共有物分割の調停・・・

共有物分割の調停…

共有物分割の調停申立は、一般調停事項です。

この申立は本質的には訴訟事項であって調停前置に対象となります。

共有物分割の訴えにおいては、当事者は、共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定する必要はありません。

この場合、共有者全員が当事者とならなければなりません。

①申立人

親族関係にある一方の共有者です。

②相手方

親族関係にある他方の共有者です。

③管轄

相手方の住所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。

④添付書類

申立人、相手方の戸籍謄本、不動産登記簿謄本

⑤調停に成立

調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は確定判決と同一の効力があります。

不動産の所有権移転に伴う登記義務履行の合意が成立したときは、登記権利者はその合意を記載した調停調書の正本を添付して、単独で、右登記の申請をすることができます。

A土地を共有者甲の取得、B土地を共有者乙の取得とする共有物分割の調停が成立した場合は、A土地については甲を登記権利者、乙を登記義務者として、所有権移転登記を申請し、B土地については乙を登記権利者、甲を登記義務者として、所有権移転登記を申請します。

甲乙が共有する土地を甲が乙に代償金を支払って取得したときは、甲を登記権利者、乙を登記義務者として、共有持分移転に登記を申請します。

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共有物分割の判例・・・

不動産の共有持分を取得した者はその持分についてのみ抵当権消滅請求をすることができます。

(抵当権消滅請求)
民法第379条 抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

民法第380条 主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

民法第381条 抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。

(抵当権消滅請求の時期)
民法第382条 抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。

(抵当権消滅請求の手続)
民法第383条 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
1.取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
2.抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
3.債権者が2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第1号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面

(債権者のみなし承諾)
民法第384条 次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第3号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。
1.その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。
2.その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。
3.第1号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。
4.第1号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定(民事執行法第188条において準用する同法第63条第3項若しくは第68条の3第3項の規定又は同法第183条第1項第5号の謄本が提出された場合における同条第2項の規定による決定を除く。)が確定したとき。

(競売の申立ての通知)
民法第385条 第383条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、前条第1号の申立てをするときは、同号の期間内に、債務者及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。

(抵当権消滅請求の効果)
民法第386条 登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。

共有登記がされている不動産につき、共有者の1人が持分権を放棄した場合には、他の共有者は、放棄にかかる持分権の移転登記を求めるべきであって、放棄者の持分権取得登記の抹消登記手続を求めることは許されません。

共有物の分割は、共有者相互間において、共有物の各部分につき、その有する持分の売買ないし交換が行なわれることと解されています。

共有物の分割の方法として現物分割をしないで代償分割をすれば、共有持分の売買ということになり譲渡所得税の対象となります。

交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約する契約ですが、この場合、価値の低廉な財産権を移転する当事者はその価値を補足する金銭の所有権を付加して相手方に移転することがあります。

所得税法上、土地交換については、一定の範囲で資産の譲渡がなかったとみなされる場合があります。

土地交換契約に基づく所有権移転請求権に代わる損害賠償として支払を約した金員は経済的には土地譲渡の対価に当たるとして、これが課税の対象とされた事例があります。

共有不動産の分割により他の共有者の有していた持分を取得することは、地方税法にいう「不動産の取得」に当たります。

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相続の承認・放棄の期間・・・

相続人は、相続を承認するか放棄するか自由に選択することができますが、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月の熟慮期間内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなりません。

法定単純承認事由がある相続人は、相続の承認・放棄の期間伸長を求めることはできません。

(法定単純承認)
民法第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
2.相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
3.相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

相続人が被相続人経営会社の取締役選任手続において被相続人保有の株主権を行使したこと、被相続人所有の不動産について賃料の振込先を相続人名義に変更したことは、相続財産の処分に該当するから、相続を単純承認したみなされると解した事例があります。

預貯金など被相続人の財産がある場合、相続債務の存在が不明のまま遺族がこれを利用して、仏壇や墓石を購入することは、自然な行動であり、本件の場合、これらは社会的にみて不相当に高額のものと断定できない上、購入費用の不足額を遺族が自己負担していることなどからすると、「相続財産の処分」に当たるとは、断定できないとして、相続放棄の申述を却下した原審判を取消して、申述を受理した事例があります。

申述人らの行為が法定単純承認事由に該当するとして相続放棄申述受理申立を却下した審判に対する即時抗告審において、被保険者死亡の場合はその相続人に支払う旨の約款により支払われる死亡保険金は、特段の事情のない限り、被保険者死亡時における相続人であるべき者の固有財産であるから、抗告人らによる死亡保険金の請求及び受領は、相続財産の処分に当たらないと解した事例があります。

申述人らの行為が法定単純承認事由に該当するとして相続放棄申述受理申立を却下した審判に対する即時抗告審において、抗告人らの固有財産である死亡保険金をもって行った被相続人の相続債務の一部弁済行為は、相続財産の一部の処分に当たらないと解した事例があります。

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相続承認・放棄の熟慮期間・・・

熟慮期間は原則として、相続人が相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が相続人となった事実を知った時から起算します。

熟慮期間が設けられた趣旨からして、相続人が被相続人に相続財産が全くないと信じ、かつ、被相続人の生活歴、交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において相続財産が全くないと信じることについて相当な理由があると認められるときには、相続人が、前記各事実を知った時から熟慮期間を起算するのを相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常認識しうべかりし時から進行します。

熟慮期間進行の起算点を相続債務請求日とする相続放棄申述の受理申立却下審判に対する即時抗告審において、債務の内容及び抗告人が右債務の存在を知るに至った日時・経歴ないし抗告人が被相続人の死亡を知った時から3ヶ月以内に相続放棄申述をしなかった事情についての供述がなく、抗告人が被相続人と同居していたことのみを理由に、抗告人は被相続人死亡当時多額の債務の存在を知っていたものと推認し、熟慮期間経過後の申述として却下した原審判を審理不尽を理由に取消して差し戻した事例があります。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

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