取締役選任決議の不存在とその後の取締役選任決議の効力・・・

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取締役選任決議の不存在とその後の取締役選任決議の効力・・・

最判平成2年4月17日(地位確認等請求事件)
民集44巻3号526頁、判時1354号151頁、判夕732号190頁

<事実の概要>

Y株式会社の取締役は代表取締役Xのほか、A・B・Cの4名であったが、XとAとの間で支配権争いが生じた。

定款所定の任期満了前に、「Xが取締役及び代表取締役を辞任し、その後任取締役にDが就任し、代表取締役にAが就任した」旨の登記がなされた。

しかし、実際には、Xが辞任した事実も、Dを取締役に選任する旨を決議した株主総会及びAを代表取締役に選任する旨を決議した取締役会が開かれた事実もなかった。

そこでXは、Y社を被告として、XがY社の取締役及び代表取締役の地位にあることの確認、Aが代表取締役の地位にないことの確認、上記各決議の不存在の確認等を求める訴えを提起した。

第1審は、Xの請求を全て認容し、Y社は控訴した。

第1審判決後もY社の商業登記簿上の取締役は逐次選任されており、最終的に代表取締役Aのほか、B・Dが取締役として表示されていたが、A及びBは、控訴審においてもXの主張が認められた場合に備えて、Xに対し、Xの主張どおりX・A・B・Cの4名が取締役であるという前提で、Xの代表取締役解任及び新代表取締役選任を議題とする取締役会の招集を請求した。

Xはこれに応じてA及びBに対し取締役会招集通知をなし、X・A・Bが参集して開催された取締役会において、Xを代表取締役から解任し、Aを代表取締役に選任する旨の決議がなされた。

この取締役会の決議をふまえてY社は、原審において、仮にXの主張が正しいとしても、新たな取締役会の決議によりXの請求のうち、少なくとも、XがY社の代表取締役の地位にあることの確認及びAが代表取締役の地位にないことの確認を求める請求は理由がないことになったと主張した。

しかし原審は、当時の取締役は商業登記簿上に記載されたA・B・Cであり、Xの辞任登記前の取締役会の構成による取締役会を招集してみたところで、このような会議はY社の取締役会とはいえないとして、Y社の予備的主張が排斥し、控訴棄却。

これに対しY社上告。

上告理由は、Xが代表取締役の地位にあることの確認請求を認容しながら、他方で登記簿上の取締役であるA・B・Cの3名が取締役であるのは矛盾しているというものである。

<判決理由>一部破棄差戻し、一部棄却、一部却下。

「XがY社の取締役を辞任した事実はないというのであるから、Xはその任期が満了する・・・までY社の取締役たる地位を有していたものというべきところ、同日の経過をもって、Xのみならず、A、B及びCの3名の任期も満了するから、Y社は商法255条に定める取締役の員数を欠くことになり、従って、同法258条1項に基づき、右4名は、新たに選任された取締役が就職するまで、引き続きY社の取締役としての権利義務を有するものといわなければならず、また、同法261条3項、258条1項に基づき、Xは、同様に、引き続き代表取締役としての権利義務を有するものといわなければならない。」

「取締役を選任する旨の株主総会の決議が存在するものとはいえない場合においては、当該取締役によって構成される取締役会は正当な取締役会とはいえず、かつ、その取締役会で選任された代表取締役も正当に選任されたものではなく・・・、株主総会の招集権限を有しないから、このような取締役会にの招集決定に基づき、このような代表取締役が招集した株主総会において新たに取締役を選任する旨の決議がされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなど特段の事情がない限り・・・、法律上存在しないものといわざるを得ない。

したがって、この瑕疵が継続する限り、以後の株主総会において新たに取締役を選任することはできないものと解される。

そして、本件においては、このような特段の事情についての主張立証はない。

してみると、・・・X、A、B及びCの4名は、商法258条1項に基づき、Y社の取締役としての権利義務を有していたものであり、このうちX、A及びBの3名によって・・・開催された取締役会における、XをY社の代表取締役から解任し、Aを代表取締役に選任する旨の前記決議は、招集通知を欠いたCが出席してもなお決議の結果に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情がある場合には有効と解すべきものである・・・から、この場合にあっては、Xは、Y社の取締役としての権利義務は依然として有するものの、代表取締役としての権利義務は消滅し、Aが代表取締役たる地位を取得したものといわなければならない。

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決議無効確認の訴えと決議取消しの主張・・・

最判昭和54年11月16日(株主総会決議無効確認請求事件)
民集33巻7号709頁、判時952号113頁、判夕406号86頁

<事実の概要>

昭和50年5月30日、Y株式会社の株主総会が開催され、本件株主総会決議がなされた。

これに対し株主Xは、同年8月20日に決議無効確認の訴えをt提起し、昭和52年5月24日、予備的に決議取消の主張を追加した。

Xの主張する株主総会決議の瑕疵は、Y社が本件株主総会に提出した計算書類は監査役の監査を受けていない違法な書類であったというものである。

第1審は、決議無効確認の訴えについては請求を棄却し、決議取消しの訴えについては、提訴日が決議の日から約2年が経過した昭和52年5月24日であると認定し、出訴期間経過後に提起されたものであるから不適法として訴えを却下した。

これに対し原審は、株主総会決議より3ヶ月以内に提起された決議無無効確認の訴えには予備的決議取消しの訴えが包含されているものであり、昭和52年5月24日の申立てはこれを明示したものに過ぎないとして、第1審判決のうち予備的決議取消しの訴え却下部分を取消し、この部分を第1審に差し戻す旨の判決を下した。

これに対しY社は、訴訟形態及び訴訟物が別個のものであることを理由に上告。

<判決理由>上告棄却。

「商法が株主総会決議取消の訴と同無効確認の訴とを区別して規定しているのは、右決議の取消原因とされる手続上の瑕疵がその無効原因とされる内容上のの瑕疵に比してその程度が比較的軽い点に着目し、会社関係における法的安定要請の見地からこれを主張しうる原告適格を限定するとともに出訴期間を制限したことによるものであって、もともと、株主総会決議の取消原因と無効原因とでは、その決議の効力を否定すべき原因となる点においてその間に差異があるためではない。

このような法の趣旨に照らすと、株主総会決議の無効確認を求める訴えにおいて決議無効原因として主張された瑕疵が決議取消原因に該当しており、しかも、決議取消訴訟の原告適格、出訴期間等の要件をみたしているときは、たとえ決議取消の主張が出訴期間経過後になされたとしても、なお決議無効確認訴訟提起時から提起されていたものと同様に扱うのを相当とし、本件取消訴訟は出訴期間遵守の点において欠けるところはない。」

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株主総会不存在確認の訴えの利益・・・

最判平成11年3月25日(株主総会決議不存在確認等請求事件)
民集53巻3号580頁、判時1672号136頁、判夕999号221頁

<事実の概要>

Xは、Y株式会社の株主であり、昭和59年当時は取締役であった。

同年5月12日に開催されたY社の株主総会において、取締役及び監査役を選任する本件第1株主総会の決議(第1決議)が行われた。

その後、取締役及び監査役の任期の満了時又はその中途において、その選任のため、順次、第4及び第5決議、平成元年5月28日、同3年5月31日、同5年5月30日の各決議、第8決議が行われ、取締役と監査役が選任されている。

第6及び第7決議は、商業登記簿にはこれらが行われたかのように記載されているが、実際には行なわれていない。

さらに、第1審の結審直前の平成8年6月23日に第9決議が行われたが、ここでは取締役のみが選任されている。

Xは、各決議の不存在の確認を求め提訴した(第9決議の不存在確認の主張については原審で追加)。

原審では、第9決議の存在を理由に、第9決議の不存在確認請求は棄却し、その余の請求については訴えの利益なしとして訴えを却下した。

Xは上告した。

<判決理由>上告棄却。

「取締役及び監査役を選任する株主総会決議が存在しないことの確認を求める訴訟の係属中に、後の株主総会決議が適法に行われ、新たに取締役等が選任されたときは、特別の事情のない限り、先の株主総会決議の不存在確認を求める訴えの利益は消滅すると解される。

しかし、取締役を選任する先の株主総会の決議が存在するものとはいえない場合においては、その総会で選任されたと称する取締役によって構成される取締役会の招集決定に基づき右取締役会で選任された代表取締役が招集した後の株主総会において新たに取締役を選任する決議がされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り、以後の株主総会において新たに取締役を選任することはできないことになる(最高裁・・・平成2年4月17日第三小法廷判決)。

右は、後にされた決議が監査役を選任するものであっても、同様である。」

「そうすると、右のような事情の下で瑕疵が継続すると主張されている場合においては、後行決議の存否を決するためには先行決議の存否が先決問題となり、そお判断をすることが不可欠である。

先行決議と後行決議がこのような関係にある場合において、先行決議の不存在確認を求める訴えに後行決議の不存在確認を求める訴えが併合されているときは、後者について確認の利益があることはもとより、前者についても、民訴法145条1項の法意に照らし、当然に確認の利益が存するものとして、決議の存否の判断に既判力を及ぼし、紛争の根源を絶つことができるものと解すべきである。」

「原審は、第1及び第4ないし第8決議の不存在確認を求める訴えについて、これらにより選任されたとされる役員の任期が満了し、最後の第9決議で役員選任が行われたことにより、訴えの利益を失ったとして、右訴えを却下した。

しかし、第8決議中の監査役に関する部分については、その後に当該監査役の後任者が選任されたことの主張立証はないから、これに関する訴えの利益が失われたといえないことは明らかである。

また、第1、第4及び第5決議並びに第8決議中の取締役に関する部分については、・・・第9決議の先決関係に立つ事項として、訴えの利益があるものというべきである。」

ただし、「原審は、第9決議の不存在確認請求について判断するに当り、先行の第1、第4、第5及び第8決議の存否について十分な実体審理を遂げて」おり、その結果、請求を「棄却すべきものであるが、この結論は原判決よりもXに不利益になるので、上告を棄却するにとどめることとする。」

「第6及び第7決議の不存在確認を求める訴えについては、同決議は第8及び第9決議の存否を確定するについての先決関係に立つものではなく、記録によれば、商業登記簿中、第6及び第7決議があることを前提として記載された役員欄の用紙は既に閉鎖されていることが明らかであり、右決議の不存在確認を求める訴えの利益について、他に特段の主張立証はないから、原判決中、右訴えを却下した部分は正当であり、論旨は理由がない。」

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取締役の解任・・・

最判昭和57年1月21日(株主総会決議取消等請求事件)
判時1037号129頁、判夕467号92頁、金判644号8頁

<事実の概要>

Xは、Y株式会社の発行済み株式総数8000株のうち4350株を有する株主であり、かつY社の代表取締役であった。

Xは、昭和52年9月ころ、持病が悪化してきたので、Y社の業務から退き療養に専念することになり、同年9月21日、Y社取締役Aとの間で、全持株をAに譲渡する売買契約を締結すると同時に、XがY社の代表取締役を辞任し、Aが後任の代表取締役に就任すべきことを取り決めた。

そして、上記趣旨に副って、Xの代表取締役辞任届が作成され、Aを後任の代表取締役に選任する決議がなされた旨の取締役会議事録が作成された。

その後、Aは同年10月31日開催の臨時株主総会において、経営陣の一新を図り、Xとその妻Bを取締役から解任し、新たにC・Dを取締役に選任した。

そこでXは、主位的請求として、臨時株主総会における取締役の解任・選任決議が無効であることの確認を求め、予備的請求として上記決議の取消を求めた。

第1審判決は、Xの請求を棄却した。

控訴審においてXは、Y社がXを解任したことに正当な事由はないから、前商法257条1項但書により、損害賠償として役員報酬相当額の支払を求める旨を予備的請求に追加した。

控訴審判決は、上記事実によると、Y社がXを解任したのは会社運営上しごく当然のことであってなんら非難すべき事由は存在しないとして、損害賠償の請求を斥け、控訴を棄却した。

Xは上告した。

<判決理由>上告棄却。

「原審が適法に確定した事実は、

(1)Y社の代表取締役であったXは、昭和52年9月頃持病が悪化したので、Y社の業務から退き療養に専念するため、その有していたY社の株式全部をY社の取締役Aに譲渡し、Aと代表取締役の地位を交替した。

(2)そしてAは、経営陣の一新を図るため同年10月31日開催の臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、Xを取締役から解任した、というのであり、右事実関係のもとにおいては、Y社によるXの取締役の解任につき商法257条1項但書にいう正当な理由がないとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」

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