自筆証書遺言の作成・・・

自筆証書遺言の作成・・・

用字・用語については制限はありません。

用字は、かな・漢字・速記文字・点字でもよいとされます。

意味内容が正確に理解できれば略字・符号でもよいとされます。

用語は法律用語でなくてもよいとされます。

死んでいる言葉や外国語でも、意味の明確な慣用常套語でも有効とされます。

用紙・筆記具についても制限はありません。

通常は和紙、洋紙が用いられますが、木板、石板、陶板、ガラス、布などに書かれたものでもよいとされます。

筆記具は、ボールペン、サインペン、筆、万年筆のいずれでもよいとされます。

カーボン複写によった場合、本件遺言書は、遺言者が遺言の全文、日付及び氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載したものであるが、カーボン紙を用いることも自書の方法として許されないものではないから、民法968条1項の自書の要件に欠けるところはないとされています。

(自筆証書遺言)
民法第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

カーボン複写の方式によって作成された遺言書が、遺言者の自筆によるものではなく、偽造されたものとして、この遺言を無効とした事例があります。

この判決は、カーボン複写の方式によって書面が作成された場合、偽造の可能性が高まること、本件遺言書は特異な筆跡が目立ち、署名の場所、押印の位置、訂正箇所がないのに捨て印があること、その他不自然な点があって、真正な成立に疑問を抱かせる事情もあることから、慎重な検討を要するとして、原告及び裁判所選任の鑑定人による鑑定結果を採用しないで、被告が依頼した鑑定人の鑑定結果を採用して、遺言を無効としました。

遺言書が数葉にわたる場合に、編綴して契印するかどうかについて、判例は、全体として一通の遺言書であることが外形的に確認できれば、糊継ぎしただけで契印のない場合も、また、契印もなく綴じ合わせてもない場合のいずれも有効と解しています。

遺言書の表題に「遺言書」「遺言状」「遺言」「***の遺言をする」などの記載は必要ではないとされます。

スポンサードリンク

自筆証書遺言の人の特定・・・

遺言の内容が、甲に対し、「末尾不動産小生死後直ちに移転登記をなすか、又4人の小児の内財産的維持能力あるものを養子として入籍せられ度」なる場合、その趣旨を、甲に対する不動産の遺贈と甲の4人の子の内1人を養子として入籍するかを甲に一任したものと解し、遺言は特定してされるべきであり、甲の選択に一任することは遺言の代理を是認すると同一に帰するから、本件遺言は無効であるとしました。

遺言養子の制度は廃止されているので、「養子として入籍」の部分は無効であり、甲に対する遺贈のみが有効となる観があるが、遺言者の意思に副うように解した場合、「養子として入籍」の部分を自分の財産を相続させる意思と考え、遺贈と取り扱った上、受遺者の範囲を甲及びその子4人としてその選択を甲に一任したと解するのが相当であり、遺言上、選択の具体的基準が定められているときは有効と解する余地もあるが、本件遺言においては財産的維持の能力ある者との標準は具体性を欠き、しかも甲自らとその子4人の内財産的維持の能力ある者とのいずれにするやは依然として甲自体にその選択を一任されている形となるから、結局、本件遺言は受遺者の特定を欠き無効といわざるを得ないとしました。

遺言は法律の認めた一定の事項に限りすることのできる行為であり、遺言によってなし得る財産処分としては遺贈、寄付行為及び信託の設定が認められているところ、本件遺言は特定の財産を除くその余りの全遺産の処分を第三者に委ねることを内容とするものであり、右の遺言によってなしうる財産処分のいずれにも該当しないとした事例があります。

そして、原告主張のように、本件遺言は他の遺言により特定遺贈の対象とされた財産を除くその余りの全財産の遺贈の方法、受遺者の選定及びこれが複数のときはその遺贈額の決定を第三者乙に委託したものと解し得るとしても、現行法上遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言を認める規定はなく、受遺者のごとき遺贈の内容の本質的な部分についてその決定を第三者に一任するような内容の遺言は代理を禁止する民法の趣旨に反するものであり、許されないとして、代理権限を証する書面として本件遺言書を添付した遺贈を登記原因とする所有権移転登記申請を却下した決定に違法はないとしました。

また、原告は、本件遺言は有効と解されている受遺者が遺贈の目的物を受遺者の選定する他人に分与すべき負担を負わせる負担付遺贈を同趣旨に帰するから有効と解すべきであると主張しましたが、これには負担付遺贈の内容は遺言者自身によって決定されるものであり、これとは遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言と同一に論ずることはできないとしています。

スポンサードリンク

自筆証書遺言の相続財産の特定 ・・・

自筆証書遺言で、対象物件の範囲が特定できなければ無効とされます。

通常、相続財産の存在する場所・種類・名称・数量などによって特定します。

不動産を表示する場合、既登記のときは登記簿上、未登記のときは固定資産評価証明書などの表示どおりに明記します。

動産その他の財産を表示する場合、他の同種の物件と混同しない程度に特定しなければなりません。

遺言で相続財産を処分する場合、特定の人に「相続させる」とか「遺贈する」とかの表現のほかに、現実には「帰属させる」「取得させる」「所有させる」「贈与する」「譲渡する」「与える」「分ける」「譲る」「渡す」「やる」などの様々な表現が用いられます。

現実に用いられている右文言の趣旨が、相続人以外の者に対する場合は、遺贈であることは疑いありませんが、相続人に対する場合には、それが相続分の指定、遺産分割の方法の指定、遺贈又は遺言による特別の財産処分のいずれに該当するかを特定するのは困難ですので、具体的事案に応じ、いずれが遺言者の真意であるかを判断します。

スポンサードリンク

自筆証書遺言で遺言執行者に一任・・・

受遺者が確定されている以上、受遺者中、慈善事業の諸施設に対する遺贈額の割り当てが遺言執行者に一任されていてもそれにより遺言の効力は左右されないとした事例があります。

本件に控訴審判決は、被控訴人が本件遺言の遺言執行者及び信託の受託者の地位にあることを確認し、遺言執行者と受託者が同一人の場合は受遺者に対する遺贈を遺言の執行として行なうか信託財産の処分として行なうかは処分者の意思に委ねて差し支えないとし、本件遺言は、**病院外8個の社会施設を指定してそれらに残余財産全部を贈与し、贈与財産の配分方法を受託者の裁量に委ねているが、残余財産の額は別項所定の出捐を終了すれば自ら確定するものであり、このようにして贈与すべき額が確定しうべきものであり、また、受遺者が確定している以上、受遺者相互間の配分率の決定を受託者に委ねたからといって信託の目的を欠くものといえないから、遺言執行者の指定及び信託行為は有効であるとしました。

スポンサードリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする