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総会決議の方法(挙手による採決)・・・
東京地判平成14年2月21日(株主総会決議取消等請求事件)
判時1789号157頁
<事実の概要>
Y株式会社が平成13年6月28日に開催した本件株主総会いおいて、会社提出の第1号から第6号の6議案の他、Xを含む64名の株主の提案により、役員等の報酬・退職慰労金等を株主に個別開示するための定款の一部変更を求める第7号議案が付議された。
Y社は総会に先立ち議決権行使書面の賛否について集計を行ったが、これによると、会社側提案の議案について出席した個々の株主の賛否を詳細に集計するまでもなく、議決権行使書面による賛成の数だけでいずれもその議案の可決に必要な数に達していた。
他方、第7号議案については、議決権行使書面による反対の数だけで議決権を行使しうる株式の総数の3分の1を遥かに超えており、賛成が決議の成立に必要な数に達し得ないことは明らかであった。
本件株主総会において議長は、議場において、各議案ごとに賛成株主に挙手を求める方法で議決を行い、会社側提案の議案は全てそれぞれ可決された旨を報告し、第7号議案については、議決権行使書面を含めて反対多数であるから否決した旨を報告した。
ただし、出席した株主の賛否を議決権行使数を数えた上で、議決権行使書面による賛否と合算して各議案ごとの賛否についての具体的な株主数及び株式数を明らかにしたわけではない。
XはY社に対し、各議案についての賛否の株主数及び株式数を明らかにすることをY社に書面で求め、連絡がなかったため本店に赴いて確認したが、議場で賛否を表明した株主については、各議案に関する賛否数が集計されていなかった。
以上の事実関係のもとでXは、Y社が賛否の数を集計して明示しなかったことが法令に違反して又は著しく不公正であるとして決議取り消しを求めると共に、確認のために大阪から東京所在のY社本店に赴くことを余儀なくされ、これにより精神的損害等を被ったとして不法行為に基づき損害賠償を請求した。
<判決理由>請求棄却。
「株主総会における決議については、法律に特別の規定がないから、定款に別段の定めがない限り、議案に対する賛否あるいは反対が可決ないし否決の決議の成立に必要な数に達したことが明確になったときに成立するものであり、従って、決議の方法についても、定款に別段の定めがない限り、議案の賛否について判定できる方法であれば、いかなる方法によるかは総会の円滑な運営の職責を有する議長の合理的裁量に委ねられているものと解される。
しかるところ、Y社の定款に、X主張のように賛否を集計し明示すべきことを決議方法として定める規定が置かれていること、あるいはX主張のような決議の方法が確立した慣行として一般的に定着していることを認めるに足りる証拠はなく、他方で、既に述べたとおり、本件株主総会の議長は、総会において、各議案ごとに出席した株主に対して挙手による採決を求め、これに応じた出席株主による議決権行使の状況と議決権行使書面による賛否の集計結果とを勘案し、第1号議案ないし第6号議案については可決されたこと及び第7号議案については否決されたことが明らかであったことから、その旨を議場で報告したものである。
以上によれば、本件株主総会においては、各議案に対する決議は相当な方法で実施され、出席株主もその議決権を行使しており、各決議が有効に成立したものであることは明らかであり、他に本件における決議の方法が会議の一般原則あるいは慣行に違反し株主の議決権の行使を不当に制限したり、あるいは決議の内容に不当な影響を及ぼすような特段の事情を窺わせるに足りる証拠はない。」
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他の株主に対する招集手続の瑕疵と決議取り消しの訴え・・・
最判昭和42年9月28日(株主総会決議取消請求事件)
民集21巻7号1970頁、判時498号61頁、判夕213号103頁
<事実の概要>
XはY株式会社の株主であるが、その持株の一部をAらに譲渡した。
AらはY社に対し、譲り受けた株券を提出した上で株主名簿の名義書換を請求したが、Y社は、昭和41年商法改正前に要求されていた裏書の方式を欠いていることを理由に名義書換に応じなかった。
他方Y社は、Aらの請求の後、3度にわたり定時株主総会及び臨時株主総会を開催したが、その招集通知はいずれもAらに対してはなされていない。
そこでXは、Y社の名義書換拒絶が不当なものであり株式譲渡の効力を否定できないことから総会の招集通知はAらに対してもなされるべきであるにもかかわらず、それがなされていないため、その招集手続に違法がありその決議は取消されるべきであるとして、Y社に対して決議取消を求める本年訴訟を提起し、第1審はXの請求を認容した。
この名義書換請求訴訟は別訴で争われていたが、Y社の名義書換拒絶に正当な理由があるとの最高裁の確定判決が、本件が控訴審で争われている段階で下された。
そこで、原審でY社は、別訴の既判力がXにも及ぶべきことを主張したものの、原審はこれを退け、本件事実関係のもとでAらに招集通知を発送しなかったことが違法であることを判示するとともに、Y社による「XがAに譲渡した株式に相当する議決権を行使していることから総会の瑕疵を主張できない」
「仮にAらが本件各総会で議決権を行使したとしても決議の結果には何ら影響がないから請求は棄却されるべき」との主張も退け、控訴棄却。
これに対しY社は上告した。
<判決理由>上告棄却。
「株主は自己に対する株主総会招集手続に瑕疵がなくとも、他の株主に対する招集手続に瑕疵のある場合には、決議取消の訴を提起し得るのであるから、Xが株主たるAらに対する招集手続の瑕疵を理由として本件決議取消の訴を提起したのは正当であり、何等所論の違法はない。」
「Aらが総会招集の通知を受けず議決権を行使し得なかったことが、本件総会の決議に影響を及ぼさないとのことを認めるべき証拠はないとした原審の判断も正当である。
もっとも裁判所は諸般の事情を斟酌して株主総会の決議取消を不適当とするときは取消の訴を棄却することを要するが、原審認定の事実関係の下においてはかかる事情も認められない。」
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特別利害関係人の議決権行使による決議の取消・・・
浦和地判平成12年8月18日(株主総会決議取消請求事件(甲事件)、新株発行不存在確認請求事件(乙事件))
判時1735号133頁、金判1125号52頁
<事実の概要>
XはY株式会社の株主である。
Y社はその株主総会で、前代表取締役である故Aに対し弔慰金及び退職金を支給することを承認するとともにY社を解散する株主総会決議を行った。
Xの主張は、①株主総会の招集を決定した取締役会の構成員である取締役の選任決議が不存在であるから商法231条違反があり、従って招集手続の法令違反を理由に総会決議が取消されるべきこと、②本件株主総会決議においては、B・C・Dが参加して賛成しているが、この3名は退職金の支給を受けるAの相続人であるから特別利害関係人に該当し、従って著しく不当な決議であるから本件株主総会決議を取消すべきこと、③本件株主総会で新株を取得したとする株主Bが決議に参加しているが、この新株発行が不存在であり、これを確認すべきこと、の3点である。
①②が甲事件であり、③が乙事件である
これに対するBらの反論は、①については、選任決議が存在している、②については、AがY社に対して個人的に貸付を行っていたこと、Aの設立以来30年の功績に応じて退職金を支払うのは正当であること、税務署により損金算入が認められたことを理由に、著しく不当とはいえない、③については、新株発行がなされていることに加え、Xの請求は新株発行の無効確認に等しく、新株発行無効の訴えに関する6ヶ月の出訴期間(前商法280条の15第1項)を徒過した不適当な訴えとして却下されるべき、というものである。
裁判所は事実認定として①については選任決議が存在していること、③のうち新株発行の有無についてはその不存在を認定した上で、②及び③のうち出訴期間に関して、以下のように判示した。
<判決理由>甲事件、乙事件とも請求認容。
主張②について「Bが引き受けたという本件新株を除いても、Bら3名はY社の株主であるから、その議決権に基づいても本件支給決議がされていることになる。
そこで、原告らは、本件支給決議は、その議決権行使の対象となった株式の問題とは別に、内容的にも、特別の利害関係を有するBら3名が決議に加わった著しく不当な決議であると主張するが、本件支給決議は、Aに対する弔慰金及び退職金の支給に係る決議であるとはいえ、Aが死亡していて、実際に支給を受けるのは、その相続人であるBら3名であるのであるから、当該決議がBら3名にとって特別の利害関係を有する決議であったことはいうまでもない。」
主張③について「新株発行の事実はあるのに、その効力が争われる新株発行無効の訴えの場合と異なり、新株発行不存在確認の訴えの場合には、新株発行の事実それ自体がないことに加え、例えば、新株発行後も会社が経営を継続している場合においては、会社債権者の利害も考慮すると、会社内部から無制限に新株発行が不存在であるとの主張を許すのは、衡平を失する場合も想定されるので、別異に解する余地はあっても、本件のように新株発行を契機としてこれによって多数派を占めた株主が会社の解散決議をし、しかも、会社の唯一の資産である本件借地権を売却して、会社の継続が予定されていない場合には、会社債権者の利害を考慮に入れる必要も、その余地もない。
かえって、会社の残余財産となるべき本件借地権の対価の処分を株主総会において適切に決定する上でも、本件新株発行の存否を明らかにしておく必要があるということができ、これに反するY社の主張は、少なくとも本件事案においては採用することができない。」
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決議取消の訴えと取消事由の追加・・・
最判昭和51年12月24日(株式会社総会決議取消請求事件)
民集30巻11号1076頁、判時841号96頁、判夕345号195頁
<事実の概要>
Y株式会社が株主総会において株式の譲渡に取締役会の承認を要する旨の定款変更等を決議したところ、株主Xがその決議取り消しを求めて提訴した。
Xの主張は多岐にわたるが、最高裁で争われたのは以下の2点である。
①Y社の定款では、議決権行使の代理人の資格を出席株主に限ると定めているにもかかわらず、株主である地方公共団体Aは職員を代理人として出席させ、また、同じく株主であるB株式会社もその従業員に議決権を行使させており、決議に定款違反があること、②個人株主であるCの所有する株式については代理人の議決権行使を認めておらず、株主平等の原則に反すること。
なお、上記②の瑕疵の主張は、提訴後かつ総会決議日から3ヶ月以上の期間の経過後に追加されたものである。
第1審、原審ともXの請求を棄却。
Xは上告した。
<判決理由>上告棄却。
主張①について「株式会社が定款をもって株主総会における議決権行使の代理人の資格を当該会社の株主に限る旨定めた場合において、当該会社の株主・・・がその職員又は従業員を代理人として株主総会に出席させた上、議決権を行使させても、原審認定のような事実関係の下においては、右定款の規定に反しないと解するのが相当である。
けだし、右のような定款の規定は、株主総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨に出たものであり、株主である県、市、株式会社がその職員又は従業員を代理人として株主総会に出席させた上、議決権を行使させても、特段の事情のない限り、株主総会が攪乱され会社の利益が害されるおそれはなく、かえって、右のような職員又は従業員による議決権の代理行使を認めないとすれば、株主としての意見を株主総会の決議の上に十分に反映することができず、事実上議決権行使の機会を奪うに等しく、不当な結果をもたらすからである。」
主張②について「株主総会決議取消の訴えを提起した後、商法248条1項所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されないと解するのが相当である。
けだし、取消を求められた決議は、たとえ瑕疵があるとしても、取消されるまでは一応有効のものとして取り扱われ、会社の業務は右決議を基礎に執行されるのであって、その意味で、右規定は、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるためその取消の訴えを提起することができる期間を決議の日から3ヶ月と制限するものであり、また、新たな取消事由の追加主張を時機に遅れない限り無制限に許すとすれば、会社は当該決議が取消されるのか否かについて予測を立てることが困難となり、決議の執行が不安定になるといわざるを得ないのであって、そのため、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるという右規定の趣旨は没却されてしまうことを考えると、右所定の期間は、決議の瑕疵の主張を制限したものと解すべきであるからである。」
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