根抵当権の増担保・・・

根抵当権の増担保・・・

根抵当権の増担保の場合、根抵当権の極度額の変更は、利害関係人の承諾がなければできないことになっています。

(根抵当権の極度額の変更)
民法第398条の5 根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。

利害関係人の承諾が得られない場合は同一不動産に増額する分を極度額とする後順位の根抵当権を重ねて設定することになります。

根抵当権は担保価値の枠として基本取引契約と切り離される形になっていますので、同一の基本取引契約から生ずる債権を担保するために数個の不動産に根抵当権設定登記をする場合には、共同根抵当にするか、別々の根抵当にするかは当事者の自由となっています。

共同根抵当である旨の登記をする方を選択した場合には、共同根抵当の場合の極度額については、各不動産のつき個々に振り分けを予定した額でなく全不動産によって担保しようという額を極度額として登記しなければなりません。

(共同抵当における代価の配当)
民法第392条 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
2 債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

(共同抵当における代位の付記登記)
民法第393条 前条第2項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。

共同根抵当の登記をしない方を選択した場合には、根抵当権者は個々の不動産に設定した極度額の合計額について優先弁済を受けることになります。

共同根抵当である旨の登記をすると、複雑であり、別々の根抵当の場合よりも不利となる可能性がでてくるのです。

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不渡手形と買掛金の相殺・・・

A社に対する売掛金の支払として、約束手形を受け取り、これとは別にA社には買掛金債務があります。

しかし、A社は受け取った手形の満期日が来る前に不渡りを出したのですが、期日の来る買掛金を支払わなければならないのでしょうか?

売買代金を支払日に約束手形で受け取った場合には、その代金の支払日は約束手形の満期日まで猶予されます。

ですので、満期日以前に他の手形の不渡りを出したからといって、直ちに売掛債権の支払を請求することはできず、相殺をすることができません。

相殺とは、自分が相手方に対し持っている債権と相手方が自分に対して持っている債権の双方が弁済期に来ているとき、それぞれ債務者は対等額において相殺して債務を免れるものです。

(相殺の要件等)
民法第505条 2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

手形の満期日が来ていない以上、A社に対する売掛金と買掛金を相殺することはできないのです。

ただし、期限の利益喪失約款規定した継続的取引契約を結んでいるような場合、具体的には、相手方の倒産や不渡り手形を出した場合に期限がきていない売掛金についても、期限が到来し、直ちに支払わなければならないと定められた場合には、満期日以前であっても、売掛債権の弁済期は到来しますから、相殺ができます。

相殺はA社に対し自働債権と受働債権を明示して、相殺する旨の通知を内容証明郵便で発送します。

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不渡り会社の売掛金の譲渡・・・

取引先のA社が不渡りを出し倒産したのですが、A社には売掛金があるようなので、譲渡してもらい当社の債権に補填したいのですが?

債権は、その性質に反しない限り、原則として譲渡できるとされています。

(債権の譲渡性)
民法第466条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

譲渡は譲渡契約書などの形式は必要ではなく、譲渡人と譲受人の合意ででき、譲渡債権の債務者の承諾がなければならないわけではありません。

債権の譲渡には、民法に規定が設けられており、指名債権の譲渡は譲渡人が債権を譲渡した旨を債務者に通知するか、又は債務者がこれを承諾した場合を除いて、債務者、その他の第三者に対抗し得ないものとし、さらにその通知や承諾も、債務者以外の第三者に対抗できるためには確定日付のある証書によってしなければならないとしています。

(指名債権の譲渡の対抗要件)
民法第467条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

債権を譲り受ける場合には、債権者から債務者に対するどのような債権を譲受人の誰に譲渡した旨の通知を内容証明郵便で出します。

2重に通知が出されていれば、先に出した方が優先します。

倒産したような債権譲渡については、債権者が争っていますから、後手に回った債権者から債権譲渡が詐害行為だといわれる可能性が出てきます。

詐害行為というのは、債務者がその債権者を害することを知ってなした法律行為である債権譲渡をいい、このような場合には債権者はその法律行為の取消を裁判所に請求できることになっています。

(詐害行為取消権)
民法第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

判例では、債務の弁済は原則として詐害行為とはならないが、一部の債権者と共謀して他の債権者を害するため、故意に弁済する場合は詐害行為になるとしています。

自己の有する債権の代物弁済として、それより大きい金額の債権の譲渡を受けるというようなことでなければ、原則として取消されることはないと考えられます。

倒産会社がどうしても債権譲渡に応じない場合には、債権の仮差押をして債権を保全してから裁判によって判決を得て、債権の差押命令、転付命令をしてもらうことになります。

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