特別養子縁組の離縁・・・
養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があり、かつ、実父母が相当の監護をすることができる場合、養子の利益のために必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができます。
民法第817条の10
1.次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
①養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
②実父母が相当の監護をすることができること。
2 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない
特別養子縁組の離縁は、民法817条の10第1項の規定によってする以外に方法はありません。
民法817条の10に基づく特別養子の離縁に関する処分の申立は、甲類審判事項です。
①申立権者
養子、実父母、検察官です。
実父母とは、縁組成立前に実親子関係を有した父母を意味し、特別養子縁組の成立前に認知をしていなかった父は同項に定める「実父母」ではないから、特別養子の離縁を請求することはできないとした事例がありますが、この判決は、上告審によって破棄・差し戻しをされています。
②管轄
養親の住所地の家庭裁判所です。
③添付書類
申立人の戸籍謄本及び住民票
養子の戸籍謄本・縁組前の除籍謄本及び住民票
④審判前の保全処分
家庭裁判所は、養子の利益のために必要があるときは、特別養子縁組の離縁の申立をした者の申立により、特別養子縁組の離縁に関する審判の効力が生ずるまでの間、養子の親権者若しくは後見人の職務の執行を停止し、又はその代行者を選任することができます。
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特別養子縁組の離縁審判手続・・・
特別養子縁組の離縁審判手続は、特別養子縁組の離縁の要件の有無が審理されます。
家庭裁判所は、特別養子縁組の離縁に関する審判をするには、養親、養親の後見人、養子、養子の後見人、養子に対して親権を行なう者で養親以外のもの及び実父母の陳述を聴かなければなりません。
この場合において、離縁をさせる審判をするときは、養親、養子及び実父母の陳述は、審判の期日において聴くものとされています。
養親、養親の後見人、養子、養子の後見人、養子に対して親権を行なう者で養親以外のもの及び実父母は、特別養子縁組の当事者を離縁させる審判に対し、申立人は、特別養子縁組の当事者を離縁させる審判の申立を却下する審判に対して、即時抗告をすることができます。
特別養子縁組の当事者を離縁させる審判が確定したとき、裁判所書記官は、養子の本籍地の戸籍事務管掌者に対して、遅滞なく、その旨を通知します。
特別養子縁組の離縁の審判が確定すると、特別養子と実父母及びその親族との間において、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係が復活します。
民法第817条の11
養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。
普通養子縁組の離縁に関する規定が適用されると解されていますから、次の効果も生じます。
①離縁による親族関係の消滅
②離縁による復氏
③離縁の際称していた氏の続称
④離縁による復氏の際の祭祀財産の承継
⑤特別養親子関係者間の婚姻禁止
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特別養子縁組離縁の戸籍届出・・・
特別養子縁組離縁の審判が確定すると、申立人は、離縁の審判確定の日から10日以内に特別養子離縁届をします。
届書には、審判書謄本、審判の確定証明書を添付します。
検察官の申立による場合は、審判確定後、検察官が遅滞なく戸籍記載の請求をします。
戸籍法第73条
1.第63条の規定は、離縁又は離縁取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
2.第75条第2項の規定は、検察官が離縁の裁判を請求した場合に準用する。
戸籍法第63条
1.認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
2.訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。
戸籍法第75条
1.第63条の規定は、婚姻取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
2.検察官が訴を提起した場合には、裁判が確定した後に、遅滞なく戸籍記載の請求をしなければならない。
戸籍の届出があった場合の処理は、通常、離縁によって、特別養子は縁組前の実親の氏に復しますから、実親の戸籍に入ります。
ただし、この戸籍が既に除かれているとき、又は特別養子が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍が編製されます。
戸籍法第19条
1.婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。
2.前項の規定は、民法第751条第1項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合及び同法第791条第4項の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する。
3.民法第767条第2項(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)又は同法第816条第2項(同法第808条第2項において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚若しくは婚姻の取消し又は離縁若しくは縁組の取消しの際に称していた氏を称する旨の届出があつた場合において、その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編製されていないとき、又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る若が他にあるときは、その届出をした者について新戸籍を編製する。
この場合、入籍した戸籍の子の身分事項欄には、特別養子離縁の裁判確定による入籍が記載されます。
養子が実親の戸籍に復籍する場合でも、その戸籍が特別養子縁組によって除籍された戸籍ではないとき、つまり実親の戸籍が転籍で本籍地が代わったようなとき、又は養子について新戸籍を編製するときは、養子が特別養子縁組によって除籍された戸籍の養子の身分事項欄にも特別養子離縁の裁判が確定した旨が記載されます。
離縁をしても養子が復氏しない場合は、養子の身分事項欄に特別養子離縁の裁判が確定した旨を記載するだけで、養子の戸籍の変動はありません。
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認知の遺言・・・
認知は遺言によってもすることができます。
民法第781条
1.認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
2.認知は、遺言によっても、することができる。
成年の子を認知するには、その承諾を得ることを要しますが、その承諾は認知の届出をするときでも足ります。
民法第782条
成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。
戸籍法第64条
遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第60条又は第61条の規定に従つて、その届出をしなければならない。
認知の届出は、遺言執行者がすることになっていますので、遺言執行者を指定しておきます。
遺言執行者の指定がない場合には、利害関係人の請求によって家庭裁判所が遺言執行者を選任します。
民法第1010条
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
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