ファイナンス・リース契約の解除とリース業者の清算義務・・・

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ファイナンス・リース契約の解除とリース業者の清算義務・・・

最判昭和57年10月19日(リース料請求事件)
民集36巻10号2130頁、判時1061号29頁、判夕483号69頁

<事実の概要>

リース会社であるX株式会社は、昭和48年5月9日、Y株式会社との間で、機械(以下、「本件物件」)につき、リース期間を60ヶ月とするファイナンス・リース契約を締結した。

リース契約においては、Yがリース料の支払を1回でも遅滞したときは、Xは通知催告を要しないでリース料全部の即時弁済を請求できる旨の特約が含まれていた。

Xは、昭和48年11月20日、Yに本件物件を引渡し、以後そのリース期間が開始し、本件物件を使用収益させていたところ、Yは、昭和51年5月10日以降リース料の支払を怠った。

Xは、本訴において残リース料を請求している。

なお、Xは昭和52年11月7日、Yのもとから本件物件を引揚げている。

原審判決(名古屋高判昭和55・7・17判時990号201頁)は、Xの残リース料の請求は認められるが、Xには物件の引揚げによって取得した利益を未払いのリース料に充当し残余があればこれをYに返戻する義務があり、この清算の対象となるのは、返還時から本来のリース期間が満了すべきものと約定されていた時点までの期間内におけるリース物件の利用価値であると解し、かつ、これを具体的に算定するにあたっては、リース物件がリース期間の途中で滅失した場合にYからXに支払うことが約定されている規定損失金額を基礎とし、返還時から本来のリース期間の満了時までの間における規定損失金額の年度間の差額をもって清算金額にあたるとした。

Xは上告した。

<判決理由>破棄差戻し。

1「いわゆるファイナンス・リース契約において、リース業者は、リース期間の途中で利用者からリース物件の返還を受けた場合には、その原因が利用者の債務不履行にあるときであっても、特段の事情のない限り、右返還によって取得した利益を利用者に返戻し又はリース料債権の支払に充当するなどしてこれを清算する必要があると解するのが相当である。

けだし、右リース契約においては、リース業者は、利用者の債務不履行を原因としてリース物件の返還を受けたときでも、リース期間全部についてのリース料債権を失うものではないから、右リース料債権の支払を受けるほかに、リース料債権を失うものではないから、右リース料債権の支払を受けるほかに、リース物件の途中返還による利益をも取得しうるものとすることは、リース契約が約定どおりの期間存続して満了した場合と比較して過大な利益を取得しうることになり、公平の原則に照らし妥当ではないからである。」

2「リース業者は、リース期間の途中で利用者の債務不履行を原因としてリース物件の返還を受けた場合には、これによって取得した利益を清算する必要があるが、右の場合に清算の対象となるのは、リース物件が返還時において有した価値と本来のリース期間の満了時において有すべき残存価値との差額と解するのが相当であって、返還時からリース期間の満了時までの利用価値と解すべきでなく、従って、清算金額を具体的に算定するにあたっては、返還時とリース期間の満了時とにおけるリース物件の交換価値を確定することが必要であり、返還時からリース期間の満了時までのリース料額又はリース物件がリース期間の途中で滅失・毀損した場合に利用者からリース業者に支払うことが約定されているいわゆる規定損失金額を基礎にしてこれを算定することは正当ではない。

なお、リース物件には、利用者の利用目的に適合するように特別の仕様が施されることが少なくないため、リース業者がその返還を受けても直ちにそれ自体として他に処分し又は新たにリース契約を締結することが必ずしも容易でない場合がありうるが、そうであるからといって、リース業者が返還にかかるリース物件を他に処分し又は新たにリース契約を締結して処分代金等を現実に取得し得ない限り、清算金額を具体的に算定することは不可能であるとはいえない。」

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ファイナンス・リース契約と会社更生手続・・・

最判平成7年4月14日(動産引渡等請求事件)
民集49巻4号1063頁、判時1533号116頁、判夕880号147頁

<事実の概要>

X株式会社は、昭和56年11月18日、A株式会社との間で、本件事務機器について、いわゆるファイナンス・リース契約(以下、「本件リース契約」)を締結し、B株式会社から本件事務機器を買い受けて、同年12月1日、Aに引き渡した。

本件リース契約には、リース期間は60ヶ月、リース料は月額3万4660円とすること、Aは本件事務機器の点検・整備、修繕・修復をすべて自己の責任と負担で行なうこと、リース期間中、本件事務機器を使用しない期間又は使用できない期間があっても、理由のいかんを問わずリース料の支払義務を免れないこと、本件事務機器の引渡後は、Aは、本件事務機器が、天災地変等により、滅失又は毀損・損傷して修理・修復が不能となり、Xがその事情を認めたときは、本件リース契約は終了するが、その場合は、Aは一定の損害金を支払うこと等の約定があった。

なお上記リース料は、リース期間満了時において本件事務機器に残存価値はないものとみて、Xがリース期間中に本件事務機器の取得費その他の投下資本の全額を回収できるように算定された、いわゆるフルペイアウト方式によるものであった。

Aは、昭和58年8月30日、東京地方裁判所に会社更生手続開始の申立をし、同裁判所は、同年12月23日、会社更生手続の開始決定をし、Yが更生管財人に選任された。

Xは、同年10月分以降のリース料の支払がなかったので、昭和59年2月8日、Yに対し未払いリース料の支払を催告し、同年5月15日、本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。

Xは、未払いのリース料債権は平成14年改正前会社更生法103条1項・208条7号(現行会社更生法61条1項・4項)の規定による共益債権であるから、Xは会社更生法手続によらないで随時その請求をすることができ、また、Aはその支払を怠ったから、本件リース契約解除までの未払いリース料と遅延損害金、及び解除に基づく約定の損害金と遅延損害金の支払等を請求している。

原審(東京高判平成2・10・25民集49巻4号1097頁)は、本件リース契約において、Aが負担するリース料支払債務と対価関係にある未履行の債務をXが負担しているとは認めることができないから、本件リース契約に改正前103条1項の適用はなく、リース料債権を改正前208条7号の共益債権と認めることはできないとした。

<判決理由>上告棄却。

「いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続の開始決定があったときは、未払のリース料債権はその全額が更正債権となり、リース業者はこれを更正手続によらないで請求することはできないものと解するのが相当である。

その理由は、次のとおりである。

右の方式のよるファイナンス・リース契約は、リース期間満了時にリース物件に残存価値はないものとみて、リース業者がリース物件の取得費その他投資資本の全額を回収できるようにリース料が算定されているものであって、その実質はユーザーに対して金融上の便宜を付与するものであるから、右リース契約においては、リース料債務は契約の成立と同時にその全額について発生し、リース料の支払が毎月一定額によることと約定されていても、それはユーザーに対して期限の利益を与えるものにすぎず、各月のリース物件の使用と各月のリース料の支払とは対価関係に立つものではない。

したがって、会社更生手続の開始決定の時点において、未払のリース料債権は、期限未到来のものも含めてその全額が会社更生法102条(現行会社更生法2条8項に相当)にいう会社更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権に当るというべきである。

そして、同法103条1項(現行会社更生法61条1項)の規定は、双務契約の当事者間で相互に牽連関係に立つ双方の債務の履行がいずれも完了していない場合に関するものであって、いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しをしたリース業者は、ユーザーに対してリース料の支払債務と牽連関係に立つ未履行債務を負担していないというべきであるから、右規定は適用されず、結局、未払のリース料債権が同法208条7号(現行会社更生法61条4項)に規定する共益債権であるということはできないし、他に右債権を共益債権とすべき事由もない。

そうすると、前記事実関係の下においては、XはYに対し、本件リース契約に基づく未払のリース料債権を会社更生手続によらないで請求することはできず、また、会社更生手続開始決定の後は、未払のリース料の支払を催告して本件リース契約を解除することはできないというべきである。」

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割賦販売法30条の4の法的性質・・・

最判平成2年2月20日(立替金請求事件)
判時1354号76頁、判夕731号91頁、金判849号3頁

<事実の概要>

X株式会社は割賦購入あっせん業者、A有限会社はその加盟店である。

昭和57年8月25日、Y1はAから呉服一式(以下、「本件商品」)を代金145万円で買い受ける旨の契約(以下、「本件売買契約」)を締結した。

本件売買契約の際、Y1は、Aを通じて、Xとの間で立替払契約(以下、「本件立替払契約」)を締結し、同日AはXから売買代金を立替払し、Y1がXに対し売買代金に取扱手数料を加えた金額(176万余円)を、同年9月から昭和60年8月にかけて分割払いする、Y1が支払を怠り20日以上の期間を定めた書面による催告を受けても履行しないときは期限の利益を失う、というものだった。

Y2は、Xに対し、本件立替払契約に基づくY1の債務につき連帯保証をした(以下、「本件連帯保証契約」)。

ところが、Aが本件商品の引渡しをしなかったため、Y1とAは、昭和57年暮れ頃本件売買契約を解除する旨の合意(以下、「本件合意解除」)をし、昭和58年5月31日、その旨を記載した商談解約書を作成した。

これには本件合意解除に伴う諸問題はAにおいて責任をもって処理する旨記載されていた。

Yらは、昭和58年4月分以降の割賦金残額141万余円の支払をせず、Xから同年8月5日到達の書面で同月27日までに支払うべき旨催告を受けたが、その履行をしなかった。

本訴においてXは、Yらに対し、本件立替払契約及び本件連帯保証契約に基づき、上記割賦金残額及び遅延損害金の支払を求めている。

原審は、本件立替払契約の目的であるY1の代金債務は本件合意解除により契約締結時に遡って消滅し、XがYらに対し右履行請求をすることは信義則に反し許されないとして、Xの請求を棄却した。

Xは上告した。

<判決理由>破棄差戻し。

「購入者が割賦購入あっせん業者(以下、「あっせん業者」という。)の加盟店である販売業者から証票等を利用することなく商品を購入する際に、あっせん業者が購入者との契約及び販売業者との加盟店契約に従い販売業者に対して商品代金相当額を一括立替払し、購入者があっせん業者に対して立替金及び手数料の分割払いを約する仕組みの個品割賦購入あっせんは、法的には、別個の契約関係である購入者、あっせん業者間の立替払契約と購入者・販売業者間の売買契約を前提とするものであるから、両契約が経済的、実質的に密接な関係にあることは否定し得ないとしても、購入者が売買契約上生じている事由をもって当然にあっせん業者に対抗することはできないというべきであり、昭和59年法律第49号(以下、「改正法」という。)による改正後の割賦販売法30条の4第1項の規定は、法が、購入者保護の観点から、購入者において売買契約上生じている事由をあっせん業者に対抗し得ることを新たに認めたものにほかならない。

したがって、右改正前においては、購入者と販売業者との間の売買契約が販売業者の商品引渡債務の不履行を原因として合意解除された場合であっても、購入者とあっせん業者との間の立替払契約において、かかる場合には購入者が右業者の履行請求を拒み得る旨の特別の合意があるとき、又はあっせん業者において販売業者の右不履行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実行したなどの右不履行の結果をあっせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り、購入者が右合意解除をもってあっせん業者の履行請求を拒むことはできないものと解するのが相当である。」

本件立替払契約及び本件売買契約は、改正法施行前に締結されたものであって、「前記改正後の割賦販売法30条の4第1項の規定は適用されないところ(改正法附則6項)、Aが、Xの加盟店として本件立替払契約の締結の衡に当り、本件合意解除の当時もXの加盟店であって、Y1との間で本件合意解除に伴う諸問題を責任をもって処理する旨約したとの前示事実があっても、それだけでは前述のような特別の合意ないし特段の事情があるときには当らないというべきである。

もっとも、記録によれば、本件立替払契約に係る契約書・・・の契約条項8(1)には、商品の瑕疵又は引渡しの遅延が購入目的を達成することができない程度に重大であり、購入者がその状況を説明した書面をあっせん業者に提出し、右状況が客観的に見て相当な場合には、購入者は瑕疵故障等を理由にあっせん業者に対する支払を拒むことができる旨規定されていることは明らかであるが、これが前示特別の合意に当るとしても、Y1において右手続を履践するなどXに対する支払を拒み得る場合に該当する事実は、なんら確定されていない。」

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クレジットの名義貸し・・・

長崎地判平成元年6月30日(立替金請求控訴事件)
判時1325号128頁、判夕711号234頁

<事実の概要>

割賦購入あっせんを業とするX株式会社は、昭和60年5月19日、Yが下着等の販売業者でXの加盟店であるA株式会社から下着一式を金13万円購入するにあたり、Yとの間で、XはYに代わり金13万円をAに立替払し、YはXに対し、立替金及び手数料の合計金15万280円を分割して支払うこととする立替払契約(個品割賦購入あっせんに当る)を締結した。

この立替払契約は、未成年者であるYの職場の先輩であるBが信用調査の結果自分の購入した下着について立替払が拒絶されるので、Yに対して名義を貸すように依頼し、Yがこれを承諾したことにより成立したものであった。

同年6月分から10月分までの5回については、BがYに支払金額分の金員をもってきたので、YにおいてY名義で郵便振込により支払っていたが、同年11月分の支払からは、Bが同年10月末に勤務先の医院を退職したことから支払が滞った。

Xは本訴において、立替払契約に基づく残金の支払を請求した(なお、立替払契約の成立の事情については、下記の判決理由も参照)。

Yは、Aに対して、上記売買契約の通謀虚偽表示による無効を主張しうるから、割賦販売法30条の4に基づいて、その無効事由をもってXに対抗すると主張したのに対し、Xは、購入者が作出した一方的事由に基づく購入者と販売業者間の通謀虚偽表示は、抗弁事由に該当しないなどと反論した。

原審判決はXの請求を認容した。

<判決理由>原判決取消、請求棄却。

1「割賦販売法30条の4第1項は、割賦購入あっせん業者が、あっせん行為を通じて、販売業者と購入者間の売買契約の成立に関し販売業者と密接な経済関係を有するから、購入者に売買契約上の抗弁事由が存する場合には自社割賦と同様にあっせん業者に対しても抗弁が主張できるようにし、契約取引に不慣れな購入者を保護するという趣旨から、販売業者に対して主張し得る抗弁事由をもってあっせん業者に対抗し得ることを規定してものであると解される。

そうすると、購入者が販売業者に対して有する抗弁をもって、割賦購入あっせん業者い対抗することが、抗弁権の接続を認める趣旨に反し、信義則上許されない場合を除き、同条は抗弁事由について特にこれを限定していないから、原則として、購入者が販売業者に対抗できる事由は、同条の抗弁事由となるというべきである。

虚偽表示の場合について、より具体的にいえば、購入者の作出した一方的な又は積極的な関与に基づく事由は、抗弁事由に該当しないが、販売業者が、詐欺的言動によって購入者をして名義貸しをなさしめた場合などは、その名義貸しをなすに至った事情いかんによっては、虚偽表示を割賦購入あっせん業者に対抗することが、抗弁権の接続を認めた立法の趣旨に反し信義則上許されないものではないというべく、虚偽表示であれば一律に抗弁事由足り得ないと解すべきではないと思料される。」

2「(1)C(Aの使用人)は、高校を卒業したばかりで割賦購入あっせん取引に経験のないYにその名義使用の承諾を得るにあたって、Yに対して、支払についてはBが支払うし、支払が遅れたときには、Cが間に入りBに支払わせるようにするからと言って、Yを説得し、Bが支払わなかったときにはYが支払の請求を受けることなどは一切説明していない。

そして、CがYの名義使用の承諾を得てはいるものの、本件立替金契約の申込書は、Yに署名捺印を求めないままAにおいて作成している。

(2)また、Aは、BがXから立替払契約の承認を得られなかったのは、Bが事故者(いわゆるブラック)のためであることを知っており、Bが将来支払を滞る可能性が少なくないためにXが立替払に応じなかったことは承知していたのに、納品済みの商品代金回収のために、職場の先輩の要求を断り難いYにその名義使用を承諾させた。

しかも、Xの加盟店であるAでは、立替払の承認が得られない場合には、本件におけると同様、他人名義の使用をすすめ立替払契約を成立させて販売代金の回収を図っている事例がかなりみられる。

(3)さらに、Aは、Xに対して、本件立替払契約に関してYにのみ立替払契約に関する確認の連絡をとるよう連絡しており、これに応じて、Xは未成年者が申込人の場合であれば保護者に確認をとるのが通常であるのに、Yの親権者であり本件立替払契約の連帯保証人でもあるYの母親に意思確認の電話をとるように指示されること自体、立替払契約の前提となっている売買契約に問題があることが推知されるのに、Xの従業員は、Aからの連絡に応じた確認方法しかとっていない。

(4)以上によれば、Aはクレジットを利用して商品を販売しているのであるから、誠実に立替払契約の仕組みを悪用して、未成年者でありクレジット利用が初めてでその仕組みを十分理解していないYに詐欺的な言動で名義使用を承諾させ、虚偽の売買契約を仮装したものということができる。

Yは、前記のとおり、名義使用を承諾し、Xからの電話確認に購入した旨答え、また、Y名義で分割金を5回支払しているが、これらは、前述のCの欺網的ともいえる言動によるところが大きく、Bが支払をなすものと信じたことによるもので、要するに、本件においては、Aが虚偽の売買契約を積極的に作出したのであり、Yの関与の程度は詐欺的言動によってY名義の使用を余儀なく承諾し、電話確認に応答したものであり、消極的なものということができ、XがAからの連絡で連帯保証人欄の母親には意図的に連帯保証の意思確認はしないなどの事情に照らせば、Yが、虚偽表示の主張をXに対して主張することが信義則に反するとはいえない。」

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