留置権と先取特権・・・

留置権と先取特権・・・

当事者の約束によって設定される約定担保に対して、法律が定める一定の場合に担保権が発生する場合があり、これを法定担保といい、次のものがあります。

留置権とは、他人の物を占有している者が、その物に関して生じた債権を有する場合に、その弁済を受けるまでその物を留置することによって、債務者の弁済を間接的に強制することのできる担保をいいます。

例えば、ある物の修理を頼まれた者は、その修理代金を受け取るまでは、留置権に基づいて、それを頼んだ者に返さずに、占有を続けることができます。

留置権者は、競売を申し立てることができますが、競売代金から優先的に配当を受けることはできませんし、また債務者が第三者に当該物を売却してしまった場合には、その売却代金から優先的に回収できるわけではありません。

その物を留置し続けることができだけなのです。

しかし、留置権は、その物の占有を続ける限り、第三者に対しても主張することが可能ですから、その買受人は、買い受けた物に関する債務を弁済しなければ引渡しを受けられないとされ、最終的には優先弁済を受けることになるのです。

商法では、商事留置権のついて、債権の成立と物の占有の取得とが当事者双方のために商行為たる行為によって生ずれば、商事留置権が発生するとされています。

また、民事留置権は、債務者が破産すると破産財団との関係で効力を失うとされますが、商事留置権は、破産財団に対しては特別の先取特権とされ、優先弁済を認められています。

先取特権とは、法律の定める特殊の債権を有する者が、債務者の財産から優先弁済を受けることができる権利をいいます。

(一般の先取特権)
民法第306条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
1.共益の費用
2.雇用関係
3.葬式の費用
4.日用品の供給

(動産の先取特権)
民法第311条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
1.不動産の賃貸借
2.旅館の宿泊
3.旅客又は荷物の運輸
4.動産の保存
5.動産の売買
6.種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
7.農業の労務
8.工業の労務

(不動産の先取特権)
民法第325条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
1.不動産の保存
2.不動産の工事
3.不動産の売買

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不動産、動産、債権等を担保に取る・・・

不動産を担保に取る場合、抵当権や根抵当権という形で担保にとることのがほとんどです。

不動産は場所的に移動されることがなく、登記制度によって、債権や順位など、権利関係が明確にできます。

しかし、自己の不動産への抵当権の設定は、信用の下落と見られますから、債権額が大きくない場合には、債務者が設定を渋る場合もあります。

また、不動産には、金融機関が先順位の抵当権を既に設定していることが多く、これから担保にとろうという場合には、後順位にならざるを得ない場合もあります。

債務者が高価な動産を有している場合には、質権を設定することもできます。

商品売買の場合などは、売掛金の回収が困難になったとしても、売主は商品を売却することができますから、譲渡担保を設定することによって、回収することができます。

また、売買代金債権を担保するために、所有権留保特約を結んでおくと、債務者の破産や会社更生時には、所有権に基づいて取戻権の行使ができますし、他の債権者が動産に対して執行した場合には、所有権留保について第三者異議訴訟を起こすことも可能です。

第三者異議訴訟というのは、強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者が提起することのできる訴えです。

債務者が不動産・動産いずれも有していない場合であっても、債務者が第三者に対して債権を持っている場合には、債権を担保にとることもできます。

担保の方法としては、債権質や債権の譲渡担保が考えられます。

債権を担保に取る場合には、債務者から第三債務者に通知をしなければならないとされています。

また、営業権などの形成途上の財産権については、担保にとる法律上の規定はありませんが、譲渡担保とすることができます。

ある倉庫の商品とか、特定の工場の原材料など、常にその構成物に変動がある集合物についても譲渡担保の目的とすることができます。

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担保に必要な対抗要件・・・

担保は設定者と権利者が合意しただけでは、第三者に対して優先権を主張できません。

優先権を主張するためには、対抗要件を具備しておく必要があります。

不動産や動産でも、登録制度があるものについての担保は、登記や登録が対抗要件となります。

登録制度のない動産を担保に取る場合には、その占有が対抗要件となります。

この占有は、必ずしも権利者が自ら行なわなくとも、債務者などに債権者の代わりに行なわせるものも含まれます。

債権を担保に取った場合には、債務者から第三債務者に対して、その旨を内容証明郵便などの確定日付ある通知をするか、第三債務者が確定日付ある承諾をすることが対抗要件となります。

この場合、他の権利者との優劣は、確定日付の先後ではなく、通知又は承諾の到達の先後で決まるとことになります。

動産質権は、質権者への引渡しがなければ発生せず、質権者の代わりに質権設定者に占有させる方法は禁止されています。

また、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の質権は、登録しないと権利が発生しません。

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