相続費用の清算・・・
相続費用を相続財産の中から支弁した場合は、遺産分割のときに支出者が清算報告をして、残余財産を分割の対象とします。
共同相続人のある者が立替支出した場合には、その清算は遺産分割協議のときに行ないます。
この協議の中で、費用の分担に関し合意が成立しなければ、その解決を保留として、正の財産の分割だけを先行して成立させ、後日費用の清算の調停などを申し立てを行ないます。
遺産分割の審判において相続財産に関する費用の清算が得られるかについて、次のような事例があります。
①遺産分割には清算的要素を含まないから、遺産に関する税金、建物の改造・修理費用については、遺産分割と別個に相続人間で清算すべきである。
②相続開始後の公租公課は、遺産分割の際に考慮すべきではなく、別に定めるべきである。
③相続人の一人が相続財産に対する固定資産税や他の相続人の相続税を支払った事実は、遺産分割審判では考慮する必要はない。
④相続人の一部が遺産である不動産に増改築工事を加えた場合の償還請求は、当事者が遺産分割手続内での清算に同意している場合又はその金額が明確で、これを遺産分割手続内で清算するのが正義、衡平にかなう特段の事情のない限り民事訴訟によるべきである。
など、消極ないし制限的に解した事例があります。
これに対して、遺産の固定資産税、地代、電気料、上下水道、火災保険料等相続財産の管理に関する費用は、相続財産から支弁すべきものであるから、分割すべき遺産及びその収益の額を算定するに当たっては、当然これら管理費用を控除すべきであるとして、遺産分割の審判で清算を求めた事例があります。
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相続財産の立替費用償還の調停手続・・・
民法885条に基づく相続財産に関する立替費用償還の申立は、一般調停事項です。
民法第885条
1.相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
2.前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によって得た財産をもって支弁することを要しない。
①当事者
共同相続人の一方が申立人となり、他方が相手方となります。
②管轄
相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
③添付書類
申立人、相手方、被相続人の戸籍謄本のほか申立の実情を証する書面があればその写し。
調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決と同一の効力を有します。
不動産の持分移転登記又は更正登記義務の合意が成立したときは、登記権利者は調停調書正本を添付して、単独で、登記申請をすることができます。
調停委員は、事件が性質上調停するのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的で調停の申立をしたと認めるときは、調停をしないことができます。
調停をしない措置に対して、不服申立を許す規定はないので、即時抗告は認められません。
民事調停でも調停をしない措置につき同じ規定がありますが、この措置に対して不服申立は認められません。
調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込がない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、家庭裁判所が審判をしないときは、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができます。
調停不成立として事件を終了させる処分は審判ではないので、これに対して即時抗告や非訟事件手続法による抗告をすることができません。
また、裁判所書記官が当事者に対して行なう通知も、調停手続における審判に該当しないので、同様に解されます。
調停委員会が、調停を不成立としたときは、事件は終了し、この紛争は訴訟手続で解決することになります。
調停が不成立に終わると時効中断の効力を生じないことになりますが、申立人は調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起したときは、調停申立の時に、その訴えの提起があったものとみなされます。
調停が不成立によって終了した場合、民事調停法19条に定める期間内に訴えを提起しなかってときは、調停申立に時効中断の効力は認められないと解されていましたが、この場合においても、1ヶ月以内に訴えを提起したときは、民法151条の類推適用により、時効中断の効力を生ずるとされました。
民事調停法19条に相当するのは家事審判法26条2項ですから、家事調停についても民事調停と同様に解することができます。
民事調停法第19条
第14条(第15条において準用する場合を含む。)の規定により事件が終了し、又は前条第2項の規定により決定が効力を失つた場合において、申立人がその旨の通知を受けた日から二週間以内に調停の目的となつた請求について訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があつたものとみなす。
民法第151条
和解の申立て又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事審判法(昭和22年法律第152号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
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養子縁組の届出・・・
養子縁組は、養親になろうとする者と養子になろうとする者との間の、養親子関係の発生を意図する合意であって、届出によって成立します。
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけると同一の親族関係を生じます。
未成年者とその祖父との養子縁組が相続税を軽減させる方法としてされたものであれば当然無効なのですが、判例では、直ちに無効とは言いがたいとされている事例もあります。
①届出人
養子縁組の届出人は、養親及び養子です。
ただし、養子が15歳未満のときは、縁組の代諾者です。
戸籍法第66条
縁組をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
民法第797条
1. 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2. 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。
戸籍法第68条
民法第797条の規定によつて縁組の承諾をする場合には、届出は、その承諾をする者がこれをしなければならない。
②証人
成人の証人が2人以上必要です。
証人は、20歳以上であること以外に、その資格に制限はありません。
戸籍法第33条
証人を必要とする事件の届出については、証人は、届書に出生の年月日、住所及び本籍を記載して署名し、印をおさなければならない。
③届出地
養子縁組の届出地は、関係市町村役場の数と同数、本籍地外で届出をするときはさらに1通必要です。
④添付書類
未成年者と縁組をするとき、又は後見人が被後見人と縁組をするときは、家庭裁判所の縁組許可の審判書の謄本が必要です。
戸籍法第38条
1.届出事件について父母その他の者の同意又は承諾を必要とするときは、届書にその同意又は承諾を証する書面を添附しなければならない。但し、同意又は承諾をした者に、届書にその旨を附記させて、署名させ、印をおさせるだけで足りる。
2.届出事件について裁判又は官庁の許可を必要とするときは、届書に裁判又は許可書の謄本を添附しなければならない。
児童福祉施設の長が代諾するときは、都道府県知事の許可書の謄本が必要です。
外国人が縁組をするときは、その外国人の本国方に定める縁組の要件を具備している事を証する要件具備証明書等が必要です。
特別代理人が代諾をするときは、その選任に関する審判書謄本が必要です。
当事者の本籍地外で届出をするときは、その者の戸籍謄本が必要です。
⑤養子縁組の届出提出
届出書の提出方法は、届出人が市町村長役場に直接出頭して届出をします。
また、自ら署名押印した届出書を郵送してもよいですし、使者に提出させてもよいとされています。
外国にある者については、届出書を郵送する方法もありますが、その国に駐在する在外の大使・公使又は領事に届出することもできます。
民法第801条
外国に在る日本人間で縁組をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、第799条において準用する第739条の規定及び前条の規定を準用する。
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未成年者との養子縁組・・・
未成年者を養子とするには、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合を除き、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
民法第798条
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者の嫡出子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合を除き、配偶者とともにしなければなりません。
民法第795条
配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
配偶者のある者が縁組をするには、配偶者とともにする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合を除き、その配偶者の同意を得なければなりません。
民法第796条
配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、養子となる者に代わって、縁組の承諾をします。
法定代理人がこの承諾をする場合、養子となる者の父母でその監護をすべき者が他にあるときは、その同意を得なければなりません。
民法第797条
1. 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2. 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。
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