明の範囲とは異別の問題であるとともに、説明は質問者に対してその求めた事項について行われるのであるから、説明の対象に質問者の氏名が含まれると解すべき余地」はなく、「一括説明をする場合は、個々の質問者において自己の質問状に対し説明があったかどうか必ずしも判然としないことが生じ得ないとも限らないが、そのときは前述のように改めて質問するのが相当であり、かつすれば足りることであり、本件において質問状の質問者を明らかにしなかったことは何ら説明義務を尽くさなかったこととならない。」
主張③について「Xの質問・・・はいずれも会議の目的に関しない一般的な事項について説明を求めるものというべきであり、取締役にはこのような事項についての説明義務は認められない。」
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取締役の説明義務の範囲と程度・・・
東京地判平成16年5月13日(株主総会決議取消請求事件)
金判1198号18頁
<事実の概要>
X社は、投資顧問、情報提供サービス等を業とする株式会社であり、Y株式会社の株主であると共に、Y社の筆頭株主らとの間で締結した投資一任契約に基づく運用者でもある。
Y社は、平成15年5月22日開催の株主総会において、取締役選任議案(第4号議案)の決議を行った。
決議に際しては、Y社の株主であるA(X社の副社長)及びB(X社の従業員)により、Y社の有価証券投資に関する再任候補者の監視義務の履行状況に関わる質問がなされた。
X社は、Y社議長による説明は十分なものではなく、また、Bの質問を途中で遮り採決が強行されるなど、前商法237条の3所定の説明義務に対する違反があったとして決議の取り消しを求めている。(本件では、ほかに、監査役選任議案、退任取締役・退任監査役に対する退職金贈呈議案についても説明義務違反による決議取消が請求されている)。
<判決理由>請求棄却。
「取締役及び監査役が負うとされる説明義務の範囲と程度の問題について検討すると、・・・取締役及び監査役がこのような説明を行なうのは、株主が会議の目的たる事項を合理的に理解し、判断するためのものであることは明らかであるし、一方で、商法247条1項1号が、決議の方法が法令に違反したときには、決議の取消事由とされていることからすると、ここでいう説明義務の範囲と程度には自ずから限度があり、株主が会議の目的たる事項の合理的な理解及び判断をするために客観的に必要と認められる事項(以下「実質的関連事項」という)に限定されると解されるべきである。」
「ところで、実際の株主総会の場面において、議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行い得る状況にあったかどうかを判断するに当っては、会議の目的たる事項が決議事項である場合には、原則として、平均的な株主が基準とされるべきである。
なぜなら、説明義務違反が「決議の方法が法令に違反」(商法247条1項1号)するとして決議取消事由とされ、裁判所の審査に服する以上、その判断基準には客観性が要求され、また株主総会が多数の株主により構成される機関であり、説明の相手方が多数人であることを考え併せると、当該質問株主や当該説明者の実際の判断を基礎とすることは妥当ではないからである。
そうであるとすれば、本件訴訟の争点である、本件各決議に関し、Y社の取締役及び監査役が説明義務を尽くしたといえるか否かの問題は、本件株主総会における株主の質問に対して、取締役及び監査役が、本件各決議事項の実質的関連事項について、平均的な株主が決議事項について合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明を本件株主総会で行なったと評価できるか否かに帰するというべきである。
そして、平均的な株主が決議事項について合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明がなされたかどうかの判断に当っては、質問事項が本件各決議事項の実質的関連事項に該当することを前提に、当該決議事項の内容、質問事項と当該決議事項との関連性の程度、質問がされるまでに行われた説明(事前質問状が提出された場合における一括回答など)の内容及び質問事項に対する説明の内容に加えて、質問株主が既に保有する知識ないしは判断資料の有無、内容等をも総合的に考慮して、審議全体の経過に照らし、平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行い得る状態に達しているか否かが検討されるべきである。」
「第4号議案は、取締役の選任に関する決議事項であるから、同決議事項についての実質的関連事項は、再任取締役候補者あるいは新任取締役候補者の適格性の判断に必要な事項である。
そして、具体的には、通常、商法施行規則13条1項1号所定の・・・事項に関する説明が行なわれなければならず・・・、また、株主が再任取締役候補者あるいは新任取締役候補者の適格性について質問をした場合には、同規則所定の事項にふえんして、それらの者の業績、再任取締役候補者の従来の職務執行の状況など、平均的な株主が議決権行使の前提としての合理的な理解及び判断を行うために必要な事項を付加的に明らかにしなければならないと解するべきである。」
「これらの事実(取締役会決議を要する有価証券投資の基準等について回答がなされているという事実)によれば、取締役候補者の適格性の一部を構成すると考えられる本件投資に関するY社の議長を含めた取締役候補者の判断の是非や監視義務履行の状況等経営責任の有無を判断するために必要な事項の具体的な内容は明らかにされており、平均的な株主を前提とする限り、第4号議案の決議について合理的な理解及び判断をするために必要な事項の説明はされていたと評価することができるというべきである。
なお、Y社の議長により質問要求が無視されたBについては、・・・当時X社が保有していたY社に関する情報を知りえたものと認められるから、・・・この点に関するY社の議長の議事運営が不適切であったと認められるとはいえ、質問者との関係でも、Y社の取締役及び監査役に説明義務違反はなかったと認めるべきである」。
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従業員株主を前列に座らせてなした総会決議・・・
最判平成8年11月12日(損害賠償請求事件)
判時1598号152頁、判夕936号216頁、金判1018号23頁
<事実の概要>
Y株式会社は電力会社であるが、従前から、原子力発電所に反対する者に本社ビルを取り囲まれたり、ビルの一部を占拠されたことがあり、また、本件株主総会に先立って、原子力発電所に反対する株主グループから1000を超える大量の質問書の送付を受けていたことなどから、本件株主総会の議事進行が妨害される事態が発生することをおそれ、Y社株主である従業員を受付開始時刻前に会場に入場させ、株主席の前方部分に着席させた。
Y社の株主Xは、本件株主総会に出席し希望する最前列の付近の座席を確保するために、その本社ビルの近くに宿泊した上で他の原発反対派株主とともに早朝から玄関前に並び、閉門と同時に受付を済ませ会場に入場したところ、従業員株主が既に前方部分に着席していたため、希望する座席に座ることができずその後方に着席した。
総会の開始後Xは、議長から指名を受けた上で動議を一度提出している。
本件株主総会終了後にXは、従業員株主らとの間で上記のような差別的取り扱いを受けたことにより希望する座席を確保することができず、これによって精神的苦痛および宿泊料相当の財産的損害を被ったとして、Y社にt対し、不法行為に基づく損害賠償を請求して本件訴訟を提起した。
第1審、原審ともXの請求を棄却。
Xは上告した。
<判決理由>上告棄却。
「株式会社は、同じ株主総会に出席する株主に対しては合理的な理由のない限り、同一の取り扱いをすべきである。
本件において、Y社が・・・本件株主総会前の原発反対派の動向から本件株主総会の議事進行の妨害等の事態が発生するおそれがあると考えたことについては、やむを得ない面もあったということができるが、そのおそれのあることをもって、Y社が従業員株主らを他の株主よりも先に会場に入場させて株主席の前方に着席させる措置を採ることの合理的な理由に当るものと解することはできず、Y社の右措置は、適切なものではなかったといわざるを得ない。
しかしながら、Xは、希望する席に座る機会を失ったとはいえ、本件株主総会において、会場の中央部付近に着席した上、現に議長からの指名を受けて動議を提出しているのであって、具体的に株主の権利の行使を妨げられたということはできず、Y社の本件株主総会に関する措置によってXの法的利益が侵害されたということはできない。
そうすると、Y社が不法行為の責任を負わないとした原審の判断は、是認することができ」る。
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