父が死亡前に全財産を弟に贈与・・・
父は日頃から私を嫌い、父が死亡する直前に、弟に全財産を贈与してしまいましたが、私の相続分はないのでしょうか、相続人は弟と2人です。
民法では、被相続人が全部の財産を自由に処分することができないようになっており、これを遺留分といい、被相続人の子や孫、夫や妻、父母や祖父母は、相続財産の一定部分を必ず受けることができます。
この一定部分が、子や妻などに残らないように遺言を書いても、その部分の効力は請求によって効力がなくなります。
父親が全財産を弟に残すと遺言をしていても、相続財産の4分の1については、請求によって効力をもたなくなります。
父親は財産の大部分をあらかじめ弟に贈与したのですが、このような贈与に対して、自分の遺留分を請求することができます。
民法は遺留分の規定を逃れようとする者が現れることを予想して、相続の行われる1年以内に行われた贈与と、1年以上前でも、当事者双方が遺留分の権利者に損害を加えることを知った上で行った贈与に対しては、遺留分の権利者はその権利に基づいて贈与された物の返還を請求できると規定されています。
(遺留分を算定するための財産の価額)
第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第904条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
父親と弟の両者が、この贈与によって遺留分が害されることを知っていれば、弟は遺留分の範囲内で、贈与されたものを返還しなければなりません。
また、父親あるいは弟のいずれかが、遺留分を害することを知らなくとも、その贈与が父親の死の1年前なら、弟は遺留分相当の物を返還しなければなりません。
スポンサードリンク
借地上の建物を子供名義・・・
山田さんは、田中さんの土地を借りて借地契約をし、その上に家を建てましたが、家の名義人を将来のために、未成年の息子にして登記を行いました。
その後、田中さんは土地を斉藤さんに売り、斉藤さんは山田さんに対して建物の収去と土地の明渡しを求めてきたのですが。
民法では、土地や物の所有者が変われば、以前の所有者との賃貸借契約は自動的に終了します。
しかし、例外があり、借家で、借家人は引渡しを受けてしまえば、家主が変わっても家を借り続けることができます。
また、借地で、借地人がその土地に登記した建物を持っているときは、土地の所有者が変わっても、土地の賃貸借は新しい所有者との間で継続します。
本件の場合、子供の名義での登記がこれらの借地借家法にいう登記になるかどうかが問題となります。
このような登記は、事実に反し無効となり、建物を収去して土地を明渡さなければなりません。
判例は、借地上に妻名義の保存登記をした建物を夫が所有している場合でも、新たに土地を所有した者から建物の収去と土地の明渡しを求められれば、それに従わなければならないとしています。
その後、子の名義の場合と養母名義の場合に、建物登記があった場合、明け渡しを命ずる判決が出ており、建物の名義は、事実どおり借地人名義にする必要があるのです。
スポンサードリンク
父の死後その愛人へ返還請求・・・
父は自分の所有する家に愛人とその子を住まわせ、その生活費として2000万円を貸与しており、父が死んだので相続人として、父の愛人に家の引渡しと2000万円の返還を求めたいのですが。
この場合、父が愛人とその子を自分の家に住まわせた行為が、贈与に当たるのか、無償で家を貸したのかが問題となります。
贈与であるとすると、愛人とその子とが家の所有者となりますから、家の返還を請求することはできず、家の登記が父の名義になっていても同じです。
無償で家を貸していた使用貸借であるとすると、借主が死亡すると当然に終了しますが、貸主が死亡したからといって、当然に終了するものではありません。
父と相手方との間に、貸主である父の死亡によって、使用貸借は終了するという合意があった場合は、家の返還を請求することができます。
この合意がない場合は、使用貸借の目的によって、その存続期間を決めることになり、この場合、愛人とその子の生活の保証と子供の養育にある明らかですから、愛人が独立して生活できるだけの資力を持つか、あるいは、その子が成長して、生活力を持つまで家の返還は請求できません。
生活費等の資金として2000万円について、期限の定めのない金銭の貸与は、相当な期間を定めて返還の請求をすれば、借主はその期間の終わるまでに借金を返還しなければならないとされます。
しかし、この場合の2000万円は、貸与の目的が愛人と子の生活費、教育費等のためであることは明白ですから、愛人と子が独立した生活を営めるようになるまでは、返還は認められない可能性もあります。
スポンサードリンク