遺言書の破棄による撤回・・・

遺言書の破棄による撤回・・・

遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなされます。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
民法第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

遺言者が遺言公正証書正本を焼却した場合、その行為をもって、本条により、遺言を撤回したとみなした事例があります。

(遺言の撤回)
民法第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

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遺贈目的物の破棄による遺言撤回・・・

遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときは、遺言を撤回したものとみなされます。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
民法第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

遺贈目的物の破棄が第三者によってされた場合には、民法999条の規定が適用されます。

(遺贈の物上代位)
民法第999条 遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。
2 遺贈の目的物が、他の物と付合し、又は混和した場合において、遺言者が第243条から第245条までの規定により合成物又は混和物の単独所有者又は共有者となったときは、その全部の所有権又は持分を遺贈の目的としたものと推定する。

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遺言の撤回の効力 ・・・

遺言者は、生存中ならいつでも随意に遺言成立の時から遺言が効力を生ずる時まで遺言撤回をすることができます。

撤回権者は、遺言者本人に限られます。

撤回権は行使上及び帰属上の一身専属的権利です。

代理人・承継人による撤回はできません。

撤回は必ずしも遺言の全部についてする必要はなく、一部についてもすることができます。

遺言者の意思が全部撤回か一部撤回かについて争いがあるときは、家庭裁判所の判断に従います。

撤回により遺言はその効力の発生が阻止されます。

阻止の効力がいつ発生するかについて、撤回も遺言の方式でされる以上その効力も遺言死亡の時に生ずるとする説と、撤回の性質上直ちにその効力を生ずるとする説とがあります。

両説の差異は、撤回の撤回が認められるかという点にあるとされます。

前者の場合、遺言者が死亡するまで撤回の効力は生じませんから、撤回の撤回が認められることになります。

しかし、後者の場合、撤回の効力は、遺言作成と同時に生じますから、撤回の撤回はできないことになります。

(遺言の効力の発生時期)
民法第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

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遺言の撤回の撤回・・・

遺言が撤回されたときは、その遺言は初めからなかったと同様の結果となります。

この撤回行為がさらに撤回された場合に、前の遺言の効力が復活するかどうかについて、理論的には、遺言者の真意を探求して、その意思によって決定されるべきです。

遺言を遺言の方式に従って撤回した遺言者が、更に右撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条但書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して遺言の復活を認めるのが相当と解されています。

本件では、遺言者は乙遺言をもって甲遺言を撤回し、更に丙遺言をもって乙遺言を撤回したものであり、丙遺言の記載によれば、遺言者が遺言である甲遺言を復活させることを希望していたことは明らかであるから、甲遺言をもって有効な遺言と認めるのが相当であるとしました。

(撤回された遺言の効力)
民法第1025条 前3条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

民法1025条本文は「前3条の規定により」と規定していますが、民法1024条所定の遺言書の破棄及び遺贈の目的物の破棄は、事実行為ですから、それを撤回するということはあり得ませんので、撤回の撤回が問題になりません。

民法1025条の適用があるのは、右以外の法定撤回の場合だけです。

第一遺言をした後に、その遺言を撤回する第二遺言をし、その後第二遺言を撤回する第三遺言をした場合や、第一遺言を撤回した第二遺言を破棄してしまった場合は、全称否定の全称否定となって、第一遺言を復活させる意思以外は考えられませんから、第一遺言は復活するとされます。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
民法第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

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